【第1部】夫が紹介した“同僚”は、私の中を知る男だった
「……彼、今日からうちのチームに来たから。よろしくな」
夫の声がまっすぐすぎて、逆に聞き取れなかった。
玄関のドアを閉める音が、やけに柔らかく響いた気がした。
私の視線が、ゆっくりと、けれど正確に“彼”に向いた瞬間──
時間が、湿度を帯びて止まった。
その目だった。
あの、終電を逃した夜に、私の腰に沈み込んできたまま動かなかった、
背中ごしの息づかいと一緒に覚えている、あの目。
彼は笑った。
なにもなかったように。
夫の同僚という仮面をつけて。
でも、その笑いの“間”だけが、私の内側を鮮明に抉った。
「初めまして、です。◯◯と申します」
……嘘つき。
あなたは私の中で射精したことがあるくせに。
私があの夜、自分の指を口にくわえて喘いだのを知ってるくせに。
夫はあなたに私を紹介してる。
それが、こんなに濡れることだったなんて。
リビングのソファに座った彼と、キッチンの私。
わずか2メートルの距離に、**何年もの“しないこと”**が濃く張り詰めていた。
夫がワインを注ぐ横顔の奥、彼はグラスを持ったまま、
一度だけ、唇の裏で「ごちそうさま」と動かした。
……あれは、私の身体に向けた言葉だった。
あの夜、ベッドじゃないソファで、彼は私の中に沈みながら、
何度も何度も──最後にそう呟いたのだった。
ごちそうさま。
もう会えないのに、ずっと飲みたかった。
そう言った舌が、またそこにある。
湿度が上がる。
私の内腿の奥、普段は感じない下着の縁が、じんわりと息づく。
「奥さん、お料理、すごいですね。ほんとに美味しい」
彼の声が響いた瞬間──私の乳首が反応した。
それはもう、生理的な“再会”だった。
脳ではない、粘膜の記憶が叫んでいた。
この声、私の中で震えた声──
夫が笑う。
彼も笑う。
私も、笑う。
けれど、笑っている口の裏側では、
私の粘膜が、舌が、指が、すべてが疼いていた。
「先にお風呂いただきますね」と夫が席を立つ。
一瞬だけ、空気が沈黙する。
その“間”を、彼は知っていた。
私が、そういう間に濡れる女だということを。
「……ずっと、綺麗になりましたね」
「……覚えてるんだ」
「忘れるわけ、ないでしょう」
声が、耳たぶの裏の性感帯をなぞる。
視線が、背中越しに腰のくびれに沈む。
私はゆっくりと立ち上がり、
水の入ったグラスを持ち直す。
その一瞬だけ、肩を向けた。
そして、見せた──
あの夜、彼が背中を愛したラインを。
この家で、夫のいる空間で、
私の内側が、**あの頃の“私を許した彼”**を渇望している。
触れられていないのに、
私の膣は、濡れ始めていた。
【第2部】舌も奥も濡れたまま、夫の隣で犯された記憶が疼きだす
夫がお風呂場でシャワーの水音を立てるその間、
リビングは、静かだった。
けれど──私の粘膜は、静かじゃなかった。
「……ワイン、もう少し飲みますか?」
彼の声が、低く、喉の奥でゆっくりと濁る。
それだけで、奥が、ぬかるんだ。
グラスを渡そうと近づく私の手を、
彼は自然に、そのまま包み込んできた。
指が、触れた。
それだけなのに、私は全身の力を抜かれた。
“この手、私の胸をどう触ったか知ってる”──
そんな記憶が、一瞬で乳首を立たせる。
グラスの中でワインが揺れた。
それが、私の下腹部の疼きと完全に連動していた。
「……キッチンでいいですか」
彼の声が、脈打った。
私が頷いたその瞬間、もう身体は抗えていなかった。
キッチンの奥、冷蔵庫の影に身を滑らせると、
彼は後ろから私の腰を抱えた。
「こんな近くにいるのに……抱いちゃいけないって……ひどい話だよね」
その声が、私のうなじにかかる。
「でも……奥さんの脚、もう閉じる気ないみたいだよ?」
言葉が終わる前に、彼の指が私の太腿を這う。
スカートの奥、ショーツの濡れを指先が見つけると──
一拍の沈黙。
そして、そのまま、
舌のような指が、布越しに私の“音”を聞いた。
「……こんなに濡れてるの、聞こえてる?」
私は頷けなかった。
頷いたら終わる気がしたから。
でも、頷けなかったのに、
身体は、喉で喘いでいた。
「この声、久しぶりに聞けて嬉しいよ」
彼の囁きが耳を舐める。
次の瞬間、私は振り向かされて、
冷蔵庫の横、硬い壁に背を預けられていた。
唇が、来る。
わかってる。
私の舌は、もうその味を待っていた。
──キス。
触れた瞬間、
身体の全部が、あの頃の“奥”を思い出してしまった。
舌が、喉の奥に沈み、
唾液が、欲情の温度を持って混ざる。
胸が押しつけられ、乳首が擦れた。
それだけで、腰が割れそうになった。
私は、彼の首に腕を回す。
もう、それが答えだった。
「もう挿れたいんだけど、いい?」
その囁きに、私は首を横に振った。
けれど──腰が前に出た。
それが、答え以上だった。
彼の指が、私のショーツの中に滑り込む。
粘膜の奥、
一番敏感な場所を、
覚えていた場所だけを、撫でた。
「変わってないね。
この奥を触ると、すぐ……」
「やめて……っ、そこは……ほんと、だめ……」
「“だめ”って言ってる声が、一番濡れてるよ?」
言葉のたびに、指が浅く沈み、
私は腰を引こうとするのに、脚はひらく。
音が、出る。
濡れた私の奥が、彼の指に抱かれている音。
夫のシャワー音にかき消されるその下、
私は夫の家で、かつてのセフレに“奥”を開いていた。
キス、指、そして──
「声、我慢できる?」
「……無理、かも……」
「じゃあ、噛んでて」
そう言って、
彼は私の口に自分の指を入れた。
そして、もう一方の手は、
私の中を、指三本で貫いた。
深く、奥の奥まで。
「……っ、あ、あ、んん……!」
声が漏れないように噛んだ指が、
また別の性感になってしまう。
「なにそれ、エロすぎ」
彼の声が震えていた。
彼も、限界だった。
「……次、いい?」
「……ぃいよ……でも、すぐ出さないで……」
「わかってる。俺も……ずっと……出したくなかったから」
二人は、キッチンの冷たい床で、
静かに、夫の知らない体位で交わった。
“私の中”を知っている男は、
挿れる角度も、奥の当て方も、
どこまで動いたら、どこで止まれば、
私が一番、声を噛み殺して濡れるのか──全部、覚えていた。
【第3部】夫の知らない絶頂、奥でほどけていく心と身体
静かだった。
奥まで挿れられているのに──
音も、声も、ただ沈黙に溶けていた。
「まだ……締めてくれるんだな、奥の方で」
彼が、微かに笑う。
私の中にいるのは、“いま”の彼なのに、
身体はもう、“あの頃の記憶”で動いてしまっている。
膣が、懐かしい彼の形を吸い上げている。
「……出したいけど、出したくない」
「もっと、奥まできて……お願い、ゆっくりでいいから……奥に……」
私の声が、震える。
自分でも知らなかった音域で、
懇願するように掠れていた。
──奥に、きた。
腹の一番奥に、熱いものが触れる。
そこから、全身に波紋のように拡がっていく快感。
喉が詰まり、吐息が洩れ、
脚が勝手に絡みつく。
彼が浅く引き、深く沈み、
膣が波のように蠕動する。
「……やば……イキそう……」
「まだ……だめ、私……まだ……」
“まだ”が何かも分からずに、
身体だけが、もっと、もっと、と言っていた。
その瞬間だった。
「──あっ……!」
破れた。
何かが、中で、確かに。
我慢していた声。
繋がりたかった奥。
欲しかった肯定。
全部が、同時に、溢れた。
「う、そ……また……っ、イッてる……っ……やだ、やだっ……」
自分で抑えきれないほどの絶頂が、
喉から、腰から、脚の指先から、私を貫いた。
膣が、彼を噛んだ。
奥で、痙攣する。
彼も、呻きながら奥に沈んだ。
「っ……イく、奥……ごめん、出す……!」
「いい、……いまだけ、いまだけだから……!」
どくっ、どくっ──
熱が、奥に注がれる。
私の中が、静かに、けれど確実に、
“いま”で満たされていく。
終わったあと、彼は私を抱いたまま動かなかった。
私も、動けなかった。
「……ごめん。こんなはずじゃ」
「……ううん。
こんな風に、濡れたのは初めてだった」
それは本心だった。
記憶じゃない、“いま”の奥で絶頂したのは、あなただけ。
冷蔵庫の音。
シャワーの止まった気配。
夫の足音。
すべてが、遠くから聞こえた。
私は、
夫の知らない身体で、
今夜だけ、セフレに還った。
そして夜が明けた。
夫と彼と三人で朝食をとる。
何も知らない顔の夫の隣で、
私の膣だけが、まだ奥に残る彼の熱を忘れていなかった。
それでも私は、妻として笑っていた。
だけど──
テーブルの下、膝が震えていた。
彼がくれたのは、絶頂だけじゃない。
“戻れない心”だった。



コメント