満員電車で密着するたびに… 教師と生徒、抗えない本能

1. 満員の車両、交わる視線

朝の通勤ラッシュ、私は紗季先生、33歳。夫と並んで満員電車に乗り込んだ。

身動きすら取れない車両の中、私は吊革を握る指に力を込める。この日は柔らかく揺れるフレアスカートを履いていた。

ふと、誰かの視線を感じた。

見上げると、そこには教え子の蓮がいた。

彼はサッカー部のキャプテンで、学業成績も優秀。爽やかな笑顔と、どこか影のある瞳が女子生徒たちを惹きつけ、いつも彼の周りには憧れの視線が集まっていた。

そんな彼が、今は驚いたように私と夫を交互に見つめている。

「紗季先生……偶然ですね。」

「……本当に。」

私の声は静かだったが、心臓の鼓動が不規則に乱れるのを感じた。

なぜ、こんなにも彼が気になるのか。

私は密かに彼のことが好きだった。ファンの一人として、遠くから彼を見つめることしかできなかった。それなのに、今——こんなにも近くにいる。

彼の視線は、一瞬夫に向けられ、そして再び私を捕えた。

その時——

急停止。

電車が突如ブレーキをかけ、車内が大きく揺れた。

「っ……！」

私はバランスを崩し、支えを求めて手を伸ばす。

掴んだのは——蓮の腕。

そして、彼の手が私の腰を抱き寄せた。

「紗季先生、大丈夫ですか？」

低く、耳元に落ちる声。

あまりにも近い。

彼の体温が、私の薄いブラウス越しに伝わる。

この満員の空間で、ただ二人の距離だけが異常に近かった。

「ありがとう……。」

震える声で答えた瞬間、彼の指がわずかに動いた。

それは偶然なのか、それとも……。

2. 逃げられない密着

夫は目の前でスマホを見つめ、まったく気づいていない。

電車が揺れるたび、私は蓮の胸に押し付けられる。

意識しないようにしても、彼の熱がじわじわと伝わってくる。

「……紗季先生。」

掠れた声が、まるで挑発するように耳をくすぐる。

見上げると、蓮の瞳が揺れていた。

「……こんなに近いの、初めてですね。」

その囁きに、喉が乾く。

車内のざわめきが遠のく。

彼の指が、かすかに私の腰を押し留めた。

「……動くと、もっと……。」

息を呑む。

何かを言いかけたその瞬間、電車が再び大きく揺れた。

——そして、私は彼の胸に完全に倒れ込んだ。

彼の鼓動が、すぐ耳元で感じられるほど近い。

夫のすぐ傍で、理性が崩れそうになる。

「紗季先生……。」

微かな囁きが、首筋をかすめる。

電車はまだ動かない。

止まったまま、逃げ場のない時間が続いていた。

誰にも悟られないように、私たちの距離だけがさらに近づいていく——。

3. 触れてしまった指先

車内の空気は重く、湿気を含んだ熱が皮膚にまとわりつく。

人々のざわめきが遠くに聞こえ、押し寄せる波のように繰り返される。

窓の向こうを流れる景色は歪んで見えた。

混雑した車両の中、息苦しさを感じながらも、私はただ前を向いていた。

それなのに、意識は——

再び電車が揺れる。

その拍子に、私の手が蓮の指先と触れた。

ほんの一瞬。

しかし、その一瞬の熱が、私の中で炎を灯す。

彼は逃げなかった。

むしろ、そのままそっと私の手を包み込むように指を絡めた。

「……紗季先生。」

かすかな吐息が、私の耳に届く。

鼓動が速くなる。

夫はすぐ前にいる。

それなのに、この距離、この熱。

理性の糸が、細く脆く揺れている。

彼の指が私の指をなぞるたび、体の奥からぞくりとした感覚が広がる。

「……蓮……。」

名前を呼ぶ声が、かすかに震えた。

彼の指がわずかに力を込める。

唇が渇く。

車両の振動が全身を揺らし、彼の体温が私の皮膚に沁み込んでいく。

「こんなに近いと……気づかれそうですね。」

掠れた声。

言葉の意味を理解する前に、彼の指が私の指を絡めたまま、ほんのわずかに動いた。

私の心が大きく跳ねる。

彼の指先が微かに震えているのがわかる。

そして、それを求めてしまう私がいる。

混雑した電車の中、人々の気配が遠のいていく。

意識しないようにしても、体が敏感に反応する。

彼の指が、まるで試すように私の指先をなぞる。

ゆっくりと、慎重に、それでも確実に。

時間がゆっくりと引き延ばされる。

遠くで、車内アナウンスが響く。

「この電車は信号確認のため、しばらく停車いたします。」

止まった車両。

空気が閉じ込められ、時間も凍りついたように感じた。

人々の小さな不満の声、誰かのため息、衣擦れの音が混じり合いながら、二人の距離だけが異様に研ぎ澄まされる。

「……先生、こんなに近くにいるのに……何も言わないんですね。」

彼の囁きが耳元をかすめ、背筋に戦慄が走る。

電車が揺れるたび、フレアスカートの裾が微かに揺れ、彼の足と触れ合う。

理性を繋ぎ止めるために。

「……やめなきゃ……。」

その言葉は、自分に向けたものだった。

だが、彼は何も言わない。

ただ私の指をそっと絡める。

夫がすぐそばにいる。

なのに、抗えない。

彼の手が、熱を持ったまま私の手のひらを撫でた。

軽く、探るように。

肌が、彼の熱を覚えてしまう。

「……紗季先生……。」

この声を聞くだけで、心が揺らぐ。

「もし……誰かに見られたら……？」

言葉にすることで、少しでも抑えようとした。

だが、その瞬間、彼の視線が強くなる。

「見られなければ……いいんじゃないですか？」

鼓動が跳ね上がる。

夫がわずかに体勢を変える。

ほんの数センチ。

それだけで、すべてが壊れそうなほどの緊張が走る。

冷静にならなければ。

だが、冷静でいられない。

彼の指が、そっと私の陰核をなぞる。

手の甲に感じる熱が、次第に高まっていく。

電車の揺れに合わせ、肩が触れ合う。

息を詰める。

静寂が広がる。

周囲の音が遠のき、心臓の鼓動だけが耳の奥に響く。

指先の感覚が鋭敏になり、かすかな震えが伝わってくる。

鼓動のリズムが乱れ、時間の感覚が曖昧になっていく。

「……紗季先生……。」

彼の囁きが、時間をさらに引き伸ばす。

どこか遠くで、電車のドアが開く音がした。

わずかに流れ込んできた外気が、火照った肌を撫でる。

けれど、それでもこの熱は消えない。

心が、身体が、どこまでも熱くなっていく。

彼の手がわずかに強くなり、指先が軽く動く。

電車が再び揺れ、私は蓮の肩にわずかに体重を預けた。

わずかな時間が永遠に感じられる。

心臓が跳ね、息が詰まる。

外の世界が遠ざかる。

誰かの視線を感じる。

振り返るわけにはいかない。

ただ、この瞬間に溺れていたい。

車内アナウンスが鳴り響く。

「間もなく発車いたします。」

時間が動き出す。

彼の指が、ゆっくりと私の指を離した。

現実に引き戻される。

けれど、体にはまだ彼の熱が残っていた。

何もなかったかのように、私は前を向く。

なのに、心臓の鼓動は、まだ落ち着いてはくれなかった。