第一章:
「誰かに抱かれたいわけじゃない。でも……」
──六本木の夜に溶けていく、私という欲望
都内・港区、六本木。
仕事帰り、暗くなりかけた街の光の中に、私はひとり立ち尽くしていた。35歳。IT系広報として人前に立ち続ける日々。
だけど最近、自分の“女としての温度”が、すっかり消えかけていることに気づいてしまった。
元恋人との別れから2年。肌に人肌を覚えていない。
でも、出会いを求めているわけではなかった。ただ──「誰かに、私をほどいてほしい」
そんな思いが、時々、喉の奥に鈍くつかえるようになっていた。
その日、ふとインスタで見かけた“女性専用プライベートオイルサロン”。
「深層リンパ × 女性ホルモン × 官能」──そんなコピーに、心がわずかに脈打った。
予約を入れたのは金曜の夜。
「完全個室・完全予約制。セラピストは男性、施術は女性本来の官能性を尊重します」
少し背徳的な響きに、私は逆に安心していたのかもしれない。
エレベーターを上がった静かな一室。
出迎えてくれたのは、年上の男性──佐伯さん、42歳。細身で均整のとれた体、穏やかで澄んだ声。
スーツの上からでも分かる、静かな自信と節度。その“清潔な男らしさ”に、私は自然と呼吸を整えていた。
「お着替えは、こちらでどうぞ」
ふわりと渡されたのは、薄いガーゼのようなラップローブ。
着替えると、体の線があらわになる。露出というより、“肌が感じやすくなる”──そんな装いだった。
(これから何が起きるの……?)
不安と期待が入り混じる中、私は施術ベッドに横たわった。
そして──佐伯さんの“指”が、私の首筋に、静かに、触れた。
第二章:
「触れられるたび、奥の私が目覚めていく」
──抗えない悦びに、肌が、心が、ほどけていく
最初のタッチは、首筋から肩甲骨へ。
オイルが肌に染み込むように広がって、体温がじんわりと上がっていく。
深く吐く息に、佐伯さんの声が重なった。
「お疲れ、溜まってますね……」
そのひと言が、なぜか奥に沁みて、涙が出そうになった。
私はただ、頷いた。
次第に、指先が鎖骨をなぞる。胸の上部に差し掛かったとき──
ほんの一瞬、乳房の縁に触れた。無意識に、呼吸が止まる。
「ここ、かなり張ってますね」
当たり障りのない言葉の中に、微細な熱が宿る。
私はうつ伏せから仰向けに返された。
胸元がわずかに開いたラップローブ。ガウンの間から、乳房のふくらみがこぼれているのが分かった。
オイルが、左胸の上を滑る。
手のひらが、重みを感じるように包み込んだ。
そして──指の腹で、頂点に触れた。
「……ッ」
声にならない吐息が漏れる。
まるで、胸の奥で脈打つ感覚が、そのまま“奥”へと伝わっていくようだった。
指先が、そこを擦る。揉む。
一度、二度──そして、円を描くように。
感覚の焦点が、全身から乳首に向かって集まってくる。
「……敏感になってますね」
彼の声が、低く震えた。
私はもう、腰が浮いていた。
理性のスイッチが、切れていく音がした。
脚をそっと開かれる。
太ももの内側に、指先が忍び込む。オイルがそこを濡らしていく。
息が詰まり、膣の奥が、痙攣するように疼いた。
そして──彼の指が、私の中心に触れた。
服越しではない、“内側”に、直接。
「……感じてる、んですね」
私は、首を小さく縦に振った。羞恥よりも先に、快感が上回っていた。
第三章:
「女として、もう一度、生きるために」
──絶頂のあとで見えた、私の本音
果てたあとの私の肌には、汗とオイルと余韻が混ざっていた。
全身の力が抜けて、シーツに沈み込む。
「……久しぶり、でしたか?」
佐伯さんのその問いに、私は無言で頷いた。
身体の奥深くが、じんじんと脈打っている。胸の先端は、まだかすかに疼き、呼吸のたびに敏感に反応していた。
「女としてのスイッチ、入れて差し上げましたよ」
彼は、そう言って笑った。
笑う資格なんて、なかったかもしれない。
けれど、私はそのとき、久しぶりに“赦された”気がした。
仕事でも家庭でも、誰からも触れられなかった私の“内側”に、彼はただ、温度を戻してくれたのだ。
その夜以来、私は毎週金曜、六本木のその部屋に通うようになった。
施術という名の密やかな逢瀬。
乳首が触れられるたび、腰が反るたび、私は“女としての私”を再確認するように、震えていた。
そしていま、私はようやく気づく。
抱かれることで、誰かのものになるんじゃない。
“私のままで感じていい”と、誰かに教えられることで、私はようやく、私自身に戻れたのだ。



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