家政婦の秘密｜禁断の愛と裏切りの探偵

甘美なる欺瞞——家政婦の秘密

1. 交わる運命

扉の向こうに広がるのは、別世界だった。

桐山邸の重厚な扉を押し開けるたび、私は現実のしがらみを忘れる。

私は家政婦としてこの家で働いていた。

夫には「仕事」と伝えていた。

けれど、本当は違う。

この家の主人である桐山と私は、甘く、危うい関係に溺れていた。

「遅かったね。」

彼の声が低く響く。

「……すぐに戻るつもりだったの。」

「戻れるのか？」

私の腰に回る腕。

その瞬間、理性はゆっくりとほどけていく。

私は彼の前では、ただの女だった。

「……あなたが離してくれないでしょう？」

「そうだね。もう戻れない。」

彼の指が背をなぞり、熱が波紋のように広がる。

私は静かに瞳を伏せる。

まるで、夜の海に溶けるように——。

2. 禁じられた果実

「君はもう、引き返せないだろう？」

桐山の指が、私の頬をそっとなぞる。

冷えた指先が私の肌に触れ、そこに熱を残す。

「……こんなこと、いけないのに……。」

「いけないからこそ、美しいんだよ。」

彼の囁きが胸の奥に沈み、私は静かに瞳を伏せた。

夫のために働くはずだったこの家は、いつしか逃げ場へと変わっていた。

私は日々の雑務をこなしながらも、彼の視線を感じずにはいられなかった。

掃除をするふりをしながら、彼の書斎のドア越しに微かな緊張を覚えた。

そして、その日が訪れた。

桐山の手が腰を包む。

彼の腕に導かれるように、私はゆっくりと沈み込んでいく。

まるで夜の海に抱かれるように、彼の腕の中で身を預ける。

私の指が彼の肩をつかむ。

彼の腕が私を抱き寄せ、視線が絡まる。

夜の静寂が、私たちの熱を際立たせる。

私は彼の上に導かれ、揺れながら波の中へ沈んでいく。

まるで舞うように、まるで波に呑まれるように。

彼の手が背を支え、私の動きに応える。

「……もっと……あなたを感じたい……。」

「……美佐子……。」

名前を呼ばれるたびに、体の奥に熱が込み上げる。

まるで波が満ちていくように、私は彼の深い熱に飲み込まれていった——。

夜の静寂が、私たちの熱を包み込みながら、ゆっくりと沈んでいく。

まるで穏やかな湖に最後の波紋が広がるように——。

3. 秘密の情事

桐山は、妻が外出するとすぐに私を求めた。

家政婦としての役割を果たすふりをしながらも、私の心はすでに彼に囚われていた。

扉が閉まる音が響いた瞬間、彼の腕が私を捕らえた。

「待たせたね。」

低く囁く声が、肌を撫でるように震える。

「あなた……焦りすぎよ。」

私の言葉はかすれ、しかし抗う気持ちはなかった。

「君も同じだろう？」

彼の指が私の背を滑り、薄い布越しに熱を帯びる。

私は、彼の腕の中で静かに震えた。

家政婦としてこの家にいることが、どこか滑稽にさえ思えた。

桐山は私のスレンダーな体を褒め、じっくりと観察するのが好きだった。

彼の指が、まるで彫刻家が大理石を撫でるように私のラインをなぞる。

「君の体は芸術品のようだ……。」

熱を帯びた視線が私の隅々を巡る。

「そんなふうに……見ないで……。」

恥じらいながらも、彼の目から逃げられない。

「美しいものを愛でるのは、当然だろう？」

桐山の手が私の腰に触れ、指がそっとなぞる。

彼の目には欲望と陶酔が滲んでいた。

私たちは炎のように燃え、堕ちていく。

求め合うたびに、甘美な罰を受けるように。

この関係が許されないことを知りながらも、私は彼に溶けていくしかなかった——。

4. 庭師の神崎

彼が庭師として雇われたのは、ほんの数週間前のことだった。

桐山夫人が新しく採用した男——神崎。

長身で洗練された立ち姿、まるで彫刻のような整った顔立ち。

庭仕事に似つかわしくない端正な指先。

彼の黒い瞳がふと私を捉えたとき、その視線に奇妙な既視感を覚えた。

彼はただの庭師ではない。

何かを知っている。

何かを見透かしている——そんな不気味なほどの観察眼。

「奥様……いえ、美佐子さん。」

低く響く声が、夜風の中で異様なほど鮮明に届いた。

振り返ると、神崎がそこにいた。

月明かりが彼の整った顔を照らし、漆黒の瞳が私をまっすぐに見つめる。

「あなたに伝えたいことがあります。」

彼の瞳が揺れながらも強く、私を逃がさない。

「……何？」

「あなたを愛してしまった。」

その言葉が、静寂の中に溶けていく。

私は息を呑んだ。

「冗談……やめて。」

「冗談じゃない。」

彼の声は低く、熱を帯びていた。

「君を見ているうちに、感情が抑えられなくなった。」

彼の手がそっと私の指先を撫でる。

その瞬間、桐山とは違う温もりに、私の心が静かに揺らいだ。

彼の指が私の頬をなぞる。

「君の体は……完璧だ。」

彼の視線が私の全身をじっくりとなぞる。

「彫刻のようなライン、しなやかで美しい……こんなにも魅力的な女を、男が放っておくわけがない。」

彼の囁きに、胸の奥が疼く。

5. 交わる影、堕ちる夜

神崎が私を抱いたのは、愛のためではなかった。

彼は探偵として、すべてを知るために、私の中に入り込んだのだ。

それなのに——。

彼の手が、私の腰をなぞる。

まるで美術品を愛でるように、ゆっくりと、慎重に。

「僕は君を監視するつもりだった。すべてを知るために……でも、違った。」

彼の手が私の背に回り、そっと引き寄せる。

「僕のものになって……。」

低い囁きが耳元に落ちる。

私は彼の腕の中で震えながら、もう逃げられないことを悟った。

唇が重なった瞬間、私の中で何かが崩れる。

「……美佐子……。」

囁きながら、彼の指が私の肌をなぞる。

彼の上に導かれた私は、彼の熱に包まれる。

まるで波に揺られるように、ゆっくりと、しかし確実に沈んでいく。

「感じて……僕だけを。」

彼の言葉に導かれるように、私は静かに彼に身を委ねる。

夜の静寂に、甘く切ない吐息が絡み合う。

鼓動が重なり、熱が波紋のように広がっていく。

ゆっくりと、波に溺れるように、私は彼の深い熱に飲み込まれていった。

けれど、彼の眼差しの奥に潜む冷たい影に、私はまだ気づいていなかった。

6. 監視カメラの真実

「僕は、探偵なんです。」

彼の言葉が、まるで冷たい刃のように私の心を貫く。

「探偵……？」

「桐山夫人が雇った。あなたと桐山の関係を監視するために。」

血の気が引いた。

「つまり、あなたは……私をずっと監視していた？」

「そうだ。」

神崎は微かに息をつく。

「でも、見ているうちに、あなたを知るたびに……僕はあなたに惹かれてしまった。」

彼の言葉が夜の静寂に溶ける。

「君を救いたい。」

「救う……？」

「この家を出よう。僕と一緒に。」

彼の手が私の頬を包む。

その手は、探偵としての冷静さを持ちながらも、深い情熱を秘めていた。

私は、彼の瞳をじっと見つめる。

「でも、あなたは……。」

そのとき、神崎はポケットから小さなデバイスを取り出した。

「これを見てほしい。」

彼が手にしていたのは、小型のモニターだった。

再生ボタンが押される。

画面には——私の姿。

桐山とともにある、すべての瞬間。

私の呼吸が止まる。

「……こんなもの、どこに……。」

「屋敷のあらゆる場所に、監視カメラが仕掛けられている。君が思っているよりもずっと前から。」

画面の中で、私は桐山に身を預け、彼の腕に絡まる。

密やかな囁き、交わる視線、求め合う指先——そのすべてが記録されていた。

「嘘よ……。」

「君が嘘だと思いたいなら、それでもいい。でも、これは現実だ。」

神崎の瞳は揺るぎなかった。

私は震えながら、彼の手からモニターを取り上げる。

「じゃあ、私たちのことも……？」

「もちろん、すべて映っている。」

彼の声は静かだったが、冷え冷えとした重みがあった。

画面が切り替わる。

そこには、私と神崎が絡み合う影。

熱を帯びた吐息、指先の迷い、夜に溺れる二人——。

すべてが克明に記録されていた。

映像の中で、私は彼の腕の中に沈み、熱に酔いしれていた。

彼の手が私の背をなぞり、揺れる波に乗るように身体が応えていく。

まるで舞うように、まるで流れるように。

「そんな……。」

全身から力が抜ける。

神崎の抱擁は、甘い罠だったのか、それとも本物だったのか——。