きっかけは、ほんの出来心だったのかもしれない。
彼に言われて、最初は冗談半分だった。
「アートヌードの撮影会に出てみない?」
「……私が?」
私は笑った。けれど、彼は真剣だった。
「君の身体は、本当に綺麗だから」
「……その綺麗な身体を、他人に見せたいってこと?」
そう返したとき、彼は一瞬、言葉に詰まった。
けれど次に出たのは、甘やかな囁きだった。
「…ねえ、恥じらう君が、いちばん綺麗なんだ」
その言葉に、どこか胸の奥を撫でられたような感覚があった。
私は、少しずつ理性を手放していった。
撮影場所は、都内の雑居ビルの最上階。
鍵のかかったドアを開けると、空気が変わった。
無機質な白い壁。
窓のないスタジオ。
整然と並んだ三脚、ライト、ビデオカメラ。
その中心に、白いシーツの敷かれたベッドがひとつ。
演出家と名乗る男は、ラフなTシャツにラフな態度で私を迎えた。
「今日は、君の“本質”を撮る。偽りのない欲望、全部見せて」
私はまだ、自分がどこまで脱がされるのか分かっていなかった。
最初はシャツ姿から。
それが少しずつ、スカートが、ブラが、ショーツが脱がされ、
私はただの「素肌」だけになっていった。
「ほら、見てる。レンズの向こうに、欲望がいる」
彼の声とともに、私の周囲に静かに男たちが集まりはじめる。
撮影者たち、スタッフ、演出家。
私の肌を見つめる視線が、まるで手のように這いまわる。
「ねえ、硬くなってきたね」
誰かが、ぽつりと呟いた。
その瞬間、自分の突起がひんやりと空気に触れて尖っていたことに気づく。
「乳首、ちょっと整えるね」
指がそっと触れた。
いやらしさを装わない、無造作な愛撫。
それが逆に、耐えがたいほど官能的だった。
胸の先がきゅうと縮こまり、私は思わず身体をこわばらせた。
「……感じてる?」
「違っ……」と否定した唇からは、震えた吐息しか出なかった。
やがて、彼らの手が一斉に私の身体へと伸びてきた。
腕を、腰を、脚を、指先で撫でるように。
膝の裏、太ももの内側、鼠蹊部のきわどい場所にまで。
誰の手か分からない。
でも、どの指先も私の肌の熱を知っているように、巧みに動いた。
そのうちの一人、演出家の男が、私の耳元で囁いた。
「一度、見せてくれる? 本当の、君を」
彼の手が、私の足をすっと開く。
抵抗は、できなかった。
むしろ、自分から膝を広げていた。
見られている。
唇の奥まで、愛撫されたあとの濡れ具合まで。
ライトがそれを白々しく照らし、シャッターが何度も切られた。
羞恥心は、熱へと変わる。
興奮が、それを上回っていく。
「少し、おもちゃ、使ってみようか」
そう言って彼らが持ち出したのは、
黒く艶のあるバイブレーターと、銀色に光るスティック。
「ここに…こうして。ね?」
演出家の男が、私の陰唇を開き、
その小さな機械をそっと当てた。
電流のような快感が走り、腰が跳ねた。
「あっ……んっ……!」
そして、演出家が言った。
「これでまだ、本番じゃないから。君には、もっとすごいのが待ってる」
そして――それは、現れた。
見た瞬間、息を飲んだ。
ひときわ背が高く、肌の浅黒い男が、服を脱ぎながら近づいてくる。
その股間に現れたものは、異常なほどに大きかった。
太さ、長さ――比喩でなく「手首ほど」の極太。
男の巨根は、ゆっくりと脈打ちながら、こちらを見据えているようだった。
「大丈夫。焦らないで、ゆっくり入れるから」
私は頷くしかなかった。
でも本当は、入れてほしかった。
その大きさを、感じてみたかった。
男は、私の腰を優しく持ち上げ、
ベッドの上で脚を抱えあげるようにして、ぬるりと先端を宛がった。
「…いくよ」
ぬちゃ、と湿った音。
そして――
「ふっ…ぁああああっ……!」
裂けるような痛みと、奥の奥を埋められる充足感。
膣壁が押し広げられ、なにかがごりごりと擦れている。
そのすべてが、脳にまで突き抜けた。
「奥まで入ったよ…すごいな、全部呑んだね」
誇らしげなその声。
私は、自分の中に入りきったその異物感に、
恐怖と快楽が溶け合うのを感じていた。
そして始まる、突き上げ。
腰が沈むたび、ベッドが軋み、私は大きな声をあげた。
「やっ…やばい、そこ…あぁっ、だめっ…!」
彼は的確に、子宮の奥に突き当ててくる。
そのたびに火花のような快感が弾け、私は絶えず昇っていった。
足先が痺れ、腰が勝手に跳ね、
涙がこぼれた。
それは痛みではない。
感じすぎて、壊れそうで――
「イキそう、イカせてっ…お願いっ…!」
演出家が後ろから私の胸を揉みしだき、乳首をつまむ。
「よし、じゃあ、今度はカメラに向かって――イケ」
私は――絶頂とともに、レンズに向かってあえいだ。
「みてっ…みて、私…イッてるの…っ!」
私の中で、なにかが壊れた。
同時に、なにかが目覚めた。
見られていること。
晒されていること。
そして、自分から求めていること。
それが、私を生きていると感じさせた。
あの夜から私は変わった。
屈辱は、快楽の前菜に過ぎない。
恥ずかしいという感情は、悦びの導火線だった。
そしていま。
私はまた、レンズの前に立っている。
ライトを浴びながら、
裸のまま、カメラの奥に向かって、笑みを浮かべる。
羞恥を脱ぎ捨て、快楽に身を委ねた女として――
私は、今日も誰かの欲望を照らす“素材”であり、“女”だ。



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