八百屋の視線に濡れた私|昼下がり、見られる快楽に堕ちて

第一章:汗に濡れた鏡の奥、ほどけていく私

蒸し暑い風が網戸をかすめ、午後の陽がうっすらとレースカーテンの隙間から差し込んでいた。

午前中に急いで片付けた洗濯物は、まだバルコニーで風に揺れている。リネンのワンピースが私の目の前で静かに膨らみ、しぼむたびに、まるで私の奥にある欲望の呼吸を代弁しているかのようだった。

シャワーを浴びるつもりではなかった。ただ、あまりにも汗ばみ、ブラウスの背中が肌に張りついて気持ち悪くて──
気づけば、私はバスルームのドアを静かに閉めていた。

ボタンを一つ、また一つと外していくたびに、肌と生地の間にたまっていた湿度が、ふわりと宙へほどけていく。脱ぎ捨てた下着とブラウスが床に落ちると、音もなくひんやりとした空気が胸を撫でた。

ふと、曇りかけた鏡に映る自分の姿が目に入る。

濡れた髪が肩に張りつき、汗とシャワーの水滴が鎖骨から胸の谷間にかけて、つう…っと一筋、滑り落ちていく。その雫を目で追った時──気づいた。

乳房の根元に、うっすらと残る痕跡。

「あ……まだ、あるんだ」

あれは数日前。夜、誰にも見られない寝室の中で、自分の指でタコ糸を巻きつけ、確かめた“見られる快感”。
きゅっと絞めるたびに、乳首がじんじんと脈打ち、呼吸が乱れた。身体は悲鳴ではなく、欲望としてそれを受け入れていた。

痕があるだけなのに、胸の奥が熱くなる。
乳首は既に、湿度と興奮で尖っていた。鏡に映るその姿が、あまりに“淫ら”で、私は思わず唇を指でなぞった。

こんな身体──自分だけのものにしておくには、もったいない。
こんな感覚──ひとりで抱えるには、苦しい。

そのときだった。

「……あのお店、まだやってる時間かも」

頭にふと浮かんだのは、家から少し離れた小さな八百屋。
路地裏にひっそりと佇む、木箱とビニール袋だけの簡素な野菜売り場。
以前、タコ糸で縛ったままノーブラの胸を晒して訪れた、あの場所──

おじさんの視線が、まだ身体に残っていた。

品定めをするふりをして、おじさんの顔に身体を向けた時のあの目。
“奥さん、いい乳してるな”と、笑いながら言ったあの声。

あれはただの視線じゃなかった。私という女を、“見たい”と願う、露骨で本能的な欲望だった。
その欲望を正面から浴びた瞬間、羞恥と快感がひとつになった。
服を着ているのに、裸よりも恥ずかしく、
誰にも触られていないのに、体の奥が疼いて……濡れた。

「また、行きたい……」

無意識に呟いたその言葉が、全身を包む。
お湯のシャワーを首筋からあてながら、乳首に指を這わせた。
そこはもう、濡れた髪よりも熱かった。

明るい昼間に、ノーブラで出かけていく自分。

店主の前掛けに拭われる手、日焼けした腕、煙草の匂い。
その手が、もしももう一歩、近づいてきたら──

そう想像しただけで、私は膝をすこし揺らしていた。
脚の間に熱が溜まり、シャワーの音に紛れて、小さく喉が鳴った。

鏡の中の私は、完全に“誰かに見られたがっている女”だった。

第二章:視線で触れられる身体

車のエンジンを切った瞬間、蝉の声が途切れた。
代わりに聴こえたのは、風に揺れるビニールシートのこすれる音と、小さく軋む木製パレットの音。
その全てが、私の体のどこかをじんわりと刺激するように響いた。

家から持ち出した身体は、ベージュのノーブラのブラウスと、前に深くスリットの入った濃茶のミニスカートだけに包まれていた。
冷房の効いた車内から出ると、外気のぬるさが、むき出しの肌にぴたりと貼りついてくる。
私はゆっくりとドアを開け、太ももを一本、路地へ差し出した。

──そのとき。

店の奥にいたおじさんが、軽トラの荷台を拭いていた手を止めた。
動きもなく、声もなく。
ただじっと、私の脚を、太ももの付け根を、スカートの影に宿る空気さえも凝視していた。

「……いい脚してるなあ」

そのひとことが、空気よりも濃密に胸に落ちてきた。
私は返事をすることもできず、ただゆっくりと脚を揃えて立ち上がった。
そのときの自分の動作が、どれほど官能的に見えたかなんて、考えるまでもなかった。

視線でなぞられる。
それだけで、下着も着ていない乳首が、こっそりと疼き始める。

「今日も……来てくれたんだね」

おじさんは私の顔を見ずに、胸元を見ていた。
ベージュの薄い生地の向こう、乳首が軽く浮き出しているのが自分でも分かった。
風が吹くたびに布がふわりと揺れ、乳首がほんの少しだけ、布を持ち上げる。

「……いい乳首してるな。摘まんでみたくなるよ」

喉の奥で小さく何かが鳴った。声ではなかった。
胸の奥に蓄積した熱が、身体の表層を焼きながら、少しずつ下りていく。
股のあいだが、じんわりと濡れていくのが分かる。

「お店の方、見せてもらってもいいですか?」

やっとの思いで言葉にすると、おじさんは笑って頷いた。
その笑みには、視線と同じ温度の何かが宿っていた。
軽蔑でもなく、愛情でもない。ただ、欲望。
それを、あえて隠さない顔。

私はその顔に向けて、背中を向けた。

小さな木箱の並ぶ路地売りの店。野菜の甘い匂いと、夏の埃っぽさが入り混じる。
その空間に入るだけで、すべての感覚が“生々しく”なっていくのを感じた。

コンテナに並べられた新玉ねぎに目をやる。
その丸く柔らかい形が、なぜか自分の胸の感覚と重なった。
手に取った瞬間、うっかり滑って、ころん……と床へ転がっていく。

「……!」

思わずしゃがみ込んだ。

膝を曲げ、スカートの前スリットが大きく開いた。
太ももが空気に晒され、後ろにいるおじさんの気配が濃くなる。
振り返るまでもなく、今、彼がどこを見ているのか分かる。

脚の付け根。
丸まった背中。
密やかに弓なりに張ったお尻。

「奥さん……そんな格好、いつもしてるのか?」

背後からの声に、玉ねぎを拾いながら応えることができなかった。
ただ──頭を下げたまま、「いいえ」と小さく首を振った。

「ふぅん……じゃあ、ここに来るときだけ、そんな姿になるんだな」

喉が詰まりそうになる。

“見抜かれた”──
その瞬間に感じる羞恥と快楽は、
背徳という名の香水みたいに、
ゆっくりと、全身に沁みていく。

「その格好……よく似合ってるよ。
ほんと、今日もすごく、いいよ」

その言葉が、決定的だった。

私はその場にしゃがみ込んだまま、思わず太ももを閉じた。
けれど、遅かった。
既におじさんの視線は、私の太ももの間を通り抜けて、
スカートの奥の、もっと奥の熱を感じ取っていたはずだった。

“服の上から触れられている”
──それ以上の、快楽があるなんて。

汗の匂いと、野菜の匂いと、男の視線。
私はあの八百屋の木箱の中に、“女としての自分”を置いてきてしまった気がした。

それなのに、帰りの車の中、
私は胸元に指を入れて──
また、触れてしまった。

第三章:羞恥の奥に、ほどけた私の核心

それは、ふとした誘い文句だった。

「奥さん、少しだけ……座っていかないか?」

八百屋の奥──小さな木机と、使い込まれた二脚の椅子。
そのうちのひとつに、おじさんが無言で手を差し出す。
そこはラジオの音がかすかに流れ、夏の陽が木箱越しに差し込むだけの、まるで密室のような路地の奥の静けさだった。

私はゆっくりと腰を下ろした。
視線の先には、おじさんの顔──じゃなく、その視線の先。
ベージュのシャツの襟ぐりがふわりと開き、呼吸のたびに揺れる胸の谷間。
濡れているのは、身体だけじゃなかった。

「……いい匂いがするな」

おじさんの低く擦れた声に、私は指先を膝の上で重ねた。
その手が震えているのが分かった。
けれど、拒むという選択肢は浮かばなかった。

「奥さん……本当は見せたくて来たんだろ?そのシャツの下を──誰かに、ちゃんと見てもらいたくて」

返せない言葉が、喉元にせり上がった。

胸の内側で、乳房がじんわりと脈を打つ。
肌の上にあるはずの布の存在が、こんなにも**「感じる」ものだとは知らなかった。**

「……脱がなくていい。そこから、谷間だけでいい。見せてほしい」

私は静かに体を前に傾けた。
それだけで、胸がシャツの中で浮き上がり、陰影を描きながら谷間を深くする。

その瞬間──

おじさんの視線が、音もなく私の胸元に沈み込んできた。

「……助平な乳だな。柔らかくて、甘そうだ」

吐息のようなその声が、空気を介して乳首に触れた気がした。

そして次の瞬間──

ふと、胸の先に重みが加わった。

見ると、おじさんの指先が、シャツの襟の内側へとすべり込んでいた。

「触れるな」とも、「触れて」とも言えなかった。
その手のひらの温度が、肌を通して乳首の奥へ──いや、子宮の中心にまで伝わってきた。

「……すごいな。尖ってる。もう、こんなに」

布越しの指が、私の乳首を挟み込んでゆっくりと捻る。
ピリッとした電流のような感覚が、背筋から一気に腰の奥へ落ちていった。

「いや……」

そう言ったはずなのに、膝が開いていくのが分かった。
スカートの深いスリットから、太腿の奥が空気に晒される。
ピンク色の下着が、座面に押しつけられて湿っていくのが自分でも分かるほどだった。

「やっぱり……奥さん、すごい身体してる」

言葉と視線が重なり合い、まるでそこに、もうひとつの手があるかのようだった。
そして──

おじさんの親指が、ゆっくりと私の乳首の頂点を撫でた瞬間、
私は、はっきりと、“絶頂”に触れた。

目を見開いたまま、声が漏れそうになるのを堪える。
身体が小さく震え、汗ばむ背中が木の椅子に貼りつく。
乳首は彼の指に吸いつくように尖り、
下腹部が痙攣のように波打った。

「……今日はこれくらいにしとこうか」

彼の手が静かに引いた。

私の胸には、指の形がうっすらと残っていた。
でもそれは、痕ではなく──熱だった。
乳房の奥に埋め込まれた“視線の温度”。

立ち上がると、脚が少し震えた。
私の中の“女”が、まだしがみついていた。

「……また来るよな、奥さん」

答えられなかった。
けれど、レジ袋を持つ手の指先が、ほんのわずかに喜びに震えていた。

八百屋の小さな暖簾をくぐって外に出たとき、
昼下がりの光がまぶしく、全身が何かから生まれ直したような気がした。

私はまた、来てしまうかもしれない。
この身体を、もう一度“見られる悦び”に捧げたくなるかもしれない。

羞恥と快楽がひとつになったあの瞬間。
それが、私をほどいた鍵だった。

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