若い男との年の差性交に身も心も溺れてしまうおばさんたち…二章
【第1部】三十代独身OLと22歳の居候青年──誰にも見せなかった乾いた日常が揺らいだ夜
三十五歳を過ぎたあたりから、「このまま何も起きないまま終わっていくのかな」と、ふとした瞬間に思うようになりました。
東京の小さなオフィスで、私は事務として十数年働いています。
残業は多くないけれど、特別やりがいがあるわけでもない。
同僚たちは次々と結婚し、子どもができ、週明けのランチタイムは「うちの子がさ」「夫がね」と、家族の話題で満ちていきました。
私――**有紗(ありさ)**は三十六歳。
かつて一人だけ真剣に付き合った同級生の恋人がいましたが、二十歳そこそこで別れてから、気づけば十五年以上、誰の体温も知らないまま時間だけが積もっていました。
そんなある初夏の午後、久しぶりに姉から電話が来ました。
「ねえ有紗、ちょっとお願いがあるんだけど……」
姉の友人の息子だという青年が、上京して専門学校に通っているものの、寮を出ることになった。
次の住まいが落ち着くまで、数か月のあいだ預かってもらえないか――という話でした。
「ケイっていうんだけどね、二十二歳。静かな子でさ、ちょっと不器用なんだけど、悪い子じゃないのよ。ただ、家でもあんまり居場所がなくて……」
「居場所がない」という言葉が、胸のどこか柔らかい場所をつつきました。
職場でもプライベートでも、どこか「余りもの」のように感じていた自分と、重なってしまったのかもしれません。
「いいよ。部屋は狭いけど、布団ひとつ増えるくらいなら何とかなるから」
そう答えたとき、私はまだ、自分の生活が大きく軌道を変えるなんて想像もしていませんでした。
ケイが私の部屋にやって来たのは、梅雨が明けたばかりの蒸し暑い夕暮れでした。
背は高く、すらりとしていて、黒い髪が額に少し落ちている。
線の細い顔立ちで、第一印象は「静かな男の子」というより、「まだあどけなさの残る青年」でした。
「……お世話になります。黒川 啓(くろかわ けい)です」
丁寧に頭を下げる仕草は、どこかぎこちなくて、
肩に預けられたリュックのベルトだけが、頼りなく身体にしがみついているように見えました。
「そんなにかしこまらなくていいよ。狭いけど、ここがしばらく啓くんの家だから」
そう言って笑うと、彼は少しだけ表情を緩めました。
同居生活が始まってみると、啓は驚くほど手がかからない子でした。
自分の洗濯物は自分で洗い、食器もすぐに流しに運び、掃除機までかけてくれる。
ただ一つ気になるのは、休日になると部屋の隅で小さくなって、イヤホンもせずに古い音楽を聴いていることでした。
ぼんやりと窓の外を見ている横顔は、どこか「ここにいない誰か」を見ているようで、胸がざわつきました。
ある夜、私は思い切って聞いてみました。
「啓くん、さみしくないの?」
彼は少し驚いたように目を見開き、やがて諦めたように笑いました。
「……さみしいって、どんな感じなんですかね。
小さいころから、家にいても、いなくても、だれもあんまり気にしてなくて。
だから、さみしいっていうより、“透明”って感じです」
「透明」という言葉が、胸の奥にすとんと落ちました。
「ここはね、透明にならなくていいから」
そう言うと、啓は一瞬だけ、こちらの顔をじっと見つめました。
その視線に、なぜか心臓が強く跳ねました。
その日から、啓は少しずつ私に甘えるようになりました。
仕事から帰ると玄関まで出てきて「おかえりなさい」と言ってくれる。
ソファに座ると、猫のように隣に腰を下ろして、今日あったことをぽつりぽつりと話してくれる。
「有紗さんって、なんか落ち着くんですよね」
そう言って微笑むたびに、
胸の奥に、十代のころにしまい込んだはずの何かが、ゆっくりと目を覚ましていくのを感じていました。
そして、あの夜が来ました。
週末の前夜、珍しく職場で嫌なことが続き、帰りにコンビニで小さなワインを買いました。
私はお酒に強くないのに、酔いたい気分だったのだと思います。
ワンルームのテーブルに、コンビニのパスタと、安いワインと、二つのグラス。
啓は最初こそ遠慮していましたが、私が「たまにはいいじゃない」と笑って注ぐと、
おずおずとグラスを口に運びました。
アルコールに慣れていない彼の頬が少しずつ赤くなっていく。
小さな部屋の空気が、いつもよりも近く、熱く感じられました。
「有紗さん、いつも頑張ってますよね」
不意に啓がそう言って、私の手に自分の手をそっと重ねました。
柔らかくて、まだどこか頼りない指先が、ワインのせいで火照った手の甲に触れます。
「……なにそれ、急に。酔ってる?」
「酔ってるから、言えるんだと思います。
僕、ここに来れて、本当に嬉しかったんです。
透明じゃなくていい場所、初めてだったから」
その瞬間、胸の奥で、長年凍りついていた何かがぱきん、と音を立てて割れた気がしました。
【第2部】「透明じゃなくていいよ」──年下の彼に抱きしめられた夜、大人の女としての身体が目覚めた
彼の指先が、重ねた手から少しだけ力を込めて、離れない。
ワインのアルコールと、一日の疲れと、彼の体温。
それらが混じり合って、まるで薄い膜が一枚、現実と私のあいだに挟まったような感覚になりました。
「啓……くん?」
自分でも驚くほど、掠れた声が出ました。
呼びかけながら、名前の最後だけが少し震えたのを、自分で感じました。
彼は、ふっと息を呑むように小さく笑いました。
「有紗さん、“くん”いらないです。
僕、もう子どもじゃないから」
その言葉が、弦を弾くように胸の中に響きました。
長いあいだ「誰かの面倒を見る側」でいることに慣れてしまっていた自分にとって、
「子どもじゃない」と宣言する彼は、眩しいくらい大人びて見えました。
ソファの上で、自然と距離が縮まっていきました。
彼の肩が触れる。
次に、腕がかすめる。
グラスが空になり、テーブルに置く音が不自然に大きく聞こえました。
沈黙が降りたまま、一秒がやけに長く伸びていく。
「……有紗さん」
名前を呼ばれた瞬間、横を向いた私の視線と、啓の視線が正面からぶつかりました。
黒目がちの瞳の中に、躊躇いと、少しの決意と、どうしようもない渇きが揺れている。
次の瞬間、私は自分の身体が先に動いていたことに気づきました。
啓のシャツを、そっと指先で掴んで引き寄せる。
近づいた顔に、軽く唇を重ねた瞬間、
彼が小さく息を呑む気配が、胸の奥まで伝わってきました。
触れただけのくちづけは、驚くほど甘く、あまりに久しぶりで、
私の中の時間が一気に巻き戻されるようでした。
「……ごめん、今の忘れて」
我に返ったように離れようとすると、
啓の手がそっと、しかし確かな力で私の肩をつかみました。
「忘れたくないです。
僕……ずっと、有紗さんのこと、好きでした」
その告白が、廉価版のワインよりもずっと強く、頭の中にまわりました。
十年以上、誰にも向けられなかった「女としての私」へのまっすぐな言葉。
それは、しみ込んではいけない場所に、ゆっくりと染みていくようでした。
彼の腕に引き寄せられ、抱きしめられたとき、
その頼りなさそうな体躯からは想像もつかないほど、しっかりとした温度を感じました。
背中にまわされた腕が、ためらいがちに、しかし離そうとはしない。
私の頬に触れる彼の指先が、震えているのがわかる。
「……本当に、いいの?」
自分で言いながら、その質問が彼に向けたものなのか、自分に向けたものなのか、よくわかりませんでした。
啓は、少し間を置いてから、囁くように答えました。
「いいかどうかなんて、もう考えられないです。
ここにいるときだけは、透明じゃない僕でいたい。
有紗さんに、ちゃんと触れていたい」
その言葉に、堰き止めていたものが音を立てて崩れる感覚がしました。
彼の胸に頬を押し当てると、不規則に早まった鼓動が耳に伝わってきました。
それが、自分の鼓動と同じリズムになっていく。
夜の静けさの中で、
カーテンの隙間から、遠くの車のライトが一瞬だけ差し込み、
絡み合った影だけを、白い壁に浮かび上がらせました。
具体的な何かを言葉にすることなく、
私たちは、その夜、確かに互いを「ひとりの大人」として求め合いました。
長く封じていた感覚が、
少しずつ、慎重に、しかし抗いようもなく目覚めていく。
それは決して派手なものでも、映画のような劇的なものでもありませんでしたが、
長い渇きの末に、やっと落ちてきた一滴の水のように、
身体の奥深くまで浸透していくものでした。
気づけば、彼の名前を何度も呼んでいました。
そのたびに、啓はまるで大切なものを扱うように、
私を抱きしめる腕の力を、ほんの少しだけ強くしました。
【第3部】同居から恋人へ──巣立った彼と続く秘密の関係、大人の女が手放せなくなったもの
翌朝、カーテン越しの薄い光の中で目を覚ましたとき、
最初に頭をよぎったのは、猛烈な後悔でした。
隣で眠る啓の穏やかな寝顔が、
余計に自分の「取り返しのつかなさ」を突きつけてくるようでした。
「私、なにしてるんだろう……」
三十六歳。
二十二歳年下の青年との関係。
世間が聞いたら、きっと冷たい言葉のひとつやふたつは投げつけるでしょう。
そっとベッドを抜け出そうとしたとき、
背中から伸びてきた腕が、私の腰を抱き寄せました。
「どこ行くんですか……」
寝ぼけた声が、耳元に落ちてきます。
「……ごめんね。あんなこと、本当はしちゃいけなかったよね」
私がそう言うと、啓はゆっくりと身体を起こして、
真剣な目でこちらを見ました。
「僕は、嬉しかったです。
……昨日も、その前からも。
有紗さんに“好きだよ”って言ってもらえたの、たぶん、僕の人生で一番救われた瞬間でした」
「好きだよ」と囁きながら彼を抱きしめた昨夜の自分を思い出し、
頬に熱が戻ってくるのを感じました。
「でも、私は大人だし……」
「僕も、もう大人ですよ」
言い切った啓の声は、夜中とは違う、
どこか芯の通った響きを持っていました。
「ここにいるあいだだけでも、
有紗さんには、僕のこと“男”として見てほしいです。
それがダメなら、出ていきます」
脅しのようでいて、必死さのにじむその言葉に、
胸の奥がぎゅっと締めつけられました。
彼にとってもこの部屋が、「透明じゃなくていい場所」になってしまったのだと、
痛いほどわかったからです。
結局その日、私は啓を追い出すことも、自分の気持ちをごまかすこともできませんでした。
「ここは、啓の“家”でもあるんだよ。
だから、逃げるみたいに出ていくのはなし。
それに……」
そこまで言って言葉に詰まると、
啓はじっと待つように、私の顔を見つめていました。
「それに、私も、もう“何もなかったこと”にはできないから」
そう呟いた瞬間、
彼の表情に浮かんだ安堵と喜びが入り混じった笑顔を、
私は一生忘れないと思います。
それから数年、啓が専門学校を卒業し、都内で仕事を見つけるまでのあいだ、
私たちは同じ部屋で暮らしました。
表向きは「親戚の子を預かっている」三十代独身女と、
地方から出てきた静かな青年。
しかし、部屋のドアを閉めた先では、
私たちは互いを「恋人」として扱いました。
仕事で疲れて帰ってきた夜、
啓が作ってくれた少し不格好なオムライスを二人で笑いながら食べる。
洗面所の鏡に、並んで歯を磨く姿が映る。
小さなソファに身体を寄せ合いながら、どうでもいいバラエティ番組に笑う。
その何気ない一つひとつの時間が、
私にとっては、十数年ぶりに取り戻した「誰かに愛されている感覚」でした。
夜になれば、カーテンの向こうの街の明かりと、
ベッドのシーツの感触と、
互いの呼吸だけが、部屋の中を満たしました。
具体的な形を語らなくても、
あの夜々に交わした体温と囁きは、
確かに、私の中の何かを救い、同時に壊していったのだと思います。
啓が新しいマンションに引っ越したのは、
彼が二十代半ばに差し掛かる頃でした。
「ちゃんと、自分の場所を持ちたいんです」
そう言った彼の表情は、もう「預けられた青年」ではなく、
一人の男の顔をしていました。
「そっか。……寂しくなるね」
そう言いながら笑ってみせると、
啓は少しだけ眉を寄せて、私の手を握りました。
「離れるつもりなんて、ないですよ。
ここは、僕の“帰る場所”でいてほしいから」
その言葉の意味を、私たちは互いにわかっていました。
同居は終わっても、
完全に終わらせることができない関係があることを。
今、私と啓は、別々の場所で、別々の生活を送っています。
彼には彼の仕事があり、人間関係があり、
私は相変わらずオフィスで、あまり変わり映えのない日々を過ごしています。
それでも、ときどき彼から届くメッセージには、
あの頃と変わらないやわらかな呼びかけが添えられています。
「今度の土曜日、久しぶりに会えませんか」
そんな一文を見るだけで、
胸の奥の、乾ききったと思っていた場所が、
まだ静かに疼くのを感じます。
誰にも言えない。
言うつもりもない。
三十代後半から四十代にかけて、私を「女」として目覚めさせ、
今も時々、そっと火を灯してくれる、秘密の存在。
巣立っていったあの青年と私の関係は、
形を変えながら、今も慎ましく続いています。
大人になってから知った「抱かれる」と「抱きしめる」の違い──私のエッチ体験談がくれたもの
この体験を言葉にしてみて、改めて思うのは、
あれは「若い男の子との刺激的な関係」というような、
一行で説明できるような話ではない、ということです。
長いあいだ、誰にも求められないまま、
自分の身体や感情に蓋をして生きてきた私が、
「透明じゃなくていいよ」
と言ってくれる存在と出会い、
はじめて「抱かれる」と同時に「抱きしめる」ことを覚えた、
そんな時間だったのだと思います。
あの夏の夜、
ソファの上で、震える手で互いを求め合った瞬間から、
私たちはずっと、
「正しいかどうか」よりも、「本当に欲しいものは何か」を見つめ続けてきました。
もちろん、この関係がいつまで続くのかはわかりません。
いつか彼に、私以外の大切な人ができるかもしれない。
そのとき私は、静かに身を引くことになるのだと思います。
それでも。
三十代後半、誰にも言えないこのエッチな体験談は、
私にとって単なる「刺激的な思い出」ではなく、
乾ききった心と身体に、もう一度血を流し込んでくれた出来事であり
「女としての自分」を、歳を重ねた今の姿のまま肯定してくれた瞬間の連なりでした。
この物語をここに吐き出したのは、
誰かに羨ましがられたいからでも、
背徳感を共有したいからでもありません。
ただ、
「もう終わりだ」と思ったあとにも、
こんなふうに、
静かに、でも確かに身体ごと震えるような出会いが待っていることがある――
そんなささやかな、けれど確かな希望のかたちとして、
自分自身に刻んでおきたかったのだと思います。
そして、もしどこかで、
かつての私のように、
誰にも言えない渇きを抱えている誰かの目に触れることがあるなら。
「女としての人生は、あの彼と別れたときに終わった」
そう諦めていた私でさえ、
まだこんなふうに、秘密の夏を抱きしめて生きている――
その事実が、
ほんの少しでも、あなたの心と身体を、
やさしく解いてくれますように。



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