陸上の強豪大学で、私は短距離を走っている。
記録を削ることに命をかけて、筋肉の動きも食べるものも、すべてを管理している日々。
けれど今夜だけは、身体じゃなく、心の奥が限界を迎えていた。
「どうぞ、お入り」
整骨院の扉をくぐった私を迎えたのは、山口先生。35歳。
私より10歳も年上なのに、なぜだろう。
目が合うたび、胸の奥で何かが鳴る。
予約の最後の時間。静かな整骨院。
もう外の音も聞こえない時間。
私と先生だけの、密やかな空間。
施術着に着替え、うつぶせに寝そべる。
タオル越しでもわかる、彼の手の温度。
オイルの香りが空気に混じる。
それだけで、息が深くなっていく。
ふくらはぎ、膝裏、太もも、そして――
「内腿、かなり張ってますね」
そう言って、先生の親指が内側を押し込んできた。
ぎゅ、と。
声が漏れそうになるのを、歯を食いしばって堪えた。
けれど、彼の指が触れているのは、脚だけじゃなかった。
奥、ずっと奥で、何かが熱くうごめいているのを感じた。
「仰向け、いきましょうか」
視線をそらしながら、私は身体を返す。
胸元のガウンが、わずかに開いてしまっていた。
けれど彼は目を逸らさなかった。
ただ、真っ直ぐに、私を見ていた。
「ここの筋肉、普段意識していないでしょ」
胸の外縁に、指先が触れる。
静かに円を描きながら、私の呼吸を探るように、肌をなぞる。
布の中で、乳首が硬くなっていくのが自分でもわかった。
彼の指が、ふわりと上に滑る。
「あ……」
声が漏れた瞬間、彼の目が私を射抜いた。
もう、施術なんかじゃない。
わかってる。
でも、止まらなかった。
彼の手が、胸を包む。
親指で先端を転がすたび、腰の奥がずくん、と跳ねる。
私の身体が、自分の知らないリズムで震えていた。
「嫌だったら言ってください」
「……言わないと止めてくれない?」
「うん」
私は、目を閉じた。
そのかわり、脚を、少しだけ開いた。
ガウンの裾がまくれ、彼の手が下腹部へと滑り込む。
指先が、パンツの上から私の中心をなぞる。
「濡れてる……」
彼の囁きに、私は恥ずかしくて、喉がぎゅっと締まった。
でも、逃げることはできなかった。
自分でも信じられないくらい、彼の手を、求めていた。
布越しの擦れが、だんだん焦らしに変わる。
足が勝手に震えて、膝が開いていく。
やがて、指先が下着の隙間からすっと滑り込み――
「あっ……や……っ」
初めて、誰にも触れられたことのない場所。
なのに、受け入れてしまった。
先生の指が、私の中に入る。
ぬめりの奥で、くちゅ、くちゅと音を立てながら、蠢く。
腰が勝手に浮く。
彼の指が一本、二本と重なり、私の奥を広げていく。
そのたびに、声が止まらなくなる。
「すごく反応いい……初めて?」
「うん……誰にも……」
「じゃあ……ちゃんと、覚えさせてあげるね」
言葉とともに、親指がクリトリスを押し上げる。
その瞬間、頭の中が真っ白になった。
「や……やだ、そこ……ダメ……っ」
なのに、先生は微笑みながら、律動を加える。
脈打つように、擦られるたび、身体が震えて、内腿が跳ねる。
そして――
「あっ……あっ、だめ、だめっ……いくっ……!」
腰が弾けて、足先まで波打つ快感が突き抜ける。
指だけで、私は絶頂していた。
息が荒くて、喉が乾いていた。
涙がにじんでいたのに、不思議と悲しくはなかった。
彼は静かにタオルをかけてくれて、
何も言わず、髪を整えてくれた。
それが、何よりのやさしさだった。
帰り道。
ふるえる脚。
でも、それは筋肉の痙攣じゃない。
新しく目覚めた私の身体が、
先生のぬくもりを、奥でまだ感じているからだった。


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