【第1章 視線の温度と、指の誘惑】
26歳。東京・恵比寿の広告代理店で働く私は、社内でも“地味だけど真面目”という印象のまま過ごしていた。派手な化粧も恋も知らず、仕事だけを武器にしていたけれど、なぜか29歳の既婚男性・亮(りょう)さんだけは、そんな私を面白がるように近づいてきた。
「美香ちゃんって、男に抱かれたこと、ないでしょ」
その日、二人きりになった営業帰りのタクシーで、唐突に囁かれた言葉に私は思わず息を止めた。笑ってごまかそうとする私に、彼は視線を逸らさず、指先で私の太ももをなぞる。
その指は、熱を持っていた。
そして――彼は私の首筋に唇を這わせながら、柔らかくも有無を言わせぬ強引さで、私の“初めて”を奪った。
シーツの上で何度も名前を呼ばれながら、私は身体の奥から崩れていくような感覚に呑まれていった。怖かったはずなのに、痛みのあとに続いた快感の波は、私の“なにか”を静かに壊していった。
【第2章 私という存在が、誰かの玩具になっていく】
彼との関係は秘密のまま、毎週のように続いていた。
「今日はシャツだけ着て、パンツは履かずに来い」
「四つん這いになって、自分でスカートめくってみな」
言葉の一つひとつに羞恥が混じり、最初は拒みながらも、いつの間にか従ってしまう私がいた。自分が汚れていくような感覚すら、なぜか快楽に変わっていく。背徳感と悦びが交差し、心がぐちゃぐちゃになっていく。
ある夜、彼の部屋で、私は初めて“二つの口”を同時に使うことを命じられた。
「お前、俺のだけじゃ足りなくなってるよな?」
言葉責めが私の奥深くを貫く。なにも考えられなくなるほど感じてしまい、自分でも信じられない声を上げながら、身体はさらに貪欲に、彼を求めてしまっていた。
しかし、その夜。彼は私の髪を撫でながら、ぽつりと告げた。
「次はセンパイにも紹介してやる。……お前のこと、すげーいいオンナだって話してある」
「……え? どういう……こと?」
彼は私の奥からゆっくりと自分を抜こうとする。その動きに、思わず腰を追いかけるように揺らしてしまう自分が、恐ろしかった。
「やだ……抜かないで……! やだぁ……!」
「じゃあ言えよ。次、3人でするって、ちゃんと」
羞恥と恐怖と興奮とが混じり合い、私は震える唇で、彼に応えてしまった。
「……する……私、3人で……する、から……」
【第3章 淫れて、愛されて、壊されて】
“3人で”という言葉を口にしてから、私は変わってしまった。
身体の奥のどこかが疼き、毎晩、自分の手で慰めるようになった。バイブの中で彼の残り香を感じながら、口では“いや”と呟きつつ、身体はその日を待っていた。
その日。私は、彼とその“センパイ”と、3人でホテルにいた。
鏡張りの部屋で、私は裸にされ、二人の男の視線を一身に浴びていた。羞恥に震えながら、唇で彼を咥え、身体の奥にはもうひとりの男が、ゆっくりと侵入してくる。
「うあっ……あ、んっ……そんな、二人同時なんて……」
でも、もう拒めなかった。
快感が私の奥から波のように押し寄せ、身体は弓のように反り返り、脳の奥が痺れていく。
自分が“女”であることを、これほどまでに意識させられた夜はなかった。ふたりの手が私の髪を撫で、腰を抱き、唇を奪っていく。
そして、絶頂のあと。
私は彼の胸のなかで、ぽつりと呟いた。
「……わたし、もう、戻れないね……」
すると、彼は笑いながら、こう言った。
「それでいい。お前は、誰よりもエロくて、誰よりも可愛いよ」
その言葉に、涙が零れた。
嬉しくて、悲しくて、壊れていくようで――でも、愛されていると錯覚してしまうほど、私は深く溺れていた。
【余韻のあとに】
それが愛かどうかなんて、今の私にはわからない。
でも確かに私は、女として“開かれてしまった”。
知らなかった自分の身体、知らなかった快楽のかたち。
誰かに抱かれるたびに、私は少しずつ、違う自分になっていく。
それは、汚れではなく、目覚めなのかもしれない。



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