大学教授とゼミ生の一夜──壊れた線の上を歩く女の告白

結婚25年目… 妻が女に戻る瞬間 貞淑妻53歳 安野由美

結婚25年目。大学教授の夫は研究に没頭すると妻の存在を忘れてしまう。息子も巣立ち、愛に冷めた生活に息苦しく感じていた。そんなある日、近所の近藤という男が…。



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【第1部】静かな研究室でほどけた心──乾いた教授とまっすぐな学生

 四十代後半になって、私は自分の人生がすっかり固まってしまったように感じていた。
 地方都市にある総合大学の文学部で教壇に立ち、研究室と講義室と会議室を往復する日々。
 学生たちはそれなりに私を慕ってくれるし、研究費もそこそこ通る。外から見れば、安定した「成功した大人」なのだろう。

 けれど、夜、自宅の寝室で天井を見上げているとき、胸の奥は乾いた音を立てていた。
 結婚して二十年近くになる夫との会話は、家計と健康診断の結果くらい。
 触れ合いはとうに途切れ、隣に寝ている人の体温を意識しなくなって久しい。

 ある日、ゼミの発表で、人間の「理性と本能」をテーマに議論していた。
 発表を終えた一人の男子学生が、真っ直ぐな瞳で私を見た。

 「先生って、いつも冷静ですよね。
  先生自身は、理性と本能がぶつかったこと、ないんですか?」

 不意を突かれて、言葉が少しだけ遅れた。

 「……ないと言ったら、嘘になるわね」
 「やっぱり。人間って、そういう揺らぎがあるほうが、魅力的だと思うんです」

 彼は二十代前半。
 幼さの残る顔立ちなのに、ふとした瞬間に大人びた視線を向けてくる。
 レポートは丁寧で、議論になると私の言葉を逃さない。
 そして、なぜか、他の学生よりも近い距離に立とうとする。

 その日の夕方、研究室の灯りを落とし、キャンパス近くの駐車場に向かって歩いていると、背後から足音が追ってきた。

 「先生、今日はもう帰りですか?」
 振り返ると、彼がリュックを背負ったまま、少し照れたような笑顔で立っていた。

 大学の裏手には、小さな飲食店街と、その先にネオンの光が滲む一角がある。
 そこがどういう場所なのかは知っていたが、意識的に視線を向けないようにしてきた。

 「先生、あっちって……ラブホ街ですよね」
 悪戯っぽく目を細める声に、思わず苦笑する。

 「そういうところには、縁がないわね」
「意外だな。先生って、そういうのもちゃんと経験してきてると思ってました」
 「どういうイメージなの、それ」

 彼は足を止めず、私と並んで歩く。
 街灯に照らされる横顔は、昼間よりも大人びて見えた。

 「先生こそ、理性と本能の境界を、一番よく知ってる人じゃないですか」
 「知識としては、ね」
 「……体験としては?」

 心臓が一拍、強く鳴った。
 冗談だと分かっている。
 けれど、その問いは、私がずっと目をそらしていた場所に、静かに手を伸ばしてきた。

 「そんなこと、学生に話すことじゃないわ」
 そう答えると、彼は少し笑って、前方のネオンを顎で指した。

 「じゃあ、今日は“取材”ってことでどうですか」
 「取材?」
 「先生が書いてる論文のための、フィールドワーク。
  ……なんて、言い訳にできるかもしれないですよ」

 「馬鹿なこと言ってる」と切り捨てればよかった。
 でもその瞬間、胸の奥で、誰にも知られないまましぼんでいた何かが、小さく息を吹き返した。

 ──私は、まだ女として見られているのだろうか。

 その愚かな問いが、喉元まで込み上げてきた。

 「……そんな取材、必要ないわ」
 そう言いながらも、足は完全には止まらなかった。

 「怖いですか?」
 彼の声が落ち着いて低くなった。

 「何が?」
 「自分の本能を、ちゃんと見るのが」

 その言葉に、足がふっと止まった。
 振り向くと、彼の瞳が、昼間よりも少しだけ熱を帯びている。

 沈黙が、二人の間に降りた。

 「……少しだけ。歩くだけなら」

 そう告げたのは、私のほうだった。

 その瞬間、自分の中で、何かの線が静かにきしむ音がした。


【第2部】揺れるエレベーターの中で──理性がほどけていく瞬間

 ネオンの光は、思っていたよりも柔らかかった。
 夜の街は、大学とはまるで別世界の匂いをまとっている。

 入口の横に並んだ部屋のパネルの前で、私は息を飲んだ。
 「空室」と光る数字の列。
 見慣れない世界のルールが、そこに静かに並んでいる。

 「帰るなら、今ですよ」
 彼が横目で私を見る。
 その表情には、からかいと真剣さが入り混じっていた。

 「……あなたは、どうしたいの」
 自分でも驚くほど、声がかすれていた。

 彼は少しだけ笑って、パネルの一つに指を伸ばした。
 「僕は、先生と“知らない世界”を共有したいです」

 その言葉の意味を、どこまで受け取るのか。
 答えを出す間もなく、軽い電子音とともに扉のランプが緑に変わる。

 「先生」
 呼ばれて腕を取られた瞬間、心臓が早鐘を打ち始めた。

 建物の中は、外気よりも少し暖かかった。
 エレベーターの中に二人きりで立つと、密閉された空気が、肌にまとわりついてくる。

 「本当に、ここまで来るとは思いませんでした」
 「……自分でも、信じられないわ」
 「嫌なら、本当に帰りましょう。
  先生が嫌がることは、絶対にしたくない」

 エレベーターの表示が、一階、二階と上がっていく。
 数字が変わるたびに、喉が乾いていった。

 「嫌かどうかも、よく分からないのよ」
 口をついて出た本音に、自分が一番驚いた。
 「ただ――」
 「ただ?」
 「何かを、感じていたいのかもしれない」

 沈黙。
 扉が、電子音とともに開く。

 廊下には柔らかい照明が灯り、
 カーペットが足音を吸い込んでいく。

 指定された部屋のドアの前で、彼は一度立ち止まった。

 「先生」
 振り向いた瞳は、もう学生のそれではなかった。
 「ここから先は、先生が決めてください」

 ドアの前で、時間が揺れる。
 帰ることもできた。
 笑い話にして、明日からまた何もなかったように講義に戻ることもできた。

 でも私は、ドアノブに手を伸ばしていた。

 「……少しだけ。
  少しだけ、ここで大人になってもいいかしら」

 自分でも意味の分からない言葉だった。
 それでも、彼は真剣にうなずく。

 ドアが開く。
 甘い香りのする空気。
 間接照明のやわらかな光。
 外界から切り離された、小さな箱庭のような部屋。

 バッグをソファに置く手が震えているのを、彼に悟られたくなくて、私は無理に笑った。

 「取材としては、十分ね。ここまで来れば」
 「……まだ何も始まってないですよ」

 彼が一歩、近づいた。
 距離が詰まる。
 後ろに下がれば、すぐ壁だと分かる。

 「先生」
 低く落ちた声が、耳の奥を震わせる。
 「ここから先に行くかどうかは、先生が決めることです」

 彼の手が、そっと私の頬に触れた。
 驚くほど優しい指先だった。

 逃げることもできた。
 振り払うこともできた。
 けれど私は、瞳を閉じるという選択をした。

 唇が触れ合った。
 長い年月、誰からも触れられなかった場所が、
 ようやく自分の存在を思い出したように震えた。

 「……教授」
 名前ではなく、肩書きで呼ばれることに慣れていたはずなのに、その響きが、このときだけは別の意味を持って耳に届いた。

 どれくらいそうしていたのか分からない。
 気づけば、彼の胸の中に抱き寄せられていた。

 この先に何が待っているのかは、想像できていた。
 そして、その想像に震える自分を、確かに感じていた。

 ──この夜を、後悔するかもしれない。
 ──それでも、今だけは。

 言葉にならない思いが、胸の内側で絡み合っていた。


【第3部】夜が明けるまでの沈黙──教授として、ひとりの女として

 カーテンの隙間から差し込む光で、私は目を覚ました。
 見知らぬ天井。
 隣から聞こえる、規則正しい寝息。

 自分の選択を、身体のどこかがはっきりと覚えていた。
 そして、心もまた、あの瞬間の一つ一つを焼き付けていた。

 隣で眠る彼の横顔は、昨日と変わらない若さを湛えている。
 けれど私の中では、何かが決定的に変わってしまっていた。

 「起きてます?」
 目を閉じたまま、彼が低く言った。
 驚いて視線を向けると、彼は片目だけを開けて、少し照れたように笑った。

 「……起きてるわ」
 「おはようございます、先生」
 「おはよう」

 たったそれだけのやり取りなのに、喉が痛くなる。

 「後悔してますか?」
 彼の問いは、まっすぐだった。

 私はしばらく天井を見つめ、言葉を探した。

 「……簡単には、答えられないわね」
 「僕は、してませんよ」
 彼は即答した。
 「先生がここに来たことも、僕を受け入れてくれたことも。
  全部、僕にとっては大事なことでした」

 胸が、きゅっと締め付けられた。

 「私は、教授なのよ」
 「分かってます」
 「あなたは、私の学生」
「それも分かってます」

 分かっていて、それでもここにいる。
 その事実が、どちらの肩にも重くのしかかる。

 チェックアウトを済ませ、朝の光の中を歩く。
 大学へと続く道は、いつもと同じように静かだった。

 「先生」
 校門の少し手前で、彼が立ち止まる。

 「ここから先は、今までどおりでいいです。
  ゼミの学生と教授として。
  ……でも、あの夜がなかったことにはしたくない」

 私は、しばらく彼の顔を見つめていた。

 「なかったことにするのは、きっと無理ね」
 「ですよね」
 「でも、引きずり方は、選べるはずよ」

 そう告げると、彼は少しだけ笑って頷いた。

 研究室に戻ると、机の上にはいつも通りの書類と、本と、予定表。
 それでも、世界の見え方はほんの少しだけ変わっていた。

 誰にも話せない夜が、一つ増えただけかもしれない。
 けれどその夜は、私の中で、自分の「女」としての時間がまだ終わっていないことを、残酷なほど優しく告げてくれた。


まとめ──壊れた線の上を歩くということ

 あの夜のことを、私は今も「正しかった」とは言えない。
 教授と学生という関係性の中で、越えてはならない線を、確かに踏み越えかけたのだから。

 けれど同時に、
 あの夜、自分の中の何かが確かに目を覚ましたことも否定できない。

 長い間、私は「安定」と引き換えに、
 自分の感情や欲望を、静かに奥へ押し込めて生きてきた。
 それが大人になることだと信じていた。

 でも、あの部屋の薄暗い光の中で、
 誰かに見つめられ、触れられ、選ばれる自分を感じたとき、
 私はもう一度、自分の生の輪郭をなぞり直していたのだと思う。

 だからといって、同じことを繰り返すつもりはない。
 あの夜が特別で、二度と訪れないからこそ、
 私の中でひどく鮮やかに輝いていることも分かっている。

 「壊れた線の上を歩いてしまった」
 そう自覚しながら、それでも前に進むしかない。

 教授としての私と、
 妻としての私と、
 そして一人の女としての私。

 そのすべてを抱えたまま、
 今日も私は、教壇に立つ。

 あの夜のことを胸のいちばん奥にしまい込みながら、
 いつかどこかで、自分自身にきちんと問い直せる日が来ることを願って。

 ──あの夜、私は本当に「間違い」だけを犯したのか。
 それとも、「生きている」と確かめたかっただけなのか。

 答えの出ない問いだけを抱いて、
 私は静かに、チョークを黒板に走らせる。

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