夫と娘が、偶然にも同時にいなくなった午後。
夫は出張で地方の温泉街へ。娘は修学旅行で、夜まで帰らない。
家には、私ひとり。
しんと静まり返ったリビングに、時計の針の音だけが重たく響く。
午後二時。
淹れた紅茶の湯気が、陽だまりの中でふわりと揺れていた。
──こんなふうに誰にも気を使わず、部屋着のままで過ごせる時間なんて、いつぶりだろう。
肩を少し脱いだキャミソールから素肌がのぞき、
裸足の足先が、ソファの下で冷えたフローリングに触れる。
その時だった。
ピンポーンと、無機質なチャイムが鳴った。
玄関先のモニターに映ったのは──
娘の家庭教師、直哉(なおや)くん。
「ごめんなさい……今日、授業あると思って来ちゃって」
「まあ……来週よ。でも、せっかくだから上がっていったら?」
自然と、そう口にしていた。
心が、ほんの少し浮ついていた。
若い男の子が家に入ってくる、というだけで。
彼は二十一歳。
娘の学年にしてはずいぶん若い家庭教師だけれど、頭の回転がよくて、礼儀正しくて──
無垢な目をした、素直な男の子。
リビングで紅茶を出し、二人並んでソファに腰を下ろした。
会話は自然と、彼の恋愛の話になっていく。
「……実は最近、別れたばかりなんです」
「そうだったの……どうして?」
「……たぶん、体のことだと思います。自信ないんです、俺」
一瞬、空気が止まった。
「自信って、どんな?」
「……その、男として……うまくできてないのかな、って。大きさとか……その……」
「……あら」
私は少しだけ笑ってしまった。
「ひどいな……笑うなんて」
「ごめん。でも、可愛いわね。そんなことで悩んでるの」
そのときの私には、理性なんてもうなかったのかもしれない。
彼の頬が赤らむのを見ているうちに、
胸の奥に、むず痒い熱が灯り始めていた。
私は、手を伸ばして彼の指に触れた。
少し汗ばんだ、若い肌。
その温度に触れた瞬間、身体の奥で何かがはじけた。
「……ねえ、見せてくれる?」
「え……?」
「気にしてるなら、私が見てあげる。ちゃんと、判断してあげる」
そう囁いた私の声は、どこか濡れていた。
彼のジーンズのファスナーをそっと下ろす。
その下から、まだ半ば眠っていたものが顔をのぞかせた。
指先で、優しく包む。
くすぐるように、撫でるように。
やがてそれは、私の手のひらの中で膨らみ、鼓動を刻みはじめる。
──若い匂いがした。
熱と、欲と、少しの不安が混じった、生々しくて、愛おしい匂い。
私は、唇を近づけた。
舌先でゆっくり、先端をなぞる。
ぬめりと、温度と、脈動。
それを味わいながら、ゆっくりと含んでいく。
「……あっ……だめ……お母さん……」
「しーっ……静かに」
舌を螺旋を描くように動かし、奥まで、奥まで──
唇をすぼめて、根本に吸いついたとき、
彼の腰がふるりと跳ねた。
私は、自分がこんなにも淫らな感覚を忘れていたことに、愕然としていた。
彼の手が、私の髪を優しく撫でる。
私は顔をあげて、彼の眼を見つめた。
「……今度は、私の番ね」
キャミソールを脱ぎ、レースの下着をゆっくりとずらす。
彼の手が、そっと私の太ももに触れる。
指が、ためらいがちに、秘めた花弁の奥へ──
唇が、私の脚の間に降りてきた。
舌が、湿り気の奥を、探るように動き出す。
ぬるり、と。
柔らかな肉が押しひらかれ、
そこに彼の舌が入り込んでくる。
「……っ、う……んっ」
私は目を閉じた。
愛撫というより、祈りのような舌の動き。
彼は何度も、奥を舐め上げ、吸いあげ、
まるで、私の存在ごと飲み込もうとするようだった。
そして──
体位は変わっていく。
最初は、正面から。
彼が私の脚を抱えたまま、奥まで突きあげてくる。
角度のたびに、刺激が変わり、私は何度も声を漏らした。
次に、私が彼の上に跨がる。
彼の胸に手をつき、腰を回し、沈み込みながら──
自分の中をかき混ぜていく。
音が、熱が、呼吸が、溶け合っていく。
最後に、後ろから。
私はベッドに両手をつき、彼が背中を覆うようにして、奥まで貫いてきた。
「あっ……だめ……そこ……」
快感の波が、引き潮のように何度も何度も襲ってくる。
私は全身を仰け反らせ、絶頂の波を迎えた。
──気づけば、涙が一粒、頬を伝っていた。
ベッドに仰向けのまま、息を整える。
彼はそっと、私の髪を撫でながら隣に横たわった。
「大丈夫……でしたか」
「……ええ。とても」
天井の模様が、にじんで見えた。
私はまだ、女だった。
それだけで、今夜はもう、十分だった。



コメント
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