秘密の温泉旅行。女三人、肌のぬくもりにとろけた夜
――「その夜、私たちは身体の奥にしまっていた扉を、互いの指で静かに開けていった」
【第一章】
“まだ触れぬ、秘密の輪郭”
春の終わり。東京の空は霞んで、私の心も似たようにぼやけていた。
その日、仕事帰りの電車の中で詩織から届いたメッセージは、まるで救いだった。
「沙耶、温泉行かない? 山の中の古い離れ、誰にも見つからない場所」
詩織は大学時代からの親友で、クールで少しミステリアスな女性だった。
そしてもうひとり、玲奈。
ふんわりとした雰囲気の中に、時折“熱”を隠し持つような女性。
その三人での旅行は、久しぶりの再会という名の仮面をかぶっていたけれど、
どこか皆、何かを期待していた。
口には出さないままに。
――この夜、私たちは「女であること」を知り直す。
*
詩織の実家の離れは、木の香りと静けさに包まれていた。
源泉の湯が流れる音、風の匂い。
私たちは浴衣に着替え、縁側で缶ビールを飲みながら、他愛ない会話をしていた。
けれど、ふと玲奈が声を落とした。
「ねえ……沙耶って、ずっと触れられてないでしょ」
それは唐突な質問だった。
けれど、なぜか怒りも戸惑いもなかった。
むしろ、見透かされたことへの安堵すらあった。
「…そうね。最後に“ちゃんと”触れられたの、いつか思い出せない」
そのときの空気が、静かに揺れた。
「じゃあ、今夜…触れてみる?」
玲奈の視線は真剣で、どこか甘やかだった。
詩織も何も言わずに、そっと浴衣をほどいた。
月の光が、彼女の鎖骨に沿って落ちる。
白く、やわらかく、でも芯の通ったような肌。
肩から胸元へ、そして腰のくびれへと続くラインは、
まるで彫刻のようで、でも確かに生きている熱を孕んでいた。
私は、その美しさに言葉を失った。
そして静かに、自分の浴衣の紐を解いた。
【第二章】
“沈黙の中で、触れあう指先”
――「濡れた掌が確かめたのは、肌の温度と心の奥行きだった」
湯けむりの向こう、月光がやわらかく射し込む中で、私たちは静かに裸をさらし合っていた。
照れ笑いや冗談も、いまはもう必要ない。
ただ、互いの身体が湯に濡れ、溶け合う音が、
この場所のすべてを物語っていた。
詩織が湯舟の縁に寄りかかるように腰かけ、ゆっくりと脚を組み直す。
その動作だけで、滑らかな腿の内側や、形の良い膝裏の曲線が湯の面に映えた。
湯気に濡れた髪がうなじに張り付き、その奥から小さな汗の粒が肌に沿って流れていく。
目を奪われるとは、こういう瞬間のことなのだと思った。
玲奈の肌は、より白く、そして繊細だった。
胸元のあたりは透けるように淡く、肋骨のラインがほのかに見える。
でもその下にある乳房は、柔らかさと弾力を同時に備えていて、
湯に浮かぶその丸みに、私は静かに見惚れていた。
「沙耶……触って」
玲奈が差し出したその手は、
まるで私の中にしまい込んでいた“遠慮”という殻を壊してしまうような、決意のある温度だった。
そっと手を伸ばし、玲奈の胸に触れる。
ゆっくりと指の腹で円を描くと、乳房がふわりと揺れて、
乳首がきゅっと縮んだ。
「……あ」
玲奈が吐息を漏らす。
声にすらならないその反応に、
私の身体の芯に、じわりと熱がともる。
背後から、詩織の身体が私に重なった。
肌が肌に触れた瞬間、
まるで微細な電流が背筋を這うような感覚が走った。
髪が肩に触れ、そして、唇がそっと首筋に落ちてくる。
「沙耶……あなたの匂い、好き」
低く、吐き出すようなその囁きに、
私の膝が勝手にふるふると震え始める。
玲奈が私の太腿を撫でながら、視線を合わせてきた。
「ねえ、こっち向いて。……もっと感じる顔、見たいから」
私はもう、抗う術を忘れていた。
*
部屋に戻ると、玲奈が持ってきた小さなポーチを、丁寧に床に置いた。
そして、そこから取り出されたのは――
想像していた以上に繊細で、静謐な美しさを備えた器具たちだった。
マットな黒のローター。
柔らかくしなる、白磁のようなバイブ。
そして、アナル専用のビーズ型トイが、真珠のように並んでいる。
「全部、ちゃんと使ったことあるの」
玲奈は、ふふっと小さく笑いながら、私の耳元に囁いた。
「沙耶のこと、気持ちよくしてあげたくて」
湯気に包まれた肌のまま、私はそっと脚を開かされた。
羞恥よりも、それを受け入れる覚悟のほうが、先に来ていた。
玲奈がまず手にしたのは、小さな吸引ローターだった。
私の花弁にそっと近づけ、触れるか触れないかの距離で
先端を中心にあてがったとき――
「んっ…!」
唇を押さえた。
でも、声は指の隙間から漏れてしまった。
吸い上げるような微細な振動が、
私の中の“感じる部分”だけを的確に捕らえていた。
「もう…これ、すご…」
玲奈が微笑む。
「沙耶、可愛い……その顔、ずっと見ていたい」
詩織が今度は私の胸元に唇を落とす。
舌先が乳首の周囲を舐め、時折きゅっと甘噛みする。
そのたびに、快感が中心から放射状に広がり、
私は腰を浮かせてしまいそうになるのを、必死に耐えた。
「まだあるよ……沙耶が、もっと奥で感じられるように」
玲奈の声と共に、冷たいローションが背後に垂らされた。
ひやりとした液体が割れ目の奥、
その少し下の“未知の扉”を濡らしていく。
そして、ひとつひとつが少しずつ大きくなるビーズ型トイが、
ゆっくりと、私の後ろを開いていった。
「んぁっ…やだ…っ」
未知の感覚に声が震える。
でも、拒絶ではなかった。
圧迫感と快感が共存する、危うい恍惚。
「ね、大丈夫。気持ちいいでしょ?」
詩織の声に導かれ、
私はもう、すべてを委ねていた。
吸引ローターがさらに速度を上げ、
詩織の舌が私の胸元で旋回し、
背後からは、玲奈の指がアナルトイを出し入れしてくる。
多方向からの愛撫に、
身体のどこに快感が生まれているのか、
もはや区別がつかない。
何度か震えるたびに、視界が白くなり、
そのたびに誰かの名を呼びかけていた気がする。
そしてついに、ひときわ深く震えた瞬間――
私は声にならない絶頂を迎え、
二人の身体にしがみついたまま、
すべての力を抜いて崩れ落ちた。
胸元にはキスマーク、
脚の付け根には余韻の残る濡れが、
確かに、私の変化を物語っていた。
私はもう、あの夜の前の私には戻れなかった。
【第三章】
“朝焼けと、心に残った指の感触”
明け方。
布団の中、三人で静かに寝転んでいた。
肌と肌が触れ合う。
太陽の光が差し込んできて、
詩織の睫毛がきらきらと光っていた。
昨夜、彼女が私にしてくれたこと。
私が玲奈に触れたときの、あの柔らかさと熱。
すべてがまだ、私の身体に残っていた。
「…また来ようね」
玲奈がぽつりと呟く。
私は小さくうなずいた。
この場所だけが、私たちが「ほんとうの女」に戻れる場所。
欲望と寂しさ、そして優しさを、
隠さずに出し合える場所だった。
私たちは目を合わせた。
なにも言わなくても、肌が覚えていた。
愛撫されたときの熱、唇の濡れた感触、
奥に沈んだ快感と、
それを受け入れた自分の強さ。
この旅は、終わりではなかった。
私たちの関係が変わった夜として、
きっとどこかでまた、同じように熱くなる。
心まで裸にしてくれた、
春の終わりの温泉の夜。
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