【第1部】濡れ予兆と沈黙の間に忍び寄る不倫コーチの視線
夫に抱かれることが少なくなって久しい。日曜の朝、子供の運動クラブで彼──コーチと呼ぶには若すぎず、男としての厚みを持つ人──がふと視線を合わせてきた。グラウンドの陽射しが額に滲む汗を際立たせ、その瞳だけが私を射抜くように留まる。
「最近、疲れてない?」その声は、聞き慣れたはずなのに、喉の奥に甘く残る湿度を孕んでいた。
ただの挨拶として流せばよかったのに、胸の奥で何かが溶け始めているのが分かる。
夕方、車で送ると言われ、助手席に乗り込む。狭い車内、シート越しに伝わる彼の体温。手が触れたわけでもないのに、内腿がわずかに熱を帯びる。
「ご主人、最近クラブには?」
その質問が、私の奥に沈んでいた孤独を揺らす。私は曖昧に笑い、窓の外を見つめたまま、彼の横顔の輪郭を目でなぞっていた。
その沈黙の間に、濡れはすでに始まっていた。
【第2部】危険日の囁きと奥を満たす愛撫の罪
彼の部屋に入った瞬間、閉ざされた空気がゆっくりと肌に絡みつく。
「今日は…危ないの」
私の声は拒絶ではなく、許しを乞う響きになっていた。
彼は答えず、指先で肩紐を落とす。その軌跡を追うたび、肌は彼の体温に染まり、呼吸が浅くなる。
唇が触れるたび、背中の奥から脚の付け根まで、しっとりと熱が這い降りる。
長い前戯──首筋から胸元、下腹部へと移る舌の湿り気が、理性の膜を薄く削いでいく。
彼の太さが押し寄せた瞬間、奥がきゅっと自ら掴みにいく感覚に、目を閉じて声を噛み殺した。
「今日は…中は…」言いかけた言葉は、彼の低い囁きで溶かされる。「任せて」
体位が変わるたび、奥の違う場所が撫でられ、私の中の“危ない”という感覚が“欲しい”に変わっていく。
シーツを握り締めながら、罪と悦びの境目が、もう見えなくなっていた。
【第3部】理性崩壊の奥で受け入れた温度と別れの予感
予定日を過ぎても、生理は来ない。
それでも彼に会えば、求められるまま足を開いてしまう。
「本当に…今日は危ない」
そう言った私の腰を、彼は静かに引き寄せた。
入り口を押し広げる感触と同時に、脊髄に沿って熱が駆け上がる。
「言って…」私の声はもう震えていた。「愛してるって」
「愛してる」耳元で熱く吐きかけられたその瞬間、奥に脈打つ温かな奔流を、私はしがみつくように受け止めた。
その後、病院で告げられた言葉──「おめでとうございます」。
帰り道、笑みを浮かべながらも、腹の奥の重みと、夫ではない温度の記憶が私を満たしていた。
別れを選ぶしかないと分かっていても、この一年で刻まれた濡れの構造は、もう消えない。
シーツに残る彼の香りも、奥深くで脈打った温もりも、すべてが私の中で静かに疼き続けている。



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