秘密の映画館｜大人の純愛が交差する、運命の夜　その2

4. 再び、映画館で

それからしばらくの時が流れた。

あの夜以来、私は彼と職場で顔を合わせても、何事もなかったかのように振る舞っていた。

けれど、ふとした瞬間、彼の視線を感じる。

その一瞬に交わる眼差しだけで、あの夜の熱が蘇る。

そして、ある日——

「今度の休みに夫と映画を観に行くの。」

何気なく口にした言葉に、彼がどう反応したか、正直覚えていない。

けれど、その後、彼が映画館にいるのを見つけたとき、すべてを悟った。

5. 交錯する影

館内に足を踏み入れると、夫がチケットを手に待っていた。

「楽しみだな。」

穏やかな声。

私は微笑みを返し、並んで劇場の中へと進む。

静かに席に着くと、すぐ隣に誰かが座る気配がした。

息を呑む。

彼。

偶然を装いながら、彼は私たちの隣の席に座った。

一瞬だけ視線が交わる。

私も彼も、何もなかったかのように前を向いた。

知らないふり。

映画が始まる。

6. 触れぬ熱

スクリーンには、愛と裏切りの物語。

交わる視線、秘められた情熱。

指先が、わずかに動きそうになる。

ほんの数センチの距離。

この手を伸ばせば、彼に触れられる。

だが、それは叶わない。

隣には夫がいる。

それでも——

映画が進むにつれ、熱が溶け合っていく。

偶然を装い、指先が触れる。

私は微かに震えた。

彼の指が、そっと絡む。

まるで確かめるように、ゆっくりと。

夫はスクリーンに集中している。

私たちだけの世界が、密やかに紡がれていく。

劇場の暗闇が、すべてを包み込む。

呼吸が重なり、熱が伝わる。

理性が揺らぎ、すべてが崩れそうになる。

心の奥にある、ひび割れた理性が、触れた指先から音を立てて崩れていく。

夫の隣で、私は何をしているのだろう。

この手を引けばいいだけなのに、なぜ私は彼の指を絡めるのだろう。

「こんなこと……もう終わりにしなきゃ……。」

脳裏に言い聞かせながらも、身体は正直だった。

指先に宿る熱が、まるで血潮のように脈打つ。

スクリーンに映る愛と裏切りの物語が、まるで私の現実を映しているようで、胸の奥が苦しくなる。

夫の隣で、私は彼と結ばれていく。

触れ合う指先だけで、互いの想いを確かめるように。

「もう……戻れない……。」

薄暗い劇場の中で、彼だけが知る震え。

私が許してしまえば、すべてが崩れる。

それでも、この手を離すことができない。

心が叫んでいる。

愛してはいけない。けれど、私は彼を求めている。