第一章:静けさの奥で始まる目覚め――山あいの学生寮と私の役割
信州の山間、小さな町にひっそりと建つ、木造二階建ての学生寮――その名も「舞寮(まいりょう)」。町営の旧宿舎を改装したこの寮には、地元の農学大学や工業短大に通う男子学生が6人、共同生活を送っている。
私は、管理人の舞。39歳。もとは都会の看護師だったけれど、離婚をきっかけにこの町に来て、静かに生きようと決めた。けれどこの寮で、私は思いがけず、“もうひとつの役目”を担うことになった。
彼らは、純粋だった。無邪気で、でも性に飢えた目をしていた。都会のような風俗もない、ただ山と川に囲まれた町で、彼らは悶々とした欲を持て余していた。
最初の夜は、台所で炊飯器を洗っていたときだった。
「舞さん…俺、もう、限界かも…」
寮生のひとり、悠斗。二十歳。夏の終わりの夜、汗で張りついたTシャツのまま、彼は台所に現れ、私の背中にそっと触れた。
その指が、あまりに震えていて――私は、その手を拒むことができなかった。
静かな廊下、外は虫の音。脱衣所で、私は彼の前にゆっくり跪き、ズボンの中の欲望を、そっと唇で迎え入れた。
ぬるりとした熱。彼の腰がびくりと跳ね、控えめな声で「あ…っ」と洩れた瞬間、私はすでに“管理人”ではなく、“彼らの寮母”になっていたのだ。
第二章:ひとりひとりの鼓動を飲み干す夜――口と舌と、母性という名前の欲望
それからというもの、私は彼らの“夜の相談相手”にもなった。
ある者は不安を、ある者は欲望を、そしてある者は寂しさを、私にそっと差し出してくる。声のトーンはいつも低く、まるで触れたら壊れてしまいそうな陶器のような繊細さを帯びていた。
「舞さん……今日、少しだけ……甘えてもいいですか」
その夜の声の主は、大地だった。
工学部の2年生。がっしりとした肩幅に無骨な手のひら、作業着の似合う実直な青年。けれど、彼の眼差しはいつも少しだけ、迷子のように揺れている。
浴室から出たばかりの私は、まだ湿った髪をタオルでくるんだまま、裸足で彼の部屋に入った。
大地はベッドの端に座り、目を逸らしながら、そっと右手を差し出してきた。呼吸は浅く、喉仏が上下する様子がシルエット越しに見えた。
私は何も言わずに彼の手を包み、そっと膝をつく。
蛍光灯は落とされ、スタンドライトの淡い明かりが、部屋を柔らかい琥珀色に染めていた。カーテンの隙間から吹き込む夜風が、私の肌を撫で、浴衣の裾がわずかに揺れた。
彼のタオルの奥に、熱が膨らんでいるのが見えた。私はそっとその上に手を重ね、少しだけ力を込めると、大地の背筋がぴくりと反応する。
「……あ……」
かすれた声と同時に、私はタオルをゆっくりと剥がしていった。下腹部の陰影が露わになり、そこに潜んでいた欲望が、ゆるやかに起き上がる。
私は視線を上げた。彼の目と、静かに絡める。
「怖がらなくていいの。全部、受け止めてあげる」
その言葉を囁くと、私は彼の股のあいだに顔を沈めた。先端にそっと唇を触れさせると、大地の全身がびくりと震えた。ひとつ、深く、震えるような吐息が洩れた。
私は、音を立てずに舌先を滑らせた。根元から先端まで、ゆっくりと、濡れた柔らかな筋で包むように。口腔内を密着させ、熱を逃がさないようにしながら、くちゅ、という湿った音を抑えきれずに響かせてしまう。
彼の手が、私の頭にそっと添えられる。けれど、押し込むことはしない。ただ、そこにあるだけ。まるで何かを確かめるように。
私は徐々にスピードを緩め、時に吸い上げ、時に舌で絡め取りながら、彼の全てを味わう。脈打つ硬さと、そこに宿る温度。彼の奥底に積もったものを、口いっぱいに抱えているような感覚。
「舞さん、……そんなの……だめ……っ」
か細く漏れる声に、私は頷くように喉を震わせた。喉奥までゆっくりと咥え込むと、彼の太腿がぴくぴくと跳ね、腰が自然と私の口の中に沈み込んでくる。
私は両手で彼の臀部を支え、奥まで受け入れたまま、喉の奥で軽く締め付ける。すると、大地は喉をつまらせるように、名前を震えながら呼んだ。
「まい…さん…あ、あっ、もう……!」
彼が果てる直前、私は深く頷きながら、すべてを受け入れた。塩のような熱が喉奥に広がっていくたびに、私の身体の芯がじんわりと熱を帯びていく。
飲み干しながら、私は不思議と心の奥に静かな安堵を感じていた。
行為が終わっても、私は彼の脚のあいだに頭を置いたまま、ゆっくりと呼吸を整える。
やがて彼がそっと私の肩に顔を埋めて、囁いた。
「ありがとう……誰にも、こんなこと…されたこと、ないよ……」
そのとき、私の中にも何かがほぐれた。欲望ではなく、赦しのようなもの。女として、母性として、何かを満たし、誰かに満たされた実感。
この行為は、たしかに“性的”だった。でもそれだけではない。言葉にできない感情が、喉元で熱を宿していた。
私は静かに彼の背中を撫でながら、思った。
――私は、彼らの欲を受け止めながら、彼らの魂の隙間にまで触れてしまっているのかもしれない。
そして、それがどれほど罪深く、どれほど甘美なことなのかを、私はもう知ってしまった。
第三章:
六つの影が私を包む夜――快楽と赦し、そして目覚めへ
あの夜の静けさを、私は一生、忘れないと思う。
雪の降る夜だった。窓の外はしんしんと白に沈み、街灯さえも輪郭を失っていた。
ストーブの音だけが低く響くリビングに、6人の青年たちが、こたつに並んで座っていた。湯気の立つカップを手に、誰もが言葉を発することなく、ただ時の流れを感じていた。
私は、ゆっくりと立ち上がった。
誰もがこちらを見た。寮母である私が、夜の帳を背に、浴衣の帯をほどいてゆくのを、誰一人として止めなかった。
――私は、彼らに差し出される“夜そのもの”になる。
裸身をさらけ出した私の肌に、部屋の灯りが淡く宿る。6つの視線が、一斉に私を撫でてくる。羞恥よりも先に、身体の芯が熱を帯び、内側で花弁が静かに開きはじめていた。
「舞さん…いいんですか、本当に…」
誰かが囁いた。
私は微笑むだけで、何も言わなかった。言葉はもう、意味をなさなかった。私は畳の上に横たわり、腕を広げた。来なさい、と、全身で告げながら。
まず最初に触れたのは、涼太だった。芸術学部の1年生。繊細な指先が私の髪を撫で、額にキスを落としたあと、迷いながら乳房に唇を重ねた。
唇が触れた瞬間、私は小さく喉を鳴らした。舌の温もりが乳首を捉え、そこにしっとりとした愛撫が広がっていく。片方の手が、そっと太ももをなぞる。
次に、口づけが腹へ、そして鼠径部へ降りてくる。私の脚が自然と開いていくのを、彼らは知っていた。
舌先が、内ももの柔らかい肌に触れたとき――
「…っあ……」
漏れた声を、私は両手で口を覆って抑えた。だが、すぐに誰かの手が私の手を外した。
「我慢しなくていいよ。全部、聞かせて」
耳元で囁くその声に、私は静かに頷いた。
そして、舌が私の奥へと忍び込んでくる。折りたたまれた花弁がそっと開かれ、敏感な芯を柔らかく巻かれる。ちゅっ、くちゅ、く、という濡れた音が静かな部屋に響き、舌の先端で何度もかき混ぜられるたび、腰が浮く。
「気持ちいいですか…?」
誰かの問いかけに、私はただ、喉を震わせて応えた。
そして――ひとり、またひとりと、彼らは私のなかへ入ってきた。
最初は、正常位。
押し込まれる感覚は、いつも新しい。奥まで到達するたび、私は息を止め、震える声を漏らす。
彼が一突きするたびに、身体の奥が水音を立てて応じた。互いの境界が溶けていくような感覚。抱きしめ合う腕が強くなるたび、私は彼の名前を無意識に呟いていた。
次に、身体を仰向けからうつ伏せに――後ろから、腰を抱えられ、再びゆっくりと押し込まれる。
最奥を突かれるたび、心まで貫かれるようで、私は片手で畳を掴みながら、涙をにじませた。
「舞さん、奥、気持ちいい?」
「……うん、もっと……きて……」
彼の腰が打ちつけるたび、濡れた音とともに、私の奥が熱で満たされていく。部屋の灯りが霞んで見え、ただ官能の渦だけが私を支配していた。
そして、最後の彼。膝立ちの私の脚を抱えながら、ゆっくりと騎乗位で迎える。
彼の熱が私のなかで鼓動し、私はゆるやかに腰を揺らした。
上下に滑るたび、ぬるりとした感覚が互いの境界を曖昧にし、波のように高まっていく。
「あっ…そこ……もっと……」
乳房を揉まれ、舌で吸われながら、私は身体を任せる。
腰が止まらない。誰の手が、誰の唇かも、もはやわからない。
私の身体が何度も絶頂を迎え、そのたびに濡れ、震え、開かれ――最後の一滴まで彼らを受け入れたとき、私は完全に脱力していた。
誰かが私の髪を撫で、誰かが脚を拭いてくれた。
私は裸のまま、六人の腕のなかで、静かにまぶたを閉じた。
快楽の向こうにあったのは、虚無ではなく、赦しだった。
「私は、女でよかった」と、心の底から思えた。
エピローグ:寮母という名の女の生き方――与えるたび、私は目覚めていく
私はこの寮で、“寮母”という名の女として生きている。
身体を与えることは、罪でも汚れでもない。誰かの渇きを、孤独を、欲望を包み込むことは、愛のかたちだと思う。
ここは“舞寮”――与えるほどに、与えられていく場所。
私は今日も、あの木の床を雑巾がけしながら、誰かの夜に備えている。
そしてまた、誰かが「舞さん…」と呟くそのとき、私は喜びとともに、身体を開いていくのだ。
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