第一章:閉ざされた夜の扉 —「記憶の欠片すら、ないはずなのに」
職場の歓送迎会は、どこか空気が浮ついていた。春の人事異動で新しく加わった三人の大学生アルバイト――直也くん、優真くん、拓人くん。全員が二十歳そこそこなのに、妙に落ち着いた佇まいで、私は正直なところ少し、目を引かれていた。
「〇〇さんって、見た目全然主婦に見えないですね」
そんな軽口を、冗談として流しながらも、どこか胸の奥に響いてしまう自分がいた。
夫とはもう半年以上、触れ合いらしいものもない。高校生の息子も口をきいてくれず、私は毎日、会社とスーパーと台所の間だけで呼吸していた。だからきっと、あの夜、少し飲みすぎたのだと思う。…少し、どころじゃなかったかもしれない。
記憶は、二次会の途中で途切れている。
その後のことは、まるで夢のように、断片だけが濡れたシーツの隙間から浮かび上がってくる。
気づいたとき、私はホテルのシーツに裸で横たわり、脚の間から滴るものをぼんやりと見ていた。
そして――彼らが、順番に、私の上にいたことだけが、鮮明に身体に刻まれていた。
第二章:交錯する躰たち —「私は彼らを、選んでいたのかもしれない」
「もう…ダメ…」
自分の声が、どこか別の女のもののように甘く濁っていた。
直也くんの、硬く熱を持ったものが私の奥に擦れながら出入りし、そのたびに腰が勝手に跳ねる。
細い指が私の胸元を掬い上げ、喉元まで溺れさせた。
「〇〇さん、ここ…弱いんですね」
優真くんがそう囁きながら、舌先で私の耳たぶをなぞる。
息が漏れ、息が詰まり、私は体中を彼らに開いていた。
拓人くんは、私の脚を持ち上げながら、後ろから激しく打ちつけるように突いてくる。
そのたびに、何かが内側で壊れていくような快感に震えながら、私は自分が今どこにいるのかも、誰なのかも分からなくなっていった。
三人は、互いの体液が乾ききる間も与えず、交代するように私の中へと入ってきた。
私はただ、受け入れ、濡れ、震え、熱に応え続けていた。
不思議なのは、身体がまるですべてを覚えていたこと。
記憶がないのに、腰の動きも、舌の絡ませ方も、私の指が誰の髪を掴んでいたのかさえ、はっきりと“知って”いた。
「もっと、奥まで…」
知らない自分の声が、甘く、淫らに響いていた。
誰かのものを口に含みながら、別の誰かに貫かれているその状況に、私は恍惚として、ただただ、感じていた。
第三章:朝の光と、まだ濡れたままの私 —「許されないのは、誰?」
朝。
淡い陽がカーテン越しに差し込んで、私はようやく目を覚ました。
シーツの中は、まだ微かに温もりが残っていた。
裸のままベッドに仰向けに寝転がり、天井を見上げる。
「…全部、夢ならよかったのに」
そう思った瞬間、枕元に置かれた小さなメモに気づいた。
『昨日はありがとうございました。〇〇さんが望んだ通り、全部、秘密にします。——直也』
身体中が、ざわっと粟立った。
望んだ? 私が…?
記憶がないのに、身体が火照っている。
内腿には、まだ確かに誰かの名残が滴っていた。
この熱は、誰にも知られてはいけないもの。
でも、私の奥に住み着いてしまった悦びは、もう決して消せない。
帰宅後、鏡の前で服を脱ぐと、首筋に残った赤い痕が目に入った。
理性はそれを隠そうとするのに、どこかで私は、その痕を指でなぞって微笑んでいた。
あの夜の私は、誰よりも淫らで、誰よりも自由だった。
そして今もまだ、あの熱が、私の中に生きている。


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