息子の野球少年団の打ち上げが終わり、私は一人ホテルのロビーにいた。久しぶりの飲み会にほろ酔い気分でいたところ、颯斗——息子のチームの若きコーチが声をかけてきた。
「もう帰られるんですか?」
「ええ。でも少し酔いを冷ましてから。」
「じゃあ、よかったら少し話しませんか?」
彼はまだ20歳。情熱的な指導で子どもたちから慕われる、爽やかな青年だった。私は躊躇しながらも、彼とホテルのラウンジで向かい合った。
「子どもたち、本当に成長しましたね。」
「はい。でも、奥村さんの支えがあってこそですよ。」
「そんなことないわ。あなたがいたから、みんな伸び伸びプレーできたのよ。」
彼の視線が真っ直ぐに私をとらえ、心がざわめく。若いはずのその瞳に、どこか落ち着いた大人の色が宿っていた。
「ずっと思っていました。奥村さん、すごく綺麗な方ですよね。」
不意の言葉に息を呑む。
「冗談、上手いのね。」
「冗談じゃないです。ずっと……思っていました。」
彼の指がそっと私の手に触れた。動揺しながらも、拒めない自分がいた。ラウンジの薄明かりが私たちを包み込み、静かな空間に二人だけが取り残される。
「部屋まで送ります。」
彼の提案に、私は静かに頷いた。
ホテルの部屋に入ると、外の世界が遠のく。彼はふと私の目を見つめた。「こんなに綺麗だったなんて……」と呟き、私は戸惑う。その視線に答えるべき言葉が見つからない。「部屋に一緒にいるなんて夢みたいです。」彼の笑みは真剣で、私は胸がざわめく。「そ、そうなの?」「ずっと、こんな風にあなたと過ごしてみたかった。」彼の言葉に、私は静かに頷いた。
「……本当に、ずっと見ていました。」
背中に手が添えられ、ゆっくりと引き寄せられる。「大丈夫ですか?」彼の優しい声が耳元に響き、私は微笑んだ。「ええ、大丈夫。」その言葉に安心したように、彼の手が私の背中をなぞる。
「颯斗……。」
「今夜だけ……いいですか?」
その問いに、私は答えられない。ただ、ゆっくりと彼に身を預けた。
彼の手が私の背をなぞり、私たちは静かに夜の深みに溶けていった。
彼の指先が私の肩を撫で、温かな息が頬をかすめる。薄明かりの中で、私は彼の上に跨り、波打つような動きが静かに始まる。ゆるやかな揺らぎの中で、私は彼を見下ろしながら、ひとつの旋律を奏でるように身体を動かす。その旋律が重なるごとに、心の奥深くまで響き渡り、互いの存在を強く意識するような感覚が湧き上がってくる。彼の手が私の腰を支え、わずかに揺れるたびに、全身を包み込む熱が濃密さを増していく。
時間の流れがゆっくりと溶けていくようだった。彼の腕が私の腰にまわされ、しっかりと抱き寄せられる。鼓動が重なり、互いの呼吸が絡み合う。私の指先が彼の肩をたどり、彼の体温を感じるたびに、心の奥で何かがほどけていく。
窓の外のネオンが揺れ、薄暗い部屋の中で彼の影が私の上に重なる。私はゆっくりとその波に身を任せるように、柔らかなリズムの中で揺れ動く。触れるたびに生まれる熱が身体中を巡り、まるでひとつの楽器のように響き合いながら、ふたりだけの旋律を描いているかのようだった。その旋律は次第に高まり、瞬間ごとに新たな調和を生み出していく。
心地よいリズムの中で、私は彼の動きに合わせながら、柔らかく弾む感覚を楽しむように身を委ねた。小さな吐息が漏れ出し、そのたびに胸の奥が甘い余韻で満たされていく。彼の手が腰にしっかりと添えられ、さらに密接な繋がりを求めるように引き寄せる。その動きに合わせて、私たちの声が大きく、激しく響き合う。次第にリズムが高まり、触れるたびに全身が燃えるような感覚に包まれた。「颯斗……っ!」息を乱しながら、言葉では抑えきれない声が部屋を満たす。「もっと……颯斗!」名前を呼ぶ声が次第に強まり、熱が体中に行き渡る。そして、全ての感覚が頂点に到達し、一瞬の輝きがふたりを包む。その瞬間、静寂を破るように全身が震え、空間が一つの音楽を奏でるようだった。静寂の中で溢れる熱がふたりを一体化し、言葉にできない感動が胸の奥深くに刻まれていった。
「奥村さん……。」
囁くような彼の声が耳元をくすぐる。私はそっと目を開け、彼を見つめる。
「颯斗……。」
呼びかける声がかすかに震えた。彼の手が私の髪を梳き、頬を優しくなぞる。そのぬくもりに包まれながら、私は静かに彼に身を委ねた。
「あ……颯斗……」
甘い吐息とともに、心の奥から溢れ出した声が、静寂の空間に溶け込む。その瞬間、ふたりの鼓動がひとつになり、夜の深みで響き渡る。
夜の帳が深く降りる中、私たちは何度も互いの存在を確かめ合った。肌のぬくもりが絡み合い、心が熱を帯びる。全てが解けるように、時間の感覚が曖昧になっていく。
窓の外の景色がぼんやりと滲み、ふたりの影がひとつに重なる。



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