あの都会の匂いが、今も肺の奥にこびりついている気がする。 乾いたアスファルトの匂い、人の視線、見えない評価の網に絡めとられる感覚。毎朝同じ服、同じ会話、同じ電車。
21歳の夏。私はそのすべてから逃げるように、実家に戻った。
彼に別れを告げられて半年。「重い」「女として見られない」「田舎くさい」——あの人の言葉は、刺のように今も身体のどこかで疼いていた。
その日、私は無意識に歩き出していた。目指したのは、子どもの頃の秘密の場所。 山奥にある小さな川。誰も来ない、地図にも名前がない場所。 木々が空を塞ぎ、光が水に溶け込んでゆくような静寂の中。
草を分け、裸足になり、私はそこに立った。蝉の声さえ遠くに感じる、特別な音のない空間だった。
川の水は、記憶よりも澄んでいた。足を入れると、肌がきゅっと引き締まり、次にじんわりと熱が帯びてくる。
そのまま、私はTシャツの裾に手をかけた。
誰もいない。 誰にも、見られない。 だからこそ、私は脱いだ。
ブラを外した瞬間、乳首が風を受けて立った。 パンツをゆっくり下ろすと、太腿を伝う空気が甘く肌を撫でた。 裸のまま川へと足を踏み入れる。水がふくらはぎから腿へ、そして奥へ。
「……ん」
熱と冷たさが交差し、喉の奥から声が漏れる。 誰もいないはずなのに、その声が空に染みていくようだった。
私は中央にある平らな岩の上にそっと座った。 陽に熱された石は、まるで誰かの体温のようだった。
足を少し開き、手が自然と下腹部へと伸びていく。 水と風で火照ったそこは、もうすでにぬるく、濡れていた。
最初の触れ合いは指先だけだった。 けれど、そのまま指が沈むように入っていく。
「ふっ……ん、あ……っ」
快楽は、一気に背骨を駆け上がった。 リズムを刻むたび、熱が広がり、濡れた音が耳元を包む。
乳房を撫で、親指が乳首を擦る。 ぴん、と跳ねた瞬間、全身が脈打った。 指がもっと奥へ欲しくて、私は腰を浮かせた。
そのとき、気配を感じた。
川下。岩陰から、ひとりの男が立っていた。 高校生くらい?黒髪が風に揺れ、焦げた肌が目を引いた。
彼は立ち尽くしていた。目だけが、まっすぐ私を見ていた。
私も、逃げなかった。 隠そうともしなかった。 むしろ、その視線を、ずっと欲していたのだと思った。
濡れた髪をかきあげながら、私はゆっくりと立ち上がる。 裸のまま、岩の上で彼に向かって歩み出る。 水が股間を撫で、奥の熱が再び目を覚ます。
「……見てた?」
「……ごめん。でも、綺麗だった」
私は笑った。 羞恥でもなく、挑発でもない。 ただ、すべてを赦される気がした。
彼が近づき、そっと私に触れた。 頬、肩、そして胸。
掌が私を包み、唇が肌に触れた瞬間、私は小さく震えた。
——私という女が、いま、ここにいる。
唇と唇が重なり、舌と舌が絡み合う。 その熱が、下腹部へ、奥へと火を点けていく。
指が私の中へと入り、ぬめりと迎え入れる。 彼の手は、迷わず私の欲望をなぞった。
「もっと、深く……来て……っ」
その言葉に、彼は私を抱え、岩の上に寝かせた。 太陽の下で、私は完全にさらされ、そして包まれていた。
彼の指が、花びらを割くように私の奥へと沈んでいく。 第二関節、そしてゆっくりと根元まで、 ぬめる感触が互いの熱を伝え合い、私の身体を芯から震わせた。
「奥、あたって……だめ……」
言葉とは裏腹に、私は腰を浮かせて彼を求めていた。 指がかき回すたびに、甘くくちゅりとした音が辺りに広がる。
彼の唇が乳首を捉え、舌先でころがす。 そこから繋がる神経が奥と共鳴し、快感が波のように繰り返す。
私は彼の名を知らないまま、彼を受け入れていた。 彼の指が抜かれ、今度は舌がその奥を舐めるように降りてくる。
「や……そんなとこ、舐めたら……っ」
言葉の途中で、私は声を噛み殺した。 彼の舌が花弁を開き、内側をひとすじなぞっただけで、背筋が跳ねた。
何度も、何度も、彼はそこを舐めた。 溺れるような感覚に、私は脚を開いたまま、何もできなくなる。 腰が勝手に彼を求め、唇からはだらしのない吐息が漏れていく。
「気持ちよすぎて……もう、おかしくなりそう……っ」
そのまま私は、彼の肩を引き寄せ、耳元に囁いた。
「……入れて……あなたの、欲しいの……」
彼はゆっくりと、私の上に身体を重ねた。 その重みが愛しくて、脚を絡めながら奥へ導く。
彼のものが触れた瞬間、私は反射的に身体を強張らせた。 けれど、そのまま、ゆっくりと、深く……溶け合っていく。
「んっ……あ……っ、熱い……」
擦れる感触、満たされていく奥の熱。 波が押し寄せては引くように、私は彼に合わせて腰を揺らした。
太陽の下、風に晒されたまま、私は女の形をして震えていた。 彼が奥を突くたび、快感が爆ぜ、全身がきしむように反応する。
「すごい……締めつけて……」
彼の声が震えている。 私ももう、どこにいるのかわからなかった。 頭の中が白くなる。何度も果てた。
「もっと……動いて……壊して……」
最後の波が来たとき、私は喉の奥から悲鳴のような声を上げ、 彼の背中に爪を立てて、すべてを受け入れた。
そして私は、都会では決して知らなかった「女」という感覚に、 はじめて、身を溶かしていった。


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