結婚して七年。
私は、満たされていなかった。
不自由はない。でも、足りなかった。
旦那は優しい。仕事もちゃんとしてるし、家事も分担してくれる。
でも、夜だけは──私に触れなくなった。理由は言わない。たぶん、私が変わったんじゃない。ただ、飽きたのだと思う。
そんなとき、私は出会い系のアプリを覗くようになった。
「会うつもりはない」そう自分に言い聞かせて、プロフィール写真も上げず、ただ誰かに愚痴を吐くだけだった。
彼──「タカさん」と名乗るその人とは、性の悩みを語り合うだけの関係だった。
年上で、妙に大人の余裕があって、私の質問に丁寧に答えてくれる。
とくに、彼は「潮吹き」にやたらこだわっていた。
「99%の女性は、実は出せるんだよ」
「それを知らないのは、男の責任だよ」
私にはピンとこなかった。
そんなの、AVの演出じゃないの?と疑っていた。
でも、ある日、彼が言った。
「今度、近くまで行くんだけど──会ってみない?」
迷った。でも、私は応じていた。
彼と過ごせるのは、ほんの十五分ほど。
それでも、「絶対に出す」と言い切る彼の言葉に、なぜか抗えなかった。
待ち合わせは、小さな駅前のカフェだった。
私はグレーのワンピースに、少しだけヒールのある靴を履いていた。
彼は、想像よりも落ち着いた雰囲気の人で、にこりと笑うと、
「じゃあ、行こうか」
とだけ言って、私をリードした。
迷いはあった。
でも、身体は素直だった。
ほんの数分後、私たちは駅裏の古びたラブホテルのエレベーターにいた。
「シャワー、いらないよね? 時間、もったいないから」
彼の声は低く、耳に触れるような熱があった。
ドアが閉まった瞬間、彼は私の背中に手を回し、ファスナーをおろしてきた。
「……あっ」
言葉にならない吐息が漏れる。
下着の上から手が這い、私の身体をくまなくなぞっていく。
触れられたところから、火がついたように熱くなる。
下着を脱がされる頃には、私の脚は震えていた。
そのまま、ベッドの端に座らされ、彼は床に膝をついた。
「ゆっくりするから、力抜いて」
そう言うと、彼は私の脚を開き、唇を近づけた。
熱く、ぬるりとした舌が、私をゆっくり探る。
最初はくすぐったさと羞恥で頭が混乱していたのに、徐々に、身体の奥が疼き始めた。
「やだ……変な感じ……」
震える声が、自分のものとは思えなかった。
その舌に続いて、彼の指が、一本、私の中に入ってきた。
細く、長く、繊細な動き。
そして、私の左脚を持ち上げ、彼の肩にかける。
「ここからだよ」
彼の声は、どこか楽しげだった。
奥の奥を撫でるように、指が動く。
最初は円を描くように。やがて、震えるように。
それが段々、激しさを増して──
「っ……あ……待って……!」
私は思わず腰を引こうとしたけれど、片脚は彼の肩に乗ったままで、動けなかった。
そこから、突如、内側で何かが弾けた。
ぴしゃっ……と、水音が響く。
何が起きたのか分からないまま、私は呆然としていた。
彼は満足げに指を抜き、その指先を私の目の前にかざした。
ぽたり──と、雫が落ちる。
「ね? 出たでしょ」
私の呼吸は乱れていた。
何がどうなっているのか、本当にわからなかった。
でも彼は、また、指を戻す。
二度目は、もっと容赦がなかった。
音が響くほどの動きで、私の奥をかき回していく。
「ひっ……! また……ダメ、もう……!」
私は叫んでいた。
でも、すぐにまた、温かい水が噴き出す。
止まらなかった。
何度も、何度も。
出るたびに、彼はそれを見せてきた。
満足げに笑いながら、私の髪を撫で、唇に触れる。
「ほら、ちゃんと女の子だね」
──涙が出そうだった。
でも、泣いているわけじゃない。
なぜか、心の奥がゆるんで、崩れていくのを感じていた。
その後、彼は少しだけ挿れてきたけれど、すぐに終わった。
時間がなかったからかもしれないし、彼にとってそれはもう「おまけ」だったのかもしれない。
ホテルを出たあと、私たちは駅で軽く挨拶を交わし、別れた。
連絡も、その後はなかった。
それから、私は何度か、あの感覚を経験するようになった。
まるで何かが目覚めたように。
けれど、いまだに不思議だ。
それは「イく」感覚とは全く違う。
激しくて、熱くて、でもなぜか静かで……どこか空虚でもある。
私は、女としての「快楽の扉」が、あの十五分で開いてしまったのだと思う。
それが幸せだったのか、哀しかったのか──
いまでも、よくわからないまま。
でも、時折ひとりでふと、身体を探るとき。
あのときの彼の指の形を、思い出してしまうのだ。



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