あの夜のことを、私はたぶん、一生忘れない。
結婚して十年。日々の生活に不満があるわけではない。夫は誠実で、子どもにも恵まれ、家庭は円満といっていい。
でも――
「女」としての私は、もうずっと、置き去りのままだった。
そんな私を誘ってくれたのは、短大時代の親友ふたり、亜希子と涼子だった。三人とも主婦で、子育ても一段落した今、「たまには羽を伸ばしたいよね」と、小さな温泉宿への一泊旅行が決まった。
「ねえ、混浴って、したことある?」
湯上がりのビールでほんのり火照った頬のまま、亜希子がふざけるように笑った。
「ええ?まさか……」
涼子が笑いながらも、まんざらでもない様子で目を細める。
「……でも、今ならできるかもね。女三人なら、怖くないし」
私のそのひと言が、なぜか空気を変えた。
その宿には、混浴の露天風呂があった。時間帯によっては誰も来ないこともあるらしい。
ふたりの視線が、私に向けられた。
冗談のはずだったのに、なぜか誰もその提案を打ち消さなかった。
月が高く昇る頃、私たちはそっと浴衣を脱ぎ、バスタオルを巻いて湯船へと向かった。
そのとき、まさか――
三人の大学生が、そこにいるとは思っていなかった。
湯けむりの向こうに、若い男たちの声があった。笑い声、低く弾むような会話。
「どうする?」
涼子が小さく囁いたけれど、亜希子が「戻るのも逆に目立つよ」と意外なほど冷静に言った。
私は、もう逃げられないと悟っていた。
それに、胸の奥では、どこか――期待している自分がいた。
「こんばんは」
不意に、ひとりの青年が私たちに気づき、湯船の中から声をかけてきた。
彼の名前は、拓人。話しかけられて少ししてから自己紹介をしてくれた。
その隣には、陽キャな空気を纏った陸(りく)と、やや物静かな透(とおる)がいた。
学生旅行で来ているという三人の青年たちは、まったく警戒心も嫌味もなく、自然体で話しかけてくれた。
「人妻さんたち、めちゃくちゃ綺麗すぎません?」
そう言ったのは陸だった。
私たちは、最初はたじろぎながらも、やがて冗談を返すようになり、笑い声が露天風呂に響いた。
「こんなに話が弾むなんて思わなかったな」
拓人が、少し照れたように言った。
ふと、彼の視線が私の肩を滑り、そのまま胸元へと降りていくのを感じた。
それだけで、体の奥がひりついた。
誰かに、こんな風に見られるなんて、何年ぶりだろう。
その夜、私たちは――
湯船の中で、なぜか自然に距離を詰めていった。
バスタオル越しの肌が、ふいに指先に触れる。
ぬるりと滑る湯の中で、男の手と女の腰がすれ違い、やがて、交差する。
「……しても、いい?」
拓人の言葉に、私は頷いていた。
「……しても、いい?」
その囁きは、湯気に紛れて、私の耳朶に溶け込んだ。
私の頬にかかる髪を、拓人がそっと払う。湯に濡れたその指先は驚くほど繊細で、若い男に触れられているという事実が、罪にも似た甘さをもたらした。
私は、小さく頷いた。
もう、理性は、とうに脱衣籠に置いてきたままだった。
静かに近づいてきた彼の唇が、肩のあたりに触れた瞬間、脳の奥に火花のような快感が走る。
誰かの視線を感じた気がして横目で見れば――
岩の向こうでは、陸が涼子の腰に手を回し、その唇をじっくりと味わっていた。
彼女はいつもの冷静な顔を捨てて、目を細めている。
そして亜希子も、湯縁に腰を預け、透の手が太腿の内側に這ってくるのを受け入れていた。
音もなく、しかし確かに――六人の心と身体が、同時に、溶けはじめていた。
「……キレイです、全部」
拓人の唇が、私の鎖骨をたどりながらそう呟く。
若さだけではない。
彼の手つきには、どこか女性の身体を尊ぶような丁寧さがあった。
それが、逆に私の奥を疼かせた。
「そんなに見ないで」
小さく呟くと、拓人は笑った。
「だって、ずっと見たかったから」
彼の吐息が、耳にかかる。
それだけで、腹の奥がかすかに痙攣する。
湯のぬるさが、体の輪郭を曖昧にしていく。
バスタオルの下――湯の中で、私の脚が拓人の太腿にからまり、ふと触れた“そこ”の熱と硬さに、私は目を閉じた。
「ここじゃ……」
「大丈夫。奥に、貸切の囲いがあります。……行きませんか?」
頷くしかなかった。
ふたりで岩を出て、宿の敷地内にある湯小屋へ移動した。そこはほんのり灯りが差し込み、完全に仕切られている。誰にも見られない場所。
タオルを外した私を、拓人が見つめる。
「ほんとに、綺麗……人妻なんて、信じられない」
若い瞳が、飢えたように私を映し込んでいた。
それを見た瞬間、私は「妻」であることも、「母」であることもすべて脱ぎ捨てていた。
唇が合わさる。
最初は柔らかく、じんわりと湿った感触だった。けれどすぐに、舌と舌が深く交わり、熱がぐんぐん上がっていく。
背中を這う掌。
乳房を包みこむ熱。
腰に回された腕に引き寄せられるまま、私は足を開いた。
ふたりの肌が重なった時の、異様なほどのなまめかしさ。
押し当てられた熱いものが、私の深部を探るように押し入ってきた瞬間、私は息を呑んだ。
若い――
でも、確かなリズム。
私の中を撫でるように、奥へ奥へと踏み込んでくる。
「あっ……」
喉の奥から、咳のように漏れた声。
こんな声を、自分が出すとは思っていなかった。
湯気の中で交わる肌は、互いの体温を奪い合うように濡れていく。
「麻衣さん、好きです……」
名前を呼ばれて、私は彼の背をつかんだ。
その瞬間、波のような感覚が下腹部を襲い、私の全身がきつく震えた。
まるで体の奥で何かが弾けるように、心のなかの鎖が、いくつも切れていった。
すべてが終わった後、私は拓人の肩に顔を埋めていた。
鼓動の音が重なって、まだどちらがどちらのものか、わからなかった。
しばらくして湯小屋を出ると、岩の向こうから、涼子の笑い声がした。
そして、亜希子が小声で、「……やっぱ、やるわね、あの子」と。
その夜、三人の人妻と、三人の大学生は――
たった一晩の夢を、湯けむりのなかに溶かした。
翌朝、彼らは早朝のバスで帰っていった。
残されたのは、静かな湯けむりと、火照りの残る身体。
そして、女として生きているという、確かな実感だった。
「……しても、いい?」
そのひとことが落ちるまでの間に、私は何度まばたきをしただろう。 湯気の向こうに立つ拓人の瞳は、夜の湯に沈んだ星のようにまっすぐで、どこまでも澄んでいた。
その若さに、潔癖さに、触れたいと思ってしまった時点で、私はもう既に落ちていたのかもしれない。
彼がそっと私の髪をかき上げ、首筋に唇を寄せた瞬間、肌の奥がぴくりと震えた。
「……行こう」
自分でも驚くほど自然に出た声だった。 女としての私が、女でいたいと願った夜。 それは、罪でも背徳でもなく、本能の芯を火で炙るような衝動だった。
私たちは、宿の裏手にある木造りの囲いへと移動した。そこは湯けむりに包まれた、完全にふたりだけの世界。
タオルを滑らせると、夜風に胸元がひやりとする。 でも、その寒さはすぐに、拓人の熱い掌が溶かしてくれた。
「……綺麗すぎて、目を逸らせない」
囁かれるだけで、脚の付け根が疼く。 彼の指先が、乳房の輪郭を確かめるように撫でるたび、乳首が自分の意思を持ったかのように立ち上がる。
「ここ……感じるんですね」 唇を寄せられ、舌先でゆっくりと吸われた瞬間、息が漏れた。
「……そんなの、当たり前でしょう?」
そう言ったつもりだったのに、声は掠れ、かすかに震えていた。 まるで、触れられることで「女に戻っていく自分」を確認しているようだった。
拓人の手は、ゆっくりと腰を撫で、やがて脚の間へと滑り込む。
「こっちも……熱い」
そのひと言とともに、私は奥から溢れ出す潤いを止められなくなった。
「……入れて、いい?」
わかっていた。 その問いに、私が「駄目」と言う理由なんて、もうどこにも残っていなかった。
うなずいた瞬間―― 彼がゆっくりと押し当ててきた。
若い張りと、熱を持った彼が、ゆっくりと私の奥に入り込んでくる。 最初はじんわりと、次第に強く。 湯のぬるさとは違う、生身の温度が、内側から全身を塗り替えていく。
「ん……ふっ、ん……」
自分でも信じられないような吐息が、喉の奥から漏れる。 胸が揺れ、汗と湯気が混ざり合い、二人の肌がしっとりと絡まっていく。
腰を打ちつけるたびに、水音が静かな夜に響く。
「奥、すごい……きつい、でも、気持ちいい……」
拓人の言葉に、胸の奥がきゅうっと締めつけられる。 誰かにこんな風に求められるのは、いつぶりだったろう。
私は彼の腰に脚を絡ませ、さらに深くを求めた。
「麻衣さん、イキそう……っ」
その瞬間、私の意識も白く弾けた。
快楽の波が押し寄せ、体が痙攣しながら波打つ。 奥まで満たされながら、私は、女として「満ちて」いく実感に、目を閉じた。
「……好き……かも」 その声は、果たして彼のものだったのか、私自身のものだったのか。
しばらくして囲いを出たあと、涼子の姿が見えた。 陸と、湯縁に腰をかけ、背中を撫でられている。 その横で、透の肩にもたれている亜希子が、こちらを見てふっと微笑んだ。
誰も言葉を発しなかった。 けれど、その夜、六人がそれぞれに触れたもの―― それは、快楽だけではなかった。
「女であることの悦び」 「歳を重ねた自分の体を、愛してくれる誰かの存在」 「そして、ふとした心のゆらぎを受け入れる柔らかさ」
そのまま部屋に戻ると、三組の視線が交差した。 浴衣を着なおした身体には、まだ濡れた髪の香りと、湯の余熱がしっとりと残っていた。
「……もう、眠れそうにないね」 誰が言ったのかも思い出せない。けれど、その一言で空気がほどけた。
布団が敷かれたままの和室に、六人がゆっくりと腰を下ろし、それぞれの呼吸が重なる。灯りは少しだけ落とされ、月明かりが障子越しに淡く揺れていた。
拓人が、私の肩にそっと手を置いた。 そのまま背中を滑るように撫で、浴衣の帯へと指をすべらせてくる。
私は目を閉じて、わずかにうなずいた。もう、抗う理由なんてどこにもなかった。
静かにほどかれた帯が落ちる音が、やけに艶やかに聞こえた。 視線の端では、陸が涼子の唇を深く吸い、透の手が亜希子の膝をそっと持ち上げている。
そして、ふたたび静かに、誰のものとも知れぬ喘ぎ声が、畳の部屋に濡れたように響きはじめた。
拓人の唇が首筋を這い、乳房を包む手は濡れたように熱く、若さと欲望に満ちていた。 彼のものは、浴衣越しにも明らかに硬く、重く、布の下で私の下腹部を突き上げてくる。
「……こんなに……」 思わず漏らした私の声に、拓人が囁くように言う。
「麻衣さんを見てたら、我慢なんて、できない」
私はそっと浴衣を広げ、脚をゆっくりと開いた。視線とともに、息が絡まる。 彼が腰を寄せると、その巨きな熱が触れただけで、脚が震えた。
「入れるね……」
私が息を呑むのと、彼が押し込んでくるのは同時だった。 太く、硬く、そして深く――拓人のものが私の中を押し分けて満たしていくたび、快感と痛みが混じった甘い痺れに、背中がのけぞる。
「うそ……すごい……奥まで……っ」
彼の動きは若さゆえに貪欲で、けれど乱暴ではなく、私の反応を確かめながら、もっと欲しがるように深く打ち込んでくる。 腰と腰がぶつかるたびに、下腹部が熱く痺れ、乳房が揺れ、汗がしっとりと肌を滑る。
「麻衣さん、もう……我慢できない……」 「来て、奥まで……もっと、奥に……っ」
私の脚が彼の腰にからみ、彼の鼓動が私の奥に直接響いてくるようだった。
その頃、涼子の声がすぐ隣から漏れていた。 「陸くんの……大きすぎて、入らない……のに……気持ちいい……!」 彼女は膝を抱え込むようにして、陸に深く突き上げられていた。陸の腰の動きは獣じみていて、彼女の身体が音を立てて揺れている。
亜希子の方からは、くぐもった喘ぎが聞こえる。 透に四つん這いにされたまま、何度も奥を突き上げられているのだろう。 「透くん、もっと……止まらないで……っ ああっ……」
その夜、六人の身体は、畳の上で絡まり合い、熱と吐息と水音だけが、静かな宿の空間を満たしていた。
拓人が私の中でひときわ深く沈み込んだ瞬間、私は声を上げながら絶頂を迎えた。 「イッ……あぁっ、拓人……っ!」
痙攣する身体の奥に、彼の放つ熱を感じながら、私は全身を彼に委ねた。
――心も、身体も、すべて満たされた夜。
翌朝、彼らは早朝のバスで静かに去っていった。
何もなかったかのように。けれど確かに、私たちの身体には彼らが残した熱があった。
「……忘れられるわけないじゃない」 心の中でそう呟きながら、私は帰りの車窓から、湯気の立つ山を見つめていた。
あれは、一夜の夢。 でも、女の記憶は、身体の奥に深く刻まれる。
――そして今も、ときおり、あの夜を夢に見る。
この体験談で興奮したら必見!!



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