【第1部】湯けむりの向こうで、彼女の肌が開いていた
「──誰かに見られたい、って思うことがあるの」
雪混じりの風が吹く中、駅前で彼女がそう言ったとき、私の奥でなにかがじゅっと音を立てて滲んだ。
恋人でも、友人でもない。けれど私たちはもう、身体の奥で重なってしまっていた。
ふたりきりで、女ふたりで、温泉旅に出る。
それはただの旅行ではなく、私たちの奥にある、変態性と羞恥を暴く旅だった。
宿に着いてすぐ、彼女は浴衣の下に下着をつけずにいた。
露天風呂への細い通路。誰もいない時間帯を見計らって、肩を抜き、帯をゆるめて歩くその姿に、
私は背後からじっと目を離せなくなる。
「ねぇ、見て。ほら……」
彼女は、背中を少しだけ私に向けた。
その時、湯気の中でちらりと揺れた乳房の影が、月明かりに照らされた。
見られたがっている。見せたがっている。
──私も、そうだった。彼女に見られたい。いや、もっと。知らない誰かに、二人の関係ごと、見られたい。
湯気の奥、あきらかに誰かがこちらを見ている気配があった。
わざとらしく、彼女が私にキスをねだった。
唇が触れ合う瞬間──私たちの体温が、誰かの視線に燃やされていくようだった。
【第2部】女体盛りと指の誘惑、旅館の奥で淫らに重なる
夜、部屋に戻ると、コンパニオンの予約が入っていた。
「ちょっとしたサプライズよ」と、彼女が手配していた。
やってきたのはノリのいい女の子──私たちの関係を理解していたのか、最初から距離が近かった。
野球拳が始まった。私たちも交じって、浴衣の帯がするりとほどかれた。
「負けた人が……この子の体の上にお刺身を並べるっていうの、どう?」
ふざけた提案に、私たちは笑いながらうなずいた。
それは“遊び”の皮を被った、露出と羞恥のプレリュード。
彼女の乳房に、冷たいマグロの切り身が置かれる。
太もものくぼみに盛られた帆立が、わずかに震えている。
「食べて……?」
囁かれて、私は舌を這わせた。
冷たい刺身と、熱を帯びた肌。その対比が、舌の奥で淫らに融けていく。
その夜、三人で飲みに出たあと──私たちは旅館に戻った。
コンパニオンの子とは別れたが、彼女と私は、もう一度、湯に沈んだ。
今度は露天風呂で。
月明かりに照らされながら、彼女が私の腰を抱き寄せてくる。
「誰かに見られてたら、どうする?」
「見せたい。あなたを。」
返す言葉が、自分でも驚くほどに濡れていた。
湯の中で交差する指と指。ふたりの熱が、視線の届かないところで、静かに淫らに溶け合っていった。
【第3部】見られながら、赦されながら、私たちは堕ちていく
朝。浴衣をはだけたまま、縁側に座っていた彼女は、急に立ち上がってこう言った。
「朝風呂、混浴らしいの。行こ?」
私たちはタオルを小さく巻いただけの姿で、静かに浴場へ向かった。
すでに誰かが湯に浸かっていた。年配の男性が数人、目を逸らしながら、でも絶対に視界に私たちを入れていた。
彼女は、わざと足を高く上げて湯に入る。
その一瞬、太ももの奥が、光を弾いた。
私は、羞恥に顔を紅潮させながらも、その姿に目を離せなかった。
「あなたも、して?」
囁かれた瞬間、私の指は彼女の脚の間に潜り込んでいた。
お湯の中で、誰にも気づかれないふりをして、彼女の粘膜を撫でる。
彼女の太ももが震える。小さく、啼くような吐息が洩れる。
「もっと……見せて、あげて」
そう言って彼女が立ち上がった瞬間、タオルがふわりと落ちた。
誰もが息を呑んだ気配があった。
私は、湯の中で跪き、彼女の脚の奥に唇を這わせた。
そこにはもう、赦ししかなかった。
見られてもいい。濡れてもいい。堕ちてもいい。
浴場から出るとき、私たちは手を繋いでいた。
まるで、初めての恋をした少女たちのように。
ふたりの身体には、湯気のような熱がまだ残っていた。
その熱が、まだ誰かの目に焼きついていると信じて──
──あの朝の光を、私はまだ、骨盤の奥に覚えている。



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