第一章:真面目で清楚な女が、揺れた瞬間
私は片瀬理沙(かたせ りさ)、42歳。横浜市内の区役所に勤める、ごく普通の女性だ。
前夫とは6年前に別れ、ひとり娘・結花(ゆか)とふたり、静かに暮らしてきた。
日々の生活は穏やかで、私自身はお洒落にも恋愛にも興味を持たない、地味で真面目な“お母さん”。
服装も地味で、髪は肩につかない程度のボブカット。職場でも「丁寧な人」と言われるくらいで、派手なことは苦手だった。
けれど、そんな私が変わったのは、娘の彼氏——春翔(はると)くんと出会ってからだった。
春翔くんは、大学で結花と同じゼミの学生。理系の優等生で、品のある顔立ちと知的な雰囲気があり、初めて会ったときの印象は「礼儀正しい好青年」だった。
夏のある日、彼は結花に連れられて我が家を訪れた。
「こんにちは、春翔です。いつも結花がお世話になってます」
低く柔らかな声と、まっすぐな視線に、私はどぎまぎした。
その視線が、妙に長く私の目元に止まり、そして一瞬だけ——胸元に触れたことに、私は気づいていた。
その夜、いつものようにシャワーを浴びて、部屋着に着替えた私は、
風通しのいいワンピース一枚でリビングへ向かった。
薄手の生地は少し汗ばんだ素肌に張りつき、鏡の前で慌てて胸元を整えたが、どこか無意識に“隠しすぎないように”していた自分がいた。
彼がふとリビングで私を見上げたとき、目の奥が一瞬、何かを訴えた。
それは「彼女の母」としての視線ではなかった。
私はその瞬間、背筋がぞくりと震えたのを覚えている。
これはいけない——そう思ったのに、なぜか、目を逸らせなかった。
第二章:唇の温度、触れる前の空白
日曜日の午後。
娘がバイトに出かけ、春翔くんが部屋にひとり残った。
私は洗濯物を取り込もうとしていた。ベランダに出るそのとき、背中越しに彼の気配を感じた。
風にワンピースが膨らみ、脚がすうっと浮き出る。
手すりに伸びた私の腕を、彼の視線が辿っていた。
——見られている。そんな感覚が、肌の上を這っていた。
「……理沙さん」
名前を呼ばれ、私は振り返った。
それは初めてだった。娘の前では絶対に“○○さん”と呼んでいたのに。
「結花ちゃんが、いなくて……よかった」
その声は低く、少しかすれていた。
気づけば、彼の手が私の手首をとらえていた。指先が汗ばみ、心臓が早鐘を打つ。
「だめ……あなたは、娘の……」
言葉を遮るように、唇が重なった。
最初は驚きで硬直した身体が、彼の指先に髪を梳かされると、ふっと力が抜けた。
彼の舌が、私の下唇をなぞる。
それだけで、下腹部が熱くなり、背筋が震える。
「服、……脱がせてもいい?」
囁くようなその声に、私は目を閉じた。
薄手のワンピースのボタンが、ひとつずつ外されていくたび、
私の胸元があらわになる。その奥に潜んでいた「女」が、息を吹き返していく。
レースのブラの上から指がそっと撫でられる。乳房の尖りが布越しに彼の手を迎え、
「やめて」と言おうとした唇が、吐息とともに開かれる。
ワンピースが床に滑り落ち、私は下着姿で、彼の前に立っていた。
鏡の中、私は顔を紅潮させ、瞳を潤ませ、肩を上下させながら——
確かに「母親」ではなく、「女」としてそこにいた。
第三章:果ててなお、罪と悦びの余韻のなかで
ベッドのシーツの皺が、私の肌に焼きつくようだった。
春翔くんの指先が、太ももに落ちた汗をすくい、ゆっくりと膝の裏をなぞる。
ひと筆書きのようなその動きが、熱くなった内ももをやさしく、しかし執拗になぞるたび、私は声を殺しきれず、小さく啼いた。
「……気持ちいい?」
その問いが、囁くように耳元に落ちたとき、
私はもう、自分の意志でこの快楽から抜け出すことができないのだと、悟っていた。
彼の指がレースをめくり、濡れた奥へと触れた。
熱く、脈打ち、吸い寄せるように私自身が彼を迎え入れていた。
「こんなに……もう」
そう言って彼が私の脚を開くと、空気が一気に触れた。
羞恥に頬を赤らめながらも、私はもう足を閉じることができなかった。
春翔くんの顔が、ゆっくりと私の腿のあいだに沈んでゆく。
吐息が触れた瞬間、背筋に火花が走った。
「や……そこ、だめ……ッ」
息を呑むような舌の動きが、私の奥をゆっくりとほぐしていく。
先端が円を描くように、次第に細くなっていき、中心に深く沈んでいく。
くちづけるたび、私は腰を揺らして応えていた。
「してはいけない」とわかっていながら、彼の舌が触れるほど、私は“生きている”と感じてしまった。
しばらくして、彼の唇が乳房へと這い上がってきた。
硬くなった乳首をそっと含まれる。濡れた舌がゆっくりと回り、甘噛みに変わる。
「こんなに……感じてるの、初めて見た」
耳元で囁かれるその言葉に、私は目を閉じ、無言で頷いた。
今、私はまるごと、春翔くんの手の中にあった。
彼の手が私の腰にまわる。
ゆっくりと、彼の熱が入り込んでくる。
最初はわずかに圧迫されるような感覚だったが、それはすぐに馴染み、
奥の奥まで触れられているような、甘美な疼きに変わった。
正常位。
彼の体温がすべてを覆い、胸と胸が擦れ合う。
彼が動くたびに、奥が締まり、肌と肌が音を立てる。
「こんな音……自分の身体から出てるなんて」
私は恥じ入りながらも、目を逸らせなかった。
やがて、彼の動きが速くなり、奥が何度も打ちつけられる。
自分の身体の芯が、喜びに濡れて、崩れていくのがわかる。
「……後ろ、向いてみて」
彼に言われて、私は無言で四つん這いになる。
後背位。
腰を掴まれ、ひと突きで深くまで入り込まれた瞬間、
声が漏れ、目の端に涙が滲んだ。
自分でも知らなかったような声が喉の奥からあふれ、
私は女として、すべてを晒していた。
そして——彼が私の肩を抱き、背中にくちづけを落としながら、
「今度は……理沙さんの上で、動いてほしい」と言ったとき、
私は静かに跨がった。
騎乗位。
彼の上で揺れる自分の身体を、自分自身が見下ろす。
「……恥ずかしい」
そう言った私に、彼は「美しい」と返した。
手を重ね、腰を導かれながら、私は自分の奥へ、彼の熱を沈めていった。
ふたりの呼吸が揃い、目を合わせながら、波が頂点へと向かっていく。
「……イきそう……」
その一言が合図のように、私は彼の胸に身体を預け、
全身が痙攣するような快楽に、果てていった。
静寂。
風鈴が、夜風にゆれる音だけが、耳に届いた。
彼は私の髪を撫でながら、
「……理沙さんって、本当に綺麗」と小さく囁いた。
私は応えず、ただ彼の胸に頬をあずけた。
——あのときの私の表情を、鏡に映していたら。
そこにいたのは、もう“清楚で真面目な女”ではなかった。
娘の彼氏という禁断に抱かれながら、
自分の身体と心を許し、悦びを選んだひとりの女の顔。
それは罪だった。
けれど同時に、それが私を再び「生きている」と感じさせてくれた唯一の証だった。
終章:背徳という快楽のあとで
私はもう、「清楚で真面目な女」ではない。
あの夜のことは、誰にも言えない。
でも、私の身体はもう、彼の温度を忘れてはくれない。
その後も、彼は時折ひとりで訪れるようになった。
私はそのたび、シャワーを浴び、
香りのするローションをつけ、
そっとワンピースを選ぶ。
誰にも見せたことのない、もうひとつの「私」が、そこにいる。
それは禁忌と快楽の、甘く苦しい記憶。
でも私はもう——戻れない。
それが、いまを生きるということなのかもしれない。



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