不倫ドライブ体験談|彼の腕に抱かれた瞬間から崩れた理性と終わらない渇き

【第1部】朝の光に潜む予兆──触れぬ距離で揺れる私の輪郭

離婚してから五年。
日常は、子どもの笑顔と、会社の机に広がる書類の山とで成り立っていた。
そこに混じる、彼の声──低く、柔らかく、私だけに向けられるような呼びかけ。

「休みの日、ドライブに行こう」
昼下がり、書類を渡された時の何気ない一言が、胸の奥で何度も反響した。
恋人ではない、けれどそれ以上の何かが、その響きに潜んでいた。

朝、鏡の前で髪を整える指が、いつもより慎重になる。
ラフな服装では足りない気がして、柔らかな布地のブラウスを選び、肌に馴染む香水をひと吹き。
それは彼に触れられるためではなく──ただ、今日の私を美しく見せたかった。

遠くへ向かう車の中、ガラス越しの陽射しが頬をなぞるたび、彼の横顔の影が胸をくすぐる。
昼食を終え、道はさらに郊外へ。
その時、彼がふとハンドルを切った。
視界に飛び込んできた、色彩の濃い建物。

胸が、静かに波立った。
理解するよりも先に、私の体はその揺れを知っていた。


【第2部】沈黙の中で崩れる境界──湯気と脈に支配される私

部屋の扉が閉まる音は、思いのほか重かった。
振り返る間もなく、背中に温度の高い腕が絡み、息が耳に落ちる。
その瞬間、私の足元から、かすかな力が抜けていく。

胸の奥に潜んでいた飢えは、拒む言葉よりも早く、彼の動きを受け入れようとしていた。
唇が触れ、視界が閉じ、湿った吐息が首筋を這う。
肌がその温度を覚えた途端、理性は遠く霞んだ。

「お風呂に湯を張って」
彼の声は命令ではなく、甘い鎖だった。
浴室の蛇口を捻る音が、やけに鮮明に響く。
蒸気が立ち上がる中、背後に気配を感じ、振り向くと、もう逃げ場はなかった。

湯の中で、彼の胸に背を預ける。
水面が揺れるたび、肌と肌の境界がほどけていく。
指先が腰をなぞるたび、心臓が水音と同じリズムを刻む。

羞恥と快楽は、もはや別々ではなかった。
深く沈むほど、私の奥は静かに熱を孕んでいく。


【第3部】終わらない渇き──快楽の余韻に囚われて

ベッドに戻ったとき、もう私は“される”だけの存在ではなかった。
彼の眼差しに応えるように、自ら腕を伸ばし、触れ、確かめる。
そのたびに彼の呼吸が乱れ、その熱が私の内側に降り積もる。

身体は飽和しているはずなのに、奥底ではまだ渇きが疼いていた。
何度も重なり、何度も離れ、そのたびに境界は溶け、名前のない感情だけが残った。

帰りの車中、彼の手が私の手を導き、隠したはずの火は再び灯る。
それは家に帰っても消えず、夜、布団の中で脈打つ。
思い出は映像ではなく、体温として甦り、指先を湿らせる。

あの日から、私の日常はひそやかに色を変えた。
触れなくても、彼を想うだけで、胸の奥がじんわりと熱を帯びる。

──もう、後戻りはできない。
それを知ったとき、私は初めて“女”という輪郭を、自分の中に見た。

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