第一章:午後三時の解放と、罪のレンズ
私は東京郊外に暮らす45歳の主婦。
夫は出張続き、息子は受験生で自室にこもりがち。
何かを諦めてきた人生の午後——私は、“女としての自分”を確かめるためにホテルのドアを開けた。
相手は、年上の広告代理店勤務の男性。ホテルのシーツに指を這わせ、首筋に唇を落とすその人の仕草に、私は何度も呼吸を忘れた。
その日も、白昼の罪は、しっとりと身体の奥に染みこんでいた。
シャワーを浴びたあと、私はブラウスの第2ボタンまで外したまま、ほてった頬を薄くファンデーションで隠し、ロビーを抜けた。
まだ指先には、彼に貫かれた感触が残っている。
脚の奥が、ゆるやかに疼いていた。
そして——自動ドアの外。
その目と出会った瞬間、私の内側が凍りついた。
制服姿でスマホを持ったまま立ち尽くしていたのは、息子の友人・結城湊。
中学から家に遊びに来ていた、あの細身で静かな少年が、まるで獲物を射抜くような鋭い目で、私を見ていた。
視線が、私の鎖骨、胸のふくらみ、脚の曲線をなぞった。
「——見られた」
その言葉は、羞恥でも恐怖でもなく、甘く深く私の奥に沈んでいった。
第二章:脅しという名の鍵で、私は開かれる
その夜、知らない番号から一通のメッセージが届いた。
「その下着、白。レース。奥さんって、意外と淫らなんですね」
血の気が引くのと同時に、下腹の奥がきゅうっと疼いた。
返信もできず、スマホを握ったまま、私は息を呑んだ。
数日後、息子がいない時間を狙ったように、湊くんが訪れた。
制服のまま、リビングに上がり、無言のまま私に背中を向けて言った。
「……何も言わない。でも、見せて。ちゃんと、俺の目で」
「湊くん……ダメよ、そんなの……」
「でも、奥さん。あのとき、少し嬉しそうだった」
その一言で、私は崩れた。
恐怖と羞恥を超えて、私は“見られること”に、求められていた。
彼の指が、私のワンピースの背に滑り込む。
ジッパーの音が、静かな部屋に淫靡に響いた。
ブラを外すとき、私の手は震えていた。
でも止めようとは思わなかった。
むしろ、この若い瞳に見つめられたい——その欲望が、身体の奥で脈打っていた。
「すごい……想像以上だ」
彼はそう呟いて、私の胸元に顔を寄せ、
指先で慎重に、花びらのようなところをなぞった。
その感触が、脚の奥を溶かしていく。
第三章:視線に縛られた悦びと、その後の静けさ
湊くんの手は若く、拙い。
けれどそれは、私の“倫理”の防壁を壊すには充分だった。
乳首を指先で転がしながら、彼は私の目を見て言った。
「奥さん、自分がどれだけ淫らな顔してるか、わかってる?」
私は答えられなかった。
ただ、唇を食みながら、腰を引き寄せてしまった。
自分から、絡めてしまった。
そして、交わりは始まった。
若い欲望と熟れた肉体。
息を詰め、指を絡め、互いの奥にある“逸脱”を舐め合うように、貪った。
最初の波が去ったあと、私は彼の上に伏せながら、静かな涙を流していた。
快楽の果てにある、赦されない現実。
でも、その現実すら、心地よく感じてしまう自分がいた。
——こんなにも満たされてしまうなら、
——もう、戻れない。
その夜、私は鏡の前で裸のまま立ち、唇に指を当てて思った。
私の中にはもう、
“妻”でも“母”でもない“誰か”が棲みはじめているのだと。
エピローグ:静かな沈黙の中で
その後も湊くんとの関係は続いた。
脅しはもうなかった。
けれど私は、彼の視線に縛られ続けている。
“見られること”が、
こんなにも自分を震わせるのだと、私は初めて知った。
私は今日も、鏡の前で口紅の角度を少しだけ変えている。
彼の目にどう映るか、それを考えながら。


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