今年の春、私は駅前のスーパーでパートを始めた。
家計の足しになればという建前の下、ほんとうは、枯れた日常にひと雫でも刺激が欲しかったのだと思う。
娘は高校生になり、夫は単身赴任で週末しか帰らない。
キッチンと洗濯機の間で、女であることを忘れてしまいそうな日々の中で、私は“わたし”を呼び覚ます理由を探していた。
そんなときに出会ったのが、潤くんだった。
大学生で、私より十五歳年下。
けれどその佇まいには、若さ以上の静かな色気があった。
彼の視線には、男のそれがあった。
敬語の端々に滲む親しみと、ふとした沈黙の中にある間――
私はそのすべてに気づいていたのに、気づかぬふりをしていた。
「真知子さん、今日の口紅……いつもより艶がある気がします」
「そう?そんなこと言われると、ちょっと照れちゃうわね」
そんなやり取りが、どれほど私を潤わせていたか。
そして、どれほど彼に期待していたか。
自分でも、こわいくらいに。
その日、パートが休みだった私は、駅前のドラッグストアで洗剤を買い、帰ろうとしていた。
その帰り道、偶然、潤くんと出会った。
「真知子さん……こんにちは。よかった、会えて」
彼は少しだけ息を弾ませて、私を見た。
その瞳に、迷いがなかった。欲望を隠そうともしないまっすぐな光。
「よかったら、うちでお茶でもしていかない?」
その言葉は自然に出た。けれど胸の奥では、別の私が微笑んでいた。
“いま、誘ったのはあなたじゃない。女としての、私よ。”
午後の日差しが傾きはじめたリビング。
カップの湯気の奥、潤くんの視線が私の脚を這う。
カットソーの胸元、くるぶしまで落ちたスカートの隙間。
すべてが彼の熱に焼かれていくようだった。
「真知子さんって……ほんとうに綺麗です。こんなに近くにいると……抑えられない」
その声と同時に、彼の手が、私の頬に触れた。
肌の上を撫でる指先は、若く、荒々しく、それでいてどこまでも優しかった。
「潤くん……だめよ」
声は、かすかに震えていた。
でも拒絶の震えではなかった。
そこには、震える悦びがあった。
彼の手が、私の肩を包み、胸元にそっと唇を落とす。
「お願い……触れさせて。ずっと、こうしたかった」
ブラウスのボタンが一つずつ外され、下着の上から指先がゆっくりと滑る。
レース越しに擦られる乳首は、すでに昂ぶりきっていて、息が喉に引っかかった。
「そんな……見るの、やめて……」
「見たいんです。真知子さんの全部を」
下着を外された胸が、彼の掌に収まる。
そして、熱く濡れた舌先がその頂を何度もなぞるたびに、私は腰を浮かせるほどに反応してしまう。
そして彼が、自分のベルトに手をかけたとき――
私は、目を疑った。
ゆっくりと現れたそれは、尋常ではないほどの存在感を放っていた。
太く、硬く、脈打ち、まるで生きもののように昂ぶっている。
私の視線に気づいた彼は、少しだけ顔を赤らめた。
「……驚かれましたか?」
「……これ、入るの?」
「入れたい。真知子さんの中に、全部」
その言葉で、私の脚は自然と開いていた。
最初の一突きで、身体中が裂けそうなほど満たされた。
けれど痛みよりも、圧倒的な“存在感”が、私のすべてを震わせた。
「すごい……奥まで……突かれてる……」
彼の動きは、若さゆえの荒さと、止められない欲望に満ちていた。
けれどそれが、私を突き上げるたび、悦びの波が途切れなく打ち寄せてくる。
「ねぇ……そんなに突いたら……また……っ!」
声を上げ、爪を彼の背中に立てながら、私は何度も絶頂を迎えた。
膣の奥を押し広げられ、絡みつく熱い脈動に、身体が震え、喘ぎ、溶けていく。
一度果てた彼が、またすぐに硬くなり、さらに激しく私を貫いたとき――
私は嗚咽のような声を漏らしていた。
「潤くんの……こんなにおっきいのに……どうして、まだ、欲しいの……?」
「だめなのに……止まらない……!」
三度、四度。
彼の熱い精が私の奥に注がれるたび、子宮が痙攣するほど揺れた。
「また……来てもいい?」
「ええ……来て……お願いだから、また……壊して」
このとき私は、完全に彼のものだった。
巨根の記憶と、若さの暴力的なまでの悦びに、体も心も、支配されていた。
あれから、週に二度。
潤くんはやってくる。
私の身体は、あの太さと熱さに慣れてしまい、夫のものではもう、満たされない。
「真知子さんの中、奥まで吸い込まれる……気持ちよすぎて……俺、毎回、我を忘れる」
「私も……あなたのが欲しくてたまらないの。あの太くて……硬くて……私の全部、奥まで突いて……!」
羞恥と快楽にまみれた淫語が、唇から漏れる。
夫の前では絶対に見せられない“私”が、ここにいる。
潤くんが卒業し、地方の会社へ旅立つ朝。
ラブホテルのベッドで、私は彼の精を八度、奥に受け止めた。
「お願い……もう……許して……壊れちゃう……」
そう言いながら、私は泣き笑いで彼を抱きしめた。
あの太さを、熱さを、何度も迎え入れた自分の奥が、まだ震えている。
今も時折、ソファに座ると、
彼の巨根が私を貫いた感覚が、ふいに蘇る。
もう二度と、あの熱を抱くことはない。
けれど――私の奥には、あの“かたち”が、永遠に刻まれている。
潤くんが去ってから、ひと月が経った。
あれほど激しく抱かれ、何度も奥を貫かれた身体は、今もまだ彼の熱を覚えている。
もう二度と、触れられることのないあの巨きなかたち。
荒々しくも愛おしい律動。
私を“女”に還らせてくれた悦びが、まだ体の奥底で灯っている。
だからだろうか――
夫が久しぶりに帰ってきた夜。
ベッドに入った瞬間、私はふと、身をこわばらせた。
「真知子、こっちおいでよ。久しぶりだな」
穏やかに笑いながら、夫は私の肩に手を回す。
その手は、優しく、いつもの通りで、何も変わっていない。
けれど私は、そのぬるさに戸惑った。
ブラジャーのホックを外される。
夫の手が、乳房を包む。
でも……潤くんの、あの若くて熱を持った指先を、私は知ってしまった。
「気持ちいいか?」
「……うん」
答えながら、私は天井の模様を眺めていた。
潤くんの指は、触れるたびに私の中に“女としての自尊心”を刻んでくれた。
彼の舌が、乳首を何度も愛し、啜るたびに、私は声を漏らしていた。
でも今は――私の声は、どこにも響かない。
夫が私の太腿を開き、中心に顔を埋めたときも、私は声を押し殺していた。
あの熱を知るまでは、これで満たされていた。
けれど今は……潤くんの舌が、まるで渇きを知っているかのように、何度も私の秘所をなぞってくれた感触のほうが、リアルすぎて。
――あのときは、一瞬で濡れていたのに。
「もう……入れるよ?」
「ええ……」
夫のものが私に入ってきた。
けれど、私の内壁は探してしまっていた。
もっと……太くて、張りがあって、ぐっと押し広げてくれる“あれ”を――
「ん……?」
私の身体が、虚しく反応しないことに、夫は気づいたらしい。
「痛い……?」
「ううん……大丈夫。大丈夫よ……」
けれど私は、潤くんのときのように、声を上げられなかった。
あの“奥に響く”感覚がなかった。
奥の奥まで届いて、子宮の裏側を擦られるような、あの快感が――どこにも、なかった。
(ああ……だめ。こんなこと、思ってはだめなのに)
それでも身体は、正直だった。
夫の律動は短く、軽く、あっという間に終わった。
「はぁ……久しぶりだから、すぐに……ごめんな」
「……ううん。大丈夫」
笑って、キスを返したけれど。
そのあと、私はシーツの裏で、ひとり涙を流した。
“潤くんが、まだ残ってる”
そう思った。
膣の奥に、彼のかたちが焼きついている。
巨きなものに貫かれた、あの感覚が、私を離さない。
夫の腕の中にいても、私は――
潤くんの腕に抱かれていた。
次の日の朝、夫は爽やかに出勤していった。
その背中を見送ったあと、私はゆっくりと鏡の前に座った。
私の脚の間、そこは、もう潤くんの“もの”ではない。
でも――
ひとたび目を閉じれば、あの太さが、熱が、呼吸が――
今も、私の奥で脈を打っている。
夫と交わるたびに思い知る。
私はもう、あの巨根を知ってしまった女なのだ、と。
「……で、結局、うちはそのままレス継続中って感じかな」
平日の昼下がり。近所のカフェで、私は由紀と向かい合っていた。
彼女は、子どもが同じ中学の同級生というだけでなく、何かと感性が合う相手だった。
赤ワインのグラスを指でなぞりながら、由紀が小さくため息をついた。
「結婚して十年以上も経てば、まあそうなるわよね。うちもよ。触れられても、もう感じないっていうか……ね?」
「……わかる。私も……感じられなかったの」
あの夜、夫と身体を重ねたときの空虚感が、ふと胸に蘇った。
彼のものが私の中に入ってきた瞬間、私は“求められている”という感覚をまったく持てなかった。
だけど――
「……でもね、最近、ちょっとだけ変わったの」
私はグラスの水滴を指先で拭いながら、言葉を選ぶように呟いた。
「え?どういうこと?」
由紀が身を乗り出してきた。
「……誰にも言ってないんだけど。潤くんっていう、うちの近所の大学生の子がいてね。駅前のスーパーで一緒にパートしてたの。ある日、偶然会って、軽い気持ちで家に上げたのよ。そしたら――」
言葉が喉に詰まる。
でも由紀は、私の目を真っ直ぐに見つめたまま、口元だけを緩めていた。
「……まさか、そういう関係になった?」
私は頷いた。
その頷きの重みが、まるで下着越しの湿度を晒すような、恥ずかしさと快感を混ぜた衝動を呼び起こす。
「彼……まだ十九歳なの。でもね……すごかったの。あの子、信じられないくらい……大きくて……若くて……」
「え、ちょっと待って……“大きくて”って……どのくらい?」
由紀が半分冗談混じりに身を乗り出してきたけれど、その目は完全に“女”になっていた。
「……入ってきたとき、ほんとに、裂けそうなくらいだった。でも、すぐに奥まで突かれて、もう……私、自分の声に驚いたくらい、叫んじゃって……」
「……え、奥までって、あの感じ?」
由紀が自分の下腹部を撫でながら、小さく息を吸う。
「そう。子宮が、ギュッて持ち上がるみたいに突かれて、呼吸できなくなるような感覚。夫とは……比べものにならなかった」
カトラリーがカチャリと鳴る。
そのあと、二人の間に訪れた沈黙が、かえって艶やかだった。
「何回か、したの……?」
「ううん……週に二回。ほぼ一年半。いつも二度、三度。終わっても、すぐまた勃って、また奥まで突かれて……」
「……そんなの、絶対……クセになるに決まってるじゃない」
由紀の声が、かすかに震えていた。
その視線は、まるで私の体の奥を想像しているかのように、濡れていた。
「でも、彼はもう卒業して、地方に就職しちゃった」
「それで……今は?」
「……夫としたけど、だめだった。感じなかったの。潤くんの、あの太さと熱さを知ってしまったから……もう、戻れないと思った」
唇に指をあてながら、由紀がぽつりと言った。
「ねえ……潤くんのって、どのくらいだったの?」
私はテーブルの下、両手を開いてみせた。
「……え、そんなに?」
「入ってくるとき、わかるの。ちゃんと“形”が。膣が全部で、彼の一部を覚えちゃうの」
由紀が息を呑み、ワインを一気に煽った。
「私、正直に言うけど……今、頭の中、真っ白。びしょびしょになってると思う」
「私もよ……彼のこと思い出したら、もうダメ」
女同士の、ほんとうの意味での“共犯”。
語ることで、私はまた潤くんの熱を、身体の奥に取り戻していた。
その夜。
帰宅してひとりでシャワーを浴びながら、私は指を這わせた。
自分の奥に触れたとき、涙がこぼれた。
やっぱり私は、もう潤くんのものだった。
あの“かたち”と“熱”を知らない世界には、戻れない。
それは、偶然を装った、必然の夜だった。
潤くんが就職で地方に旅立ってから半年。
もう二度と会うことはないと思っていた彼が、ふいに東京に戻ってくることをSNSで知った。
「……連絡、してみたら?」
そう背中を押したのは、あの日、私の指先で濡れていた由紀だった。
あの夜を境に、私たちは他人には話せない共犯になっていた。
潤くんという“かつての男”をめぐる記憶を共有しながら、
それぞれの中で、どこか“触れてみたい衝動”が膨らんでいた。
そして、潤くんは、私の一言にすぐ応えてくれた。
「会いたいです、真知子さん。会えるなら、どこでも行きます」
私は迷った末に、一つの提案をした。
「……もうひとり、私の大事な友人がいるの。話を聞いて、あなたに会いたがってるの。もし、よかったら――」
「はい。どんな方でも……真知子さんが一緒なら」
その夜。私は由紀とふたり、ラグジュアリーホテルのスイートルームのソファに並んで座っていた。
そして、インターフォンが鳴く。
ドアを開けた瞬間、潤くんの姿が目に飛び込んできた。
変わっていなかった。
いや、少しだけ大人びた顔つきと、ワイシャツ越しにわかる体格が、男としての輪郭を濃くしていた。
「……久しぶりです。真知子さん」
「久しぶりね……潤くん」
「はじめまして。由紀と申します」
由紀は凛とした口調で微笑みながら、しかしその目に宿る光は、私と同じだった。
――欲望の、共犯者の目。
「……ほんとうに、ふたりとも……僕に?」
潤くんの声は、信じられないように震えていた。
「ええ。私ひとりじゃ、独り占めできないって、思ったの。あの熱を知ったら……由紀も、同じ気持ちになってしまった」
「だから今夜だけ――ふたりで、あなたを」
私の手が潤くんのシャツのボタンを外し、
由紀の指先がベルトに触れる。
潤くんの身体が露わになるたびに、
私たちは自然と、女の顔になっていた。
そして、彼の下腹部があらわになった瞬間――
由紀の喉が、かすかに鳴った。
「……真理子が言ってた通り……いえ、それ以上……」
その太く張り詰めた男の象徴は、まさに記憶そのまま。
いや、記憶を上書きするほどの存在感でそこにあった。
私たちは左右から彼を挟むように膝をつき、
ゆっくりと、その肉の熱を唇に迎えた。
「……真知子さん、だめ……そんな風にふたり同時に……」
彼の声はくぐもり、腰がわずかに震える。
片方が先端に舌を這わせると、もう一方が根元を唇で包む。
潤くんの息遣いはどんどん荒くなり、私たちの唾液と熱が、彼の“かたち”をより艶かしく際立たせていった。
「……ねえ、どっちの中に入れたいの……?」
由紀が、すっと潤くんの頬に触れる。
「……それは、選べないです……」
「なら……どっちにも入れて。順番に、ちゃんと奥まで」
そう言って私は、先に膝を開いた。
潤くんが私の中に入ってきた瞬間――
半年ぶりのその感覚に、私は悲鳴のような吐息を漏らした。
「やっぱり……潤くんの、すごい……奥まで……っ」
膣が熱を思い出す。
内壁が、あの太さに対応するようにうねりながら、彼を絡め取っていく。
「真知子……ほんとにすごい音……吸い込んでる……」
由紀が隣で見つめながら、片手を自分の脚の間に滑らせている。
「……次、私の番」
潤くんが私の中から抜けたあと、その濡れた巨根を由紀が自ら導く。
「……私も、味わわせて……その、全部を」
挿入された瞬間、由紀がのけぞる。
その叫びは、本物だった。
「なにこれ……っ、こんな太いのが……入ってるの……!」
膣が、震えていた。
私がそれを見て、もう一度濡れ直すのが分かるほど、視覚もまた快楽だった。
そして私たちは――
ふたりが交互に彼の奥を受け入れながら、
互いの喘ぎと絶頂を見つめ合い、共有し、そして興奮していった。
潤くんは、どちらにも抜かずに注ぎ、
私たちはその“混ざった熱”を、自分の内で悦びに変えていった。
「ねえ……まだ、いけるよね……?」
「ええ。今日はふたりで、あなたを溶かすの」
朝。ベッドの上、私は由紀と肩を並べてシーツに包まれていた。
潤くんは、ふたりの間でまどろんでいた。
共有することで、深まる悦び。
女たちの快楽は、嫉妬を超えて、蜜のような共犯関係に変わっていく。




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