第一章:誰にも触れられないまま、私は“女”であることを忘れていった
夫とは、もう半年以上、まともに肌を重ねていない。
それどころか、目すら合わなくなった。
35歳。結婚8年目。東京郊外のマンションで、私は“妻”としての役割に埋もれながら、心と身体が静かに乾いていくのを感じていた。
夜、ベッドの端に背を向けて眠る夫。
その背中を見つめながら、私は何度も自問していた。
「私は、もう“女”じゃないのかもしれない」と。
けれどある朝、ほんのささいな違和感が、その鈍い無感覚に爪を立てた。
早朝4時、ジョギングに出ようとしたとき、エントランスの鏡の前でふと、自分の姿が視界に入った。
タイトなランニングウェア。
汗で薄く張り付く胸元、脚のライン。
「見られたらどう思うだろう」――唐突に、そんな想像が浮かんだ。
その瞬間、頭の奥に沈んでいた何かが、泡のように浮かび上がってきたのだ。
そして次の朝、それは現実になる。
第二章:“見られている”という快楽に、私はひとつずつ服を脱いでいった
そのマンションには、ひとりの管理人がいた。
村田さん、50代半ば。声を荒げることもなく、口数も少ないが、目だけは妙に深くて静かだった。
いつも、屋内駐車場の片隅にいて、朝の点検をしていた。
彼の視線が、ある日ふと、私の脚に、腰に、胸元に止まったことがあった。
そのとき、私の中に眠っていた“女”が、はっきりと目を覚ましたのだ。
「……おはようございます」
その朝、私はわざと、胸元のファスナーを少しだけ下げていた。
下着が見えそうで見えないギリギリ。呼吸で上下する谷間に、汗が光っていた。
彼は何も言わなかった。
けれど、ほんの数秒、目を逸らさずに、私の胸元を見つめていた。
その視線だけで、私は身体の奥が震えるような感覚に包まれた。
次の朝は、ヒップラインがはっきりと浮かぶスパッツ。
そのまた次の朝は、下着をつけずに薄いランニングシャツ一枚で。
「見せている」と意識した瞬間、私の呼吸は熱を帯び、太腿の内側が濡れていくのがわかった。
私の“性”は、見られることによって目覚めていったのだ。
第三章:ただ見られているだけなのに、私は指を這わせたくなるほど感じていた
ある朝、私はついに、決定的な一線を越えた。
Tシャツの下に、何もつけずに行ったのだ。
乳首がうっすらと浮かび上がるほど薄い布一枚で、エレベーター前に立った。
彼が振り返り、目を細める。
けれど、何も言わない。
ただ、見ていた。じっと。まるで、許しを与えるように。
「……寒く、ないですか?」
静かにそう言われたとき、私の心の中で、何かが崩れた。
「寒くないです」と答えた声は、震えていた。
そうして私は、立ったまま自分の身体を意識していた。
視線が、乳首に、腹部に、脚の付け根へ。
まるで彼の目だけが、私を舐めているようだった。
そして、その“視線の舌”が、私の感覚を、いやらしく、じんわりと熱くしていった。
私は濡れていた。誰にも触れられていないのに、足の間から、熱い感覚が滴り落ちそうだった。
「……村田さん」
呼びかけた声の奥には、もう隠しようのない欲が滲んでいた。
「もっと……見ますか?」
彼は無言のまま、私のすぐそばに立ち、そっと目線を落とす。
私はゆっくりと、シャツの裾を指先で持ち上げ、白い腹と、湿り気を帯びた鼠蹊部まで見せていった。
彼は何も言わない。
けれど、その沈黙が、私には何よりも甘い肯定だった。
「見られている」――その事実だけで、私は体内で甘く痺れるような快感を得ていた。
あの乾いていた日々、誰にも触れられなかった私が、いまや“見せることでイく”女になっていた。
第四章:視線の先で、私はひとつずつ解かれていった――そして触れられた朝
それは、雨の朝だった。
駐車場のコンクリートにしとしとと滴る音が、無人の空間をやさしく包んでいた。
私は、わざと傘を持たずに外に出た。
透けるほど薄いTシャツが、濡れて肌に貼りついていくのを感じながら、静かに彼のもとへ歩いた。
村田さんは、いつものように無言で私を見た。
けれど、今日は違った。
彼の目が、わずかに濡れた私の乳首を見つめたまま、動かなかった。
その視線に、全身が疼き、喉がひとつ鳴った。
「……もう、見せるだけじゃ足りなくなってきたんです」
私がそうつぶやいたとき、彼はゆっくりと、私の腕を取った。
無理やりではない。けれど、拒む余地はなかった。
濡れたままのTシャツの裾を、彼が静かにたくし上げる。
私は、目を閉じた。胸元が空気にさらされ、硬くなった先端が露わになっていくのがわかる。
そして、彼の唇が、そこに触れた。
ぬるく湿った舌先が、私の尖った先をやさしく巻き取り、吸い上げる。
その感触に、腰が抜けそうになる。
「やだ……そんなに吸ったら……」
言葉とは裏腹に、私の両手は彼の髪を掴んでいた。
もっと深く、もっと強く、と願うように。
彼の手が、私のショーツをそっと下ろす。
太腿の内側を撫でながら、指先がじんわりと熱く濡れた場所を確かめるように這う。
そして、そのまま彼は、私の脚をそっと広げさせた。
「……ここ、見せて」
その声に、羞恥と興奮がないまぜになった。
私は、壁に手をつきながら、腰を少しだけ突き出す。
その瞬間、彼の舌が、私の奥をなぞった。
「んっ……あぁっ……」
熱い。濡れていたはずのそこが、もっと、ぐっしょりと濡れていくのがわかる。
舌先が割れ目をゆっくりなぞり、中心を吸い上げ、そしてその奥までくちづけてくる。
内腿が震え、膝がかくんと折れそうになるのを、必死で耐えた。
「……イきそう、なのに……まだ、入れてないのに……っ」
それでも彼は舌を止めず、唾液と私の蜜が混ざり合う音が、地下の静けさの中に生々しく響いた。
第五章:“入れてください”と、心が先に開いていた――正常位から、私は女に戻った
「……お願い、入れて……もう、耐えられないの」
それは、私の唇から漏れた懇願だった。
彼は無言のまま立ち上がり、パンツのベルトを静かに外す。
その仕草が、なぜだかとても丁寧で、愛撫よりも深く私を揺さぶった。
そして私は、コンクリートの上に薄手のタオルを敷かれ、仰向けに寝かされた。
乳首は雨に濡れたまま硬く尖り、脚は自然に開いていた。
彼がゆっくりと、私のなかへと沈んでくる。
ずっと空っぽだった場所に、やっと熱が満ちていく。
その圧力と深さに、思わず声が漏れた。
「……っ、ああ……っ、これ……これが欲しかった……」
ひと突きごとに、身体の奥で火花が散る。
最初はゆっくりと、私の反応を確かめるように。
やがて、それがリズムを持ち、奥を突くたびに快感が波となって全身を駆け巡る。
正常位で目を見つめながら、奥まで突き上げられると、ただの行為ではなく、
「私はここにいる」と証明されているような気さえした。
「あなたに……もっと壊してほしい……」
私の脚を肩にかけ、体位が変わった。
後背位――深く、そして一度も触れられたことのないような奥の奥まで貫かれる。
胸が揺れ、声が抑えきれなくなる。
「あぁっ、だめっ、イく……っ、イッちゃう……っ」
身体が跳ね、何度も波に呑まれ、意識が白く塗りつぶされていく。
第六章:裸のまま、雨音を聞きながら――私はいま、確かに生きていた
行為が終わったあと、私はまだ彼の上にいた。
彼の胸に額を当て、乱れた髪のまま呼吸を整える。
身体の奥にはまだ熱が残り、脚の間には彼の痕跡がじんわりと流れていた。
けれど、不思議と虚しさはなかった。
罪悪感すら、薄れていた。
「……もう、私は誰のものでもないのかもしれない」
そう呟いた私に、彼はそっと髪を撫でた。
愛情ではない。執着でもない。
ただ“肯定”だった。
“女”であることを、肯定された瞬間だった。
その日以来、私は朝4時に目覚めるたび、濡れたTシャツの感触と、あの沈黙の視線を思い出す。
露出で目覚め、触れられて堕ち、突き上げられて、生まれ変わった。
私の官能は、誰かに奪われたものではなく、自らが選んだ悦びのかたちだった。
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