第一章:出逢いの余白に、私の欲が目を覚ます
39歳。神奈川の海沿いにある住宅街で、私は主婦をしています。
夫とはもう長く、夜を共にすることはなくなっていました。家族としては平穏でも、女としては空洞のような日々。ある日、偶然目にしたSNSの一文──「無料でマッサージ、好奇心のある女性限定」。
冗談みたいな誘い文句。でも、なぜかそのときだけは、画面を閉じることができませんでした。
「ホテルにします? それとも…ご自宅に?」
初めて会ったその人、マッサージ師の〇〇さんは、意外にも落ち着いたスーツ姿の紳士で、声には妙な説得力がありました。
私は迷うふりをしながら、どこかで決めていたのかもしれません。「ホテルでお願いします」と口にした瞬間、自分が何かから逸脱していく音が、胸の奥で微かに鳴った気がしました。
助手席での会話は不思議なくらい心地よく、笑い合ううちに私の身体の奥に眠っていた熱がじわじわと目を覚ましていくのが分かりました。
ああ、今夜、私のなにかが壊されてしまうんだ──そんな予感が、なぜか心地よかったのです。
第二章:レースの下、指先と震えが忍び寄る
ホテルの室内は、間接照明とわずかな音楽だけ。
彼は淡々と、しかし丁寧にタオルを広げ、防水シートを敷き、バスルームでお湯を張ってきます。
私は言われるままに、黒のレースのブラとショーツだけの姿になって、ベッドにうつ伏せに寝転びました。
彼の手がオイルを含んで私の背中を滑ると、そのぬるりとした熱が、まるで心の底まで入り込んでくるようで──気づけば、息を殺すように快感を噛みしめていました。
「……この辺、凝ってますね」
そう言いながら、彼の指が私の腰骨に沿って撫で、やがて内ももに触れたとき。
ショーツ越しに、明らかにそこをなぞられたとき、私は反射的に膝を閉じようとしました。でも、同時に、濡れてきている自分に気づいてしまったのです。
「やっぱり感じてますね」
静かな声に、恥ずかしさと罪悪感と、どうしようもない悦びが混ざり合って、私は返す言葉を失いました。
そのまま、彼の指がショーツの内側に滑り込み、私は唇を噛んで声を漏らさないよう必死でした。
「今日は──これ、使ってもいいですか?」
そう聞かれたときには、もう何も抵抗できない状態でした。
彼が取り出したのは、艶やかなローズ色の小さなバイブ。先端に触れた瞬間、震える振動が下腹部を駆け抜け、私はそのまま脚を開いてしまっていました。
「……んっ、あっ……!」
ショーツの中で生き物のように蠢くバイブ。その震えに呼応するように、私の腰が小刻みに動いてしまう。
そして彼は、その姿をゆっくりとデジカメで撮り始めました。
「この震え方、すごく綺麗です。……恥ずかしい?」
頷けなかった。否定できなかった。
羞恥と快感の境目が、次第に溶けていく。黒いレースはすでに濡れきって、彼の指が吸い付く音さえ聞こえてしまう。
「奥まで…感じてますね」
その囁きと共に、バイブが深く押し込まれ、私の膣奥が、何かを欲しがるように蠢きました。
第三章:快楽の底で、私は赦された
「イッていいですよ。止めませんから」
その言葉が、合図のようでした。
私は口元を手で押さえながら、腰を震わせ、波のように押し寄せる絶頂に身を委ねました。
バイブの振動、彼の指、シャッター音──そのすべてが、快楽の濃度を高めていく。
気づけば私は、「もっと…」「お願い…」と、誰よりも淫らな言葉を口にしていた。
しばらくして、彼がバイブを抜き取り、ショーツをゆっくりと上げ直してくれたとき、不思議なほどの安堵に包まれました。
まるで、眠っていた私の「女」が、初めて自分を許したような──そんな感覚。
お風呂の湯気に包まれながら、私は鏡の中の自分を見つめました。頬はほんのりと赤く、視線には、少しだけ輝きが戻っていた気がします。
たしかに不倫でした。許されることではない。
でも、あの夜に私が感じたのは、ただの背徳ではなく、快楽の中で自分の女としての輪郭を取り戻す、再生のようなものだったのです。
あのレースのショーツは、今も私の引き出しの奥にあります。
時々取り出しては、その夜の記憶を、私の指がたどっていく──静かに、熱を孕みながら。


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