ハンバーグ店バイト先の先輩と関係を持った夜、店長が来て…見せられた私の濡れた記憶

【第1部】触れないのに、濡れていた──店長の視線と沈黙の夜

あの夜の湿度を、私はまだ覚えている。

閉店作業が終わって、油の匂いがまだ腕に残っていた。店のシャッターを降ろしたあと、私は彼の部屋にいた。ユニフォームの下に忍ばせた汗ばむ肌が、ひとつずつ剥がされるたびに、心も身体も、少しずつ音を立ててほどけていった。

「先に、シャワー浴びてくる」

そう言ってバスルームに消えた彼の背中を見送りながら、私は裸のまま、ソファの上で膝を抱えていた。カーテンは閉めきられ、蒸されたような空気が肌にまとわりつく。
不意に、ドアがノックもなく開いた。

私は反射的に毛布を掴んだ。けれど──そこにいたのは、あの人だった。

店長。
私より七つ年上で、いつも無駄のない動きと整った身だしなみで、バイトたちの誰よりもきれいだった人。

その店長が、そこに立っていた。
サンダルのかかとを鳴らしもせず、ただ、無表情で。私の裸の肩と、床に散らばった服を順に見て、最後にソファの背もたれに置かれた男のスマホに視線を落とした。

「……彼、いるんでしょ」

私は声が出なかった。喉が、呼吸の振動すら拒むように沈黙した。

バスルームから水音が聞こえた。シャワーを浴びる音、彼の喉を鳴らす声。そのすべてが、この静寂の部屋に歪んで溶け込んでいった。

店長は、ゆっくりと部屋の奥に入ってきた。視線は一度も逸れない。私の肌のどこか、どこを見ているのかも分からないまま──けれど、たしかに、見られていた。

その湿度が、私を濡らしていた。

「そこ、座ってて」

そう言われたとき、私はもう身体が動かせなかった。背中がソファに縫い付けられたように沈み、足先は冷えて、でも、内腿だけがじんわりと熱を孕んでいた。

──なぜ。

なぜ、動けなかったのだろう。なぜ、店長のその視線を拒めなかったのだろう。

扉の向こうから出てきた彼は、最初、驚いたような顔をした。
けれど、店長と目が合った瞬間、その驚きは、すぐに“慣れた表情”へと変わった。

「……来たんだ」

「当たり前でしょ」

そう言って店長は、自分のバッグを静かに置いた。中から、赤いルージュと香水を取り出して、鏡も見ずに唇をなぞった。そして、そのまま──彼の方へ、まっすぐに歩いた。

私は、見てしまった。
彼が、店長の頬に触れた指。
店長が、その指を咥えるように舌で受け入れた瞬間。

耳の奥が、じゅっと濡れたような錯覚に包まれた。
私の喉が、小さく鳴った。

――濡れてる。

彼が私に触れたあの手が、いま、店長の腰を引き寄せている。

その光景が、身体の奥を撫でてくる。目の裏が熱くなり、でも視線は逸らせない。

見られていたのは、私ではなかった。

見せられていたのは、彼の「本当」だった。
そして、店長の「支配」だった。

私は、動けないまま、濡れていった。

【第2部】彼女に抱かれ、私は濡れる──静かに壊される共有の夜

私はまだ、ソファの上にいた。

彼は──彼女の指先ひとつで、私の知らない男になっていた。
さっきまで私を抱いていた手が、今は彼女の下着の中を迷いなく這い、
何のためらいもなく、湿りを確かめている。

けれど一番濡れていたのは、私だった。

音を立ててはならないと、喉を締めつけながら、
息だけで濡れた空気を吐いていた。
腿を閉じても、そこから流れ出す熱を止められなかった。

──“感じてるの、見られてる”

その羞恥が、私を壊していった。

彼女のうなじが、緩やかに反る。
指先で開かれるたびに、体中が細かく震えて、
私は、その震えの余波を、全身で受け取っていた。

視線は合わせられない。
けれど耳が、胸が、脚の奥が、全部“聴いていた”。

濡れた音。
肌を滑る舌の湿度。
彼女の喉の奥から洩れた、甘く鈍い吐息──

「見てなさい」

その言葉が、私の中の何かを引き裂いた。

私は、彼に抱かれたかったのではなかった。
あの女に、見せられたかったのでもなかった。
けれど今──彼女に「見なさい」と言われた瞬間、
その命令が快楽そのものに変わっていった。

彼女は、彼の指を口に含みながら、
私を見た。

そして、まるで“抱くように”、言った。

「ほら……あなたの好きな彼の指よ。さっき、あなたの中にいた……」

その指が今、彼女の中に沈む。

同じものを抱かれながら、
私はまるで、彼女に“奥を擦られている”感覚に包まれていた。

見せられているだけなのに、
どうして、こんなにも濡れてしまうの──?

「やだ……」

声にならない声が、喉の奥で崩れた。

けれど、私の指が、無意識に太腿をなぞっていた。

自分の熱が怖かった。
触れた指先が、私自身よりも彼女に近づいている気がして──

「気持ちいいでしょう?」

彼女の声が、私の耳の奥に沈んだ。

あのとき、私は気づいていた。
この夜、彼女に抱かれているのは、彼ではなく私だった

彼は、彼女に抱かれながらも、私の視線を捨てきれず、
彼女は、彼を抱かせながら、私の濡れ方を見ていた。

三人でいるはずなのに、
私は、彼女の掌の中で、ひとりずつ剥がされていた。

「……やめて……」

やめて、なんて嘘。
この濡れが、私の“求めてしまった快楽”だということを、
私の身体が先に知っていた。

そして彼女は、何もかも知っていた。

「このまま……イっても、いいわよ。見てあげるから」

その言葉の瞬間、私は、
心の奥の、誰にも触れられたことのない場所が、
音もなく壊れるのを感じた。

──私は、彼女に抱かれていた。

唇ひとつ重ねられずに、
皮膚も触れていないのに、
彼女の視線と声と濡れた指先で、
私は、ひとつずつ、女の形に崩されていった。

この夜の終わりに残るのは、
ベッドの軋みでも、交わった汗でもない。

“あの人に抱かれて濡れた私”という記憶だけだった。

そして──

【第3部】壊れたのは身体じゃない──残響の中で濡れ続ける私

朝が来ても、私はまだ“濡れていた”。

シャワーの音も止まり、
カーテンの隙間から差し込む光が、ベッドの皺をなぞっている。

私は、裸のまま、シーツの端を握っていた。
ベッドの上には私と、彼と、店長──
もう“誰が誰を抱いていたか”なんて、分からなかった。

記憶の奥で、何かがずっと濡れ続けていた。

壊れたのは、身体じゃない。
“私”という存在の境界が、あの夜のなかで曖昧になってしまったのだ。

誰かに見られて濡れる。
誰かを見て濡れる。
誰かを通して、自分の奥に触れられる──
そんな快楽が、この世界にあるなんて、知らなかった。

彼の腕は、私を抱いているのに、
私の皮膚は、彼女の声に反応していた。
喉の奥、脈の流れ、呼吸の速度──
すべてが彼女の呼吸と同じ波にのまれていった。

あの夜、彼の奥にいた私と、
彼女に見せつけられた私と、
そして、見返してしまった私と。

誰が“女”だったのか。
誰が“抱いた”のか。

もう、わからない。

「気持ちよかった?」

目を覚ました彼が、寝ぼけた声で囁いた。
私は答えなかった。
けれど喉が、ごくりと音を立てた。

それが──快楽の残響だった。

「ねえ、」

ふと、隣の彼女が、私の耳元に息を落とした。

「今度は、あなただけを抱いてあげる」

一瞬、空気の振動が変わった。

心の奥が、小さく、でも確かに震えた。
あの夜のすべてが“予兆”だったのだと、身体が覚えていた。

彼女に見られて濡れた。
彼女に指示されて濡れた。
彼女の声でイった。

──だったらきっと、今度は。
彼女に、触れられるだけで、私は。

朝陽が背中をなぞる。

だけど私の中には、まだ夜が残っていた。
あの湿度も、あの沈黙も、
“見られて濡れた女”としての記憶も。

壊れたのは、身体じゃない。
**「もう戻れない」という快楽」**だった。

誰かに触れられる前に、
私はもう、快楽の“奥”に堕ちていた。

そして──

私は、もう乾かない。

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