第一章:「チャイムの音と、屈した膝」
私は33歳。東京都下の住宅地にある小さなマンションで、夫と静かに暮らしていた。
結婚にはいくつかの障害があった。その最大のものが、義父だった。
「息子には相応しくない」
何度もそう言われた。だから、私たちは義父母と疎遠だった。
──でも。
母が倒れたのだ。60歳。子育ても仕事もひとりで背負ってきた人。
病院から告げられた額は、目が霞むほどだった。
夫に頼み、義父に頭を下げてくれるようお願いした。
数日後、義父から直接、私に電話がきた。
「明日、昼二時に来なさい。ひとりで」
それだけだった。
当日。
汗で湿ったワンピースの裾を握りしめながら、義実家の玄関に立つ。
チャイムを押す指が震えた。
「……失礼します」
畳の匂い。障子越しの夏の光。
義父はすでに座卓の前にいた。眼鏡の奥の視線が冷たい。
口を開いたのは、私の方だった。
「……お願いします。お金を、貸してください……母を、助けたいんです」
何度も頭を下げた。膝が畳に沈む。
「条件がある」
義父の声は乾いていた。
「息子には言うな。そして──この身体を、俺に差し出せ」
一瞬、脳がその意味を理解できなかった。
でも、視線が私の胸元を射抜いていた。
「……あなた、本気ですか」
「本気だから、金を出すんだ」
吐き気がした。心底、軽蔑していた男の前で、頭を下げている。
でも、それでも──私は母を救いたかった。
「……わかりました。一度だけです」
「違う。契約だ。週に一度、二年間。俺の好きなようにする」
そうして、私の名義で口座に385万円が振り込まれた。
“対価”として、私は義父に差し出されたのだった。
第二章:「ほどかれる意識、濡れていく拒絶」
その週の日曜、午後二時。
夫は外出していた。私はひとり、再び義実家の玄関に立った。
義父は、私に座卓の前で正座させた。
襟元から額まで、汗がにじむ。視線をそらしていたら、義父が口を開いた。
「ブラの色は?」
「……白です」
「脱げ」
言葉の命令に、身体が反応しない。けれど、ゆっくりとワンピースのボタンに指をかけていく。
指先が震える。義父の目が、まっすぐ私の身体をなぞっていた。
キャミソールとショーツだけになった頃、義父が立ち上がった。
背後に回り、肩に手を置く。ぬるくて、固い手。
その手が、私の肩甲骨をなぞる。下着のストラップをずらし、肌に指が落ちてくる。
「拒んでるのに、身体は正直だな」
違う。そんなわけない。
でも、背中がぞくりと震えたのは事実だった。
ブラのホックが外され、乳房が空気に晒される。
そして──親指が、頂点に触れた。
跳ねた。私の身体が、跳ねた。
「……やめて……」
「濡れてる」
ショーツの上から指が這う。布越しに湿り気が伝わったのか、義父が笑った。
「誰にも言えないまま、悦びを覚えていく女……おまえにぴったりだ」
ショーツの中に指が入り、私は顔をそむけた。
「感じるな。恥だぞ」
その言葉に、涙が滲んだ。
「……やだ……もう……」
でも、言葉とは裏腹に、私の腰は指に追いつくように揺れていた。
それは、屈辱か、官能か。
答えは、まだ出なかった。
第三章:「終わらない午後二時、その先で」
それから、私たちの契約は週に一度、繰り返された。
畳の上、昼の光の中、夫の父に抱かれる自分がいた。
ある日、義父が私の髪を撫でながら言った。
「おまえはもう、俺の女だ」
「……違います」
「じゃあ、これは何だ」
そう言って、私の太ももを割り、熱いものを沈めてくる。
夫とは違う角度。違う深さ。
一度知ってしまった感覚は、否応なく身体に刻まれていた。
突き上げられるたび、私の脚が義父の腰に絡んでしまう。
喉の奥から零れる声を、自分で止められなかった。
「ああ……あ……もう……」
波のような絶頂の中、私は言った。
「……お願い……もうやめて……」
けれど義父は止まらなかった。
それは彼の支配の証であり、私の堕落の証だった。
──あと、3回でこの契約は終わる。
母の命は助かり、夫は何も知らない。
けれど、私の身体は。
毎週、午後二時になると、疼きはじめるようになってしまった。
これは、快楽ではない。
罰だ。
でも、誰が誰を罰しているのか──
それすら、もうわからなくなっていた。


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