鏡越しにほどかれた私の欲望──年下美容師との濡れた午後

第一章 ガラス扉の奥で、私はまだ“誰かの妻”だった

銀座の外れ、雑居ビルの三階。
一歩足を踏み入れると、外の喧騒が嘘のように消えた。
ひんやりとした空調の中に、ほのかにベルガモットとウッドの香り。
白とグレイを基調にしたミニマルな内装に、
“他人の目線から解放される空間”というコンセプトを感じた。

私は38歳、結婚してもうすぐ11年。
子どもはいない。
週3の事務パート、月に2回のヨガ、あとは家事と義母との電話──
“幸せですか”と問われれば、“不満はありません”と答えるだろう。

でも本当は、誰かに「綺麗ですね」って言われたくて。
誰かの欲望の中に、自分の輪郭を見つけたくて。

その日、私はこのサロンを「友人に紹介された」と夫に言ったけれど、
実際はInstagramの広告に惹かれ、自ら指で探し、予約を入れていた。

ガラス扉を押した瞬間、受付カウンターの奥から現れたのは──
「こんにちは、春樹です。初めてですよね」
黒髪に白シャツ、シンプルなのに、どこか色気を帯びた整った顔立ちの青年だった。
若い、美容師にしては落ち着いた声。
まっすぐに目を見てくるのが、逆に息苦しかった。

「カウンセリングシートのご記入をどうぞ。お冷、お持ちしますね」
そう言って彼が差し出したグラスは、私の指先が少し触れるだけで震えそうだった。

“こんなに、誰かの目に意識を向けられたの、何年ぶりだろう”

施術ブースに案内され、深く沈み込む椅子に座る。
眼の前には大きな一面鏡。
“ここからは、あなたが主役です”──そんな言葉が、壁に小さく書かれていた。

「今日は少し、特別にしますね」
春樹のその声が、鏡の奥から身体にしみてくるようだった。


第二章 視線と指先に、濡らされていく午後

「緊張されてますか?」
「いえ……」
「首、少しだけ前に傾けて。そう……すごく綺麗です」

首筋に指が触れるたび、思考が削がれていく。
彼の手は、柔らかさと芯のある力を同時に持っていて、
その温度が、なぜか私の奥のほうをざわつかせた。

ドライヤーの風。
耳元で囁くように話しかける声。
そして、鏡越しに交差する視線。
まるで──視姦されているようだった。
でもそれは、決して不快ではなかった。

「……春樹さん、視線が強いですね」
「気づいてました?」
彼は微笑みながら、手を止めずに続ける。
「初めて会ったときから……ずっと、目を離せないでいます」
「……どうして」
「綺麗だから。……今も、濡れてるの、わかってます」

──髪じゃない、身体の奥のことを言われている。
わかってるはずなのに、否定できない。

春樹は、鏡越しに目を合わせたまま、スカートの裾をさりげなく指でなぞった。
「声、出そうになってましたよね……耳、感じるんですね」
「やめて……」
「本当に?」

椅子のリクライニングが深く倒され、私は完全に彼の目の前にさらされた。
けれど、不思議と怖くなかった。
むしろ、自分から脚を少しだけ開いてしまっていた。

春樹はそっとしゃがみこみ、
その目線のまま、静かにズボンのベルトを解いた。


第三章 無我夢中の口唇と、鏡に映る“知らない私”

私は、春樹の腰の前に膝をついた。
言葉も思考もなかった。
ただ、その熱と形を、唇で確かめたくて仕方がなかった。

「いいんですか……?」
私の問いに、彼は何も言わず、私の髪をそっとかき上げるだけだった。
その仕草が、あまりに優しくて、淫靡で、
私は完全に理性を手放した。

舌先で、ゆっくりと先端をなぞう。
柔らかく、でも芯のある硬さが、唇に伝わる。
彼の呼吸が少しずつ乱れていくのを聞きながら、
私はまるで、自分が誰かに愛される形をなぞっているような錯覚に陥っていた。

「ん……っ、綺麗すぎて……飲み込まれそう」
彼の手が、私の後頭部に添えられたとき、
私はさらに深く、奥へと誘い込んでいった。

鏡の中に映る自分が、あまりに官能的で、
唇を動かすたび、頬が染まり、涙がにじんでいた。

それなのに、私はやめられなかった。
むしろ、夢中だった。

「奥さん……そんな顔、反則です」
そう呟く春樹の声が、私を女として絶頂させる。

目を閉じたとき、
私の中にはもう、“夫”という存在はいなかった。

ただ、春樹の香りと熱、
そして鏡の中で乱れていく、
“まだ見たことのない私”が、すべてだった。


余韻 濡れた口唇で、私は“妻”をやめた

喉の奥に余韻を残したまま、
私は春樹の手を借りて、ゆっくりと身体を起こした。

「次は、僕の番ですか?」
その言葉に、私の心と身体はまた、深く揺れる。

もう戻れない──でも、戻りたいとも思わない。

鏡の奥にいたのは、
誰かの妻ではない。
誰かの母でもない。
“ただ、女として求められ、濡れていた私”だった。

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私が妻に興味を抱いていたら…妻の変化に気づいていたら―。妻は月に一回、美容室に通っている。行きつけの美容室でずっと同じ美容師が担当のようだ。しかし結婚して5年、妻に対して無頓着になった私は、妻の髪型の変化など関心がなかった。もっと妻に興味を持っていたらこんな事にはならなかっただろう…。そして、気づくと妻は月に数回美容室に通うようになっていた。髪型は何も変わっていない。あの若い美容師と会う為に…。


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