【第1部】まだ先生と呼ばれた夜──静けさの中で濡れる予感
あの家の玄関を開けるのは、三年ぶりだった。
高校受験から大学受験まで、ずっと一緒に過ごした彼──篤人の家。もう、教える立場でも、先生でもないはずなのに、彼の母から届いた「大学合格しました」の知らせに、胸の奥がじわりと温かく滲んだ。
「先生、久しぶりですね」
その声に、私は少し息を止めた。
低く、そして、穏やかで。
あの頃よりもずっと、男の声になっていた。
「先生って……もうやめてよ。今日はお祝いで来ただけだよ?」
そう言いながらも、彼の視線は私の顔を撫で、首筋を追い、そして胸元で静かに止まっていた。
ひとつ年をとるたびに彼の視線は、少しずつ、私を“女”として見ようとしていた。
けれどそれに気づかないふりをするのが、大人の役目だと思っていた。
リビングには、ちらし寿司とグラスがふたつ。
母親は「夜まで戻らないから、ふたりでゆっくりしてね」と言い残して出かけていた。
「乾杯しよ。大学合格、おめでとう」
グラスの音が重なると、なんだか“始まってしまった”気がした。
一口目の泡が喉を過ぎるころには、脚の奥に違和感があった。
潤んでいた。理由もないのに、疼いていた。
隣に座る彼の体温が、ソファの布越しにじんわりと伝わってくる。
「先生、髪、伸びたね……」
「伸ばしてるの。最近、誰かに褒められたくて」
「……俺が褒めちゃ、ダメですか」
視線が交錯したその瞬間、私は呼吸を忘れた。
彼の眼差しは、もう“生徒”のものじゃなかった。
【第2部】指先と唇の記憶──教えられる悦び、教える疼き
静かに、指先が触れた。
膝の上。ほんの一瞬のためらいのあと、彼の指は私の手の甲を撫でた。
その震えに、私の下腹がきゅっと疼いた。
「ねぇ、先生って……ほんとは、俺がどんな風に見てたか、気づいてた?」
「……わからないふり、してたかも」
「じゃあ、もう……いいよね?」
言葉よりも早く、唇が重なった。
思っていたよりも、ずっと深くて、濡れていて、舌先が絡むと、私は脚の奥をぎゅっと閉じてしまった。
「……上手くなったね、キス」
「先生に、教えてもらったから」
私の胸元に伸びる彼の手。
指がボタンを外しながら、視線だけで許可を求めてくる。
もう、止められなかった。止めたくなかった。
ブラウスの内側に手が入り、レース越しに乳首が擦られた瞬間、私は声を漏らした。
「……ん、やだ、そんな触り方……」
「やだって言いながら……感じてるよ、先生」
彼の舌が、乳首を吸い、転がし、唾液が伝うたびに、私の脚の奥が湿度を増していくのがわかった。
私はスカートの中で、すでにとろとろになっていた。
下着越しに触れられた瞬間──
「……もう、こんなに?」
「……うるさい、あんたのせい……」
私は彼の手を導いた。下着の中へ。
そして、教えるように、伝えた。
「優しく……そこじゃない、少し……ずらして……そう……ああっ、そこ……っ」
彼の指が、私の内側をなぞるたび、過去に教えてきたどんな問題よりも、私は解けていった。
【第3部】赦しと再履修──濡れた罪と声にならない快楽
その夜、私は彼に何度も教えられた。
自分の奥が、こんなにも敏感だったこと。
誰かに求められることで、どこまで潤むのか。
ベッドの上で、私は彼を受け入れた。
痛みはなかった。ただ、濡れていた。
彼のものが、ゆっくりと私の中に沈んでいくたびに、
私は女として、何かを“終わらせて”いった。
婚約者との未来も、
「先生」という仮面も、
この疼きには勝てなかった。
彼が中で達した瞬間、私は静かに泣いた。
快楽というより、赦しのようだった。
彼は私の髪を撫でながら、
「先生、まだ……教えてほしいことが、たくさんある」
と呟いた。
私は目を閉じたまま答えた。
「……じゃあ、今夜だけは、何でも教えてあげる」
その夜、私は“先生”を辞めた。
終わりの一文:
彼の舌が触れた場所に、いまでも熱が残っている。
教えたはずの彼に、私がいちばん教えられてしまった夜だった。



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