【第一章:午後の体育館、わたしだけが汗をかいていた】
午後2時、梅雨の晴れ間。
少し湿り気のある風が団地の隙間をすり抜け、ポストに差し込まれた一枚のチラシをかすかに揺らしていた。
「ママさんバレー 新規メンバー募集」
──初心者歓迎、子連れOK、久々の運動に、いかがですか?
無意識のうちに、私はその紙を握りしめていた。
まだクローゼットの奥に眠っている、赤いユニフォームと、もう履くことはないと思っていたショートパンツ。
母親である前の“私”が、そこに眠っている気がした。
「……ちょっとだけ、体、動かしてみようかな」
心のどこかが疼いていた。運動不足のせいじゃない。女としての私が、呼吸を始めようとしていた。
当日、娘を連れて指定された体育館へ。
古びた校舎のような建物。扉を押すと、ほこりと汗の匂い、バレーボールが床に跳ね返る乾いた音。
そこにいたのは、思っていたような主婦の集団ではなく──
一人の青年だった。
キャップの下から覗く、茶色い前髪。白いTシャツが汗でうっすら透け、
腹筋のラインがTシャツ越しに浮かび上がっている。
「こんにちは。体験の方ですか? 僕、斉藤です。大学でスポーツトレーナーを勉強していて、ここの練習、サポートしてるんです」
その笑顔に、喉がひくりと動いた。
19歳──息子とそう変わらないはずなのに、目の前の青年の視線は、私を“母”ではなく、“女”として見ていた。
「じゃあ、少しストレッチからしましょうか。ユニフォーム、お貸ししますね」
そう言って差し出されたのは、真紅のユニフォーム。光沢のある布地が、私の記憶をするりと撫でていく。
──そういえば、あの頃は練習後のシャワーで、ユニフォームの下の肌を鏡に映して眺めたりしてた。
汗に濡れてぴったり貼りついた生地。脈打つ胸。肌と布地の間で暴れる鼓動。
「……久しぶりに、着てみようかな」
そうつぶやいた私に、斉藤くんはふっと目線を落とし、笑った。
「きっと、似合いますよ。ママって呼ばれる年になっても、綺麗な人っていますよね」
──ああ、この人はわかってる。
そのとき、胸の奥で何かが確かに鳴った。
【第二章:ショートパンツの縁から滴る、19歳の熱】
試着室の奥で、私はユニフォームに袖を通した。
かすかに日焼けの跡が残る二の腕に、ぴたりと布地が吸いつく。
ショートパンツは、少し丈が短すぎて、しゃがむのがためらわれるほどだった。
でも、その布の薄さが、かえって身体の輪郭を研ぎ澄ます。
脚、腰、下腹部。すべてをなぞるように包み込む、かつての記憶の中の衣。
「お待たせしました……」
そう言って部屋を出た私を見て、斉藤くんの視線が一瞬止まった。
「……すごい、やっぱり似合いますね」
目の奥が揺れていた。欲望の予感が、汗の匂いと混じり合って私を濡らしていく。
「じゃあ軽くストレッチから……失礼します」
彼の指先がふくらはぎに触れた瞬間、私は思わず身体を引き締めた。
「力、抜いてください。大丈夫、僕……優しいですから」
指がゆっくり上へと這い、膝、太もも、そしてショートパンツの縁。
そこから指が生地の中に差し込まれることはなかったけれど、
──この先にある熱を知っている人の手だった。
「……やめた方がいいよね、きっと……」
そう口にした私に、彼は答えなかった。ただそっと私の手を、自分の太ももへと誘った。
若い身体の熱。
固くなったそれが、ジャージの中に脈打っていた。
そして──
ユニフォームの隙間から、私の肌に、唇が落ちた。
首筋、鎖骨、胸元。
ユニフォームが捲られていく音が、体育館の静寂の中でやけに艶かしかった。
ブラのホックが外され、胸が震えた。
布と布の間に挟まれていた女の部分が、解き放たれる。
その舌は、19歳とは思えないほど繊細で、容赦がなかった。
乳首の先端を舌でなぞられ、甘く吸われるたびに、
私は呼吸の仕方さえ忘れていった。
やがて、ショートパンツが片脚だけ脱がされ、
脚を開かされたその瞬間、彼の指がそこへ触れた。
「すごい……全部、濡れてる」
彼の声が震えていた。
私はもう、なにも答えられなかった。
【第三章:汗と余韻と、わたしの中に残ったもの】
交わったあとは、ユニフォームのまま彼の胸に顔を埋めた。
ショートパンツの中にはまだ、彼の熱が残っていた。
19歳の身体に包まれている間、私は確かに母親でも妻でもなく、
ただの“女”だった。
「また、来てくれますか?」
彼はそう言ったけれど、私は笑って首を振った。
「これ以上、何かを壊す勇気はないから……でも、ありがとう」
家に帰ると、娘が「ママ、どうだった?」と無邪気に聞いた。
「……楽しかったよ」
そう答えながら、私はまだ濡れている自分の身体を感じていた。
下着越しにじんわり広がる熱。ふと視線を落とすと、ユニフォームの裾にかすかな白いシミ。
──きっと、洗っても落ちない。
あの日の午後、わたしは、女に戻っていた。
そして今も、ユニフォームを見つめるたび、
私は思い出す。彼の唇と、指の動きと、自分の中の疼き。
それが、忘れられない体験になってしまったことを。



コメント