夫の妹・瑞希がうちに転がり込んできたのは、夏の終わりだった。
「彼と別れた」と、メッセージひとつで突然スーツケースを抱え、玄関に立っていた。
夫は「しばらく泊めてやって」と軽く言っただけで、特に気に留める様子もなく、彼女はそのまま、我が家のリビングに自然に居ついた。
瑞希は28歳。細く整った顔立ちに、切り揃えられた短めの髪が涼しげで、何よりその瞳が印象的だった。女の子らしい可愛さの中に、時折ドキリとするほどの冷たい光を宿している。
「お義姉さん、メイク薄くても色っぽいよね」
「ほんとに? もうすっぴんで勝負する年齢じゃないのよ」
「えー、私はすっぴんのほうが好き。…なんか、柔らかくて」
そう言って、指先で私の頬を軽くなぞったとき、私は笑いながらもその指の温度を無視できなかった。
夫が出張に出た夜。
私と瑞希は、ふたりで遅くまでワインを飲んでいた。
エアコンの風が弱くて、部屋には湿った熱気が漂っていた。タンクトップ一枚で脚を伸ばす瑞希。私はソファの隅で、彼女を正面から見ないようにしていた。
「ねえ、お義姉さんって、女の子とキスしたことある?」
突然の問いに、グラスを持った手が止まった。
「……ないけど」
「してみたいと思ったことも?」
「……ある、かもしれない。若い頃にね。そういう憧れくらい」
「ふーん」
瑞希は立ち上がり、私の隣にゆっくりと座った。
「今は?」
息がかかるほど近くで、そう囁かれたとき、私は何も答えられなかった。
ゆっくりと顔が近づいて、ふわりと唇が触れ合った。
最初は遊びのような軽いキス。でも、瑞希の舌先が私の唇をなぞるように動いたとき──私は、ぞくりと背中が震えた。
「……瑞希ちゃん、だめよ、そういうの──」
「どうして?」
小さく笑いながら、彼女は私の太ももに手を添えた。
その指が、熱を帯びたまま滑るように肌を撫でていく。
パジャマの薄い布越しに、瑞希の手のひらの体温が伝わる。
「お義姉さん、濡れてる……ね」
そう囁かれ、私は言葉を失った。
瑞希の指が、布の奥に入り込んでくる。
指先が、戸惑うように、でも確実に私の中の欲を探っていた。
「あ……だめ、だって、そんなこと、女同士で──」
「女同士だから、気持ちいいんだよ。……試してみる?」
彼女の舌が、私の胸の先端に触れたとき、
私は女としての自分を思い出した気がした。
夫とのセックスでは味わえない、繊細な舌の動き。
息づかいに混じる熱。
指先がゆっくりと私の脚を開かせ、柔らかな肉を撫でる。
「お義姉さん、声我慢しなくていいよ。ほら……もっと感じて」
瑞希の舌が、そこに触れたとき──私の中で何かが溶けた。
羞恥と罪悪感。
でも、それ以上に確かに存在する、抗えない快楽。
私は、その夜、何度も彼女の口の中で声を上げ、
瑞希の手の中で、女として蕩けていった。
行為のあと、静まり返ったリビングで、私は裸のままソファに横たわっていた。
瑞希は私の髪を撫でながら、ぽつりと呟いた。
「私ね、お義姉さんのこと……ずっと見てた」
「……いつから?」
「たぶん、最初から。お兄ちゃんより先に、私が欲しかったんだと思う」
その言葉に、胸の奥がぎゅっと締め付けられた。
それから私は変わってしまった。
主婦としての顔。
妻としての役割。
そのすべてが、瑞希の瞳の奥に吸い込まれていった。
私たちは今でも、誰にも知られず、
夫のいない夜に、身体を重ねている。
触れられるたび、私は自分の奥底に沈んでいく。
そして、女としての本音が、ひとつずつ、剥がれていく。
──あの夜、私は妹じゃない女に抱かれて、
“女”として目覚めてしまった。



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