結婚式というのは、女にとって「物語の終わり」であり、「別の物語の始まり」――
誰かがそう言っていた。
でも私にとっては、そのどちらでもなかった。
ただの、よくできた台本のなかで与えられた台詞を読み上げる“役”のようだった。
「おめでとう」「幸せになってね」
数えきれない祝福の言葉も、どこか遠くで響くだけだった。
私はその舞台の中心にいながら、観客のように自分を見ていた。
夫になる人は、優しくて、真面目で、気が利かない。
それでもいい、と思い込もうとしていた。
だけど、何かがずっと引っかかっていた。
――この人と、なぜ結婚するんだろう?
答えは出ないまま、私はヴェールをかぶり、
鏡の前で白いドレスに包まれた自分にこう言った。
「もう、戻れないんだから」
そして二次会。
司会と幹事を務めてくれたのが、夫の大学時代の友人、彼だった。
名前も顔も知らなかったその男が、私の心に一気に火をつけた。
場を仕切りながらも、空気を読み、ユーモアを絶やさず、
私が微笑めばその笑みに静かに応え、
目が合えば、ごくわずかに口角を歪めて笑ってみせる。
その笑みが、焼きついた。
胸の奥、普段は鍵をかけている場所に。
言葉より先に、本能が反応していた。
私の中の“女”が、静かに目を覚ましかけていた。
そして、その夜。
二次会の打ち上げと称して開かれた小さな飲み会。
彼はさりげなく私の隣に座り、グラスに注ぎながら言った。
「今日の主役、ずっと見惚れてた」
声は低く、湿り気を含んでいた。
その言葉に、喉の奥がざわついた。
一方で、夫は少し離れた席で、酔いに任せて独り言のように笑っていた。
隣の彼とのあいだに漂う空気は、それとはまるで違っていた。
私はゆっくりと彼の顔を見つめて、言った。
「もっと、早く会いたかった」
それは、おそらく禁句だった。
でも、もう止まらなかった。
その夜、彼が夫に日本酒を注いだとき、私は確信した。
――潰す気なんだ、と。
それは私のメッセージに対する、彼の返事だった。
「夫を酔いつぶして、このあと…2人で飲みに行かない?」
そう送ったLINEの既読表示がついたまま、返事はなかった。
でも、夫のグラスに注がれる日本酒と、私に送られた目配せ。
あれで十分だった。
「俺がホテルまで運ぶよ。酔ってるから危ないし」
と彼が言ったとき、私はうなずきながら立ち上がった。
彼の肩に寄りかかる夫の姿が、あまりにも無防備で、
その隣に立つ彼の手が、私の腰に添えられたとき――
私はもう、逃げるつもりはなかった。
ホテルの部屋に入ると、夫はすぐにトイレへ駆け込んだ。
便器に吐きながら呻く背中を、私が擦る。
その後ろから、彼の手が私の腰に触れた。
その触れ方は、介抱とは明らかに違っていた。
ゆっくりと、確かめるように。
まるで「ここに触れてもいいか」と尋ねながらも、止まらない指先。
私は何も言わず、ただ静かに受け入れていた。
スカートの裾が上がり、ナイロン越しに彼の指が敏感な場所をなぞる。
吐息が漏れ、喉が震える。
目の前では夫が咳き込んでいるのに、私は別の男に、
女の部分をゆっくりと擦られていた。
やがて彼は私のパンティとストッキングをいっきに下ろし、
その場にひざまずいて、舌を這わせた。
太ももの内側を這う舌が、
やがて花弁を開くようにして、私の芯に届いた瞬間――
私は足元が崩れるような感覚に襲われた。
「ん……っ、だめ、声が……っ」
でも彼の舌は止まらない。
吸い、舐め、柔らかな粒を転がし、
甘く、深く、私の中に欲望を流し込んでいく。
私の腰は勝手に動き出し、
夫の背中に置いた手はすでに役割を終えていた。
そして、彼は私の顔の横に立ち、その象徴を見せつけた。
熱を帯び、力強くそそり立つそれに、私はためらいなく唇を重ねた。
ゆっくりと咥え、頬張り、舌を巻きつけながら、
彼の吐息と快感を確かめる。
やがて、私は彼の上に跨った。
まるで、女神が供物を迎えるように、慎重に、淫らに。
肉が肉を裂きながら、奥へ奥へと貫かれていく。
私はその全てを受け入れながら、
腰をゆっくりと、そして激しく揺らしていった。
天蓋のない部屋で、私は彼の上で踊る。
滴る汗と吐息と、淫らな音が重なり、
世界がふたりの熱で震えはじめたとき――
私は、あの“式の誓い”を思い出していた。
「永遠に共にあることを誓いますか?」
今なら、こう答えられる。
「彼となら、何度でも」
そのとき、彼が中で震え、私をぎゅっと抱きしめた。
全身を打ちぬく熱。
彼の奥で咲き乱れ、私は女として、初めての春を迎えた。



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