カーテンの隙間から、私は誰かの欲望を感じ取っていた。
陽だまりの中で、私の肌をなぞるような──見えない熱。
それが彼の視線だと気づいたとき、私の奥に眠っていた何かが、ゆっくりと目を覚ました。
向かいの部屋の大学生。引っ越してきたばかりで、まだ言葉も交わしたことがない。
でも、その目だけは、何度も私に触れていた。
彼の部屋のカーテンがわずかに揺れたとき、私の中で何かがはじけた。
誰にも見せないようにしていたもの。
夫とも分かち合えなかった、女としての本性。
私はゆっくりと、ブラを外した。
Tシャツ越しに乳首が立ち上がるのが、自分でもわかった。
窓の前で、私はあえてその姿のまま、洗濯物に手を伸ばす。
風が、私の内腿をなぞった。
そのまま足を少し開き、もう片方の洗濯バサミを取るふりをして腰をひねる。
覗いていた。
彼の目が、確かに私の胸元を、太腿を、吐息の奥を見ていた。
その夜、私はベッドに入っても眠れなかった。
Tシャツの裾を持ち上げ、指先を自分の奥へ滑らせる。
濡れていた。彼に見られた記憶だけで、私はすでに…高まっていた。
**
そして次の日。
彼からの手紙が届く。
「どうしても謝りたくて…
でも本当は、あなたに会いたいんです。
お話だけでもいい、あなたに近づきたくてたまらないんです。」
私は窓を開けた。
彼の瞳が、真っ直ぐに私を射抜いた。
その夜、チャイムが鳴った。
彼が、少し汗ばんだ額と、揺れる視線を携えて立っていた。
私は黙って頷き、ドアを開けた。
彼が部屋に足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。
「ごめんなさい、でもどうしても──」
「話すより、感じてほしいことがあるの」
私はソファに座り、ゆっくりと脚を組んだ。
ショーツのラインがくっきり浮かぶ部屋着の下。
その視線がすべてを物語っていた。
私は立ち上がり、彼の前に立つ。
そして、Tシャツの裾をつまんで、ゆっくりと上にたくし上げた。
乳房があらわになり、尖った頂が空気を震わせる。
「見ていたものでしょ?」と、ささやくように言った私に、彼は吸い寄せられるように口づけた。
**
唇が、胸の先端を包み込む。
舌が弧を描き、歯が甘く噛む。
私は声を堪えきれず、彼の髪を掴んだ。
腰が浮く。
彼の手がショーツに指をかけ、ゆっくりと、それを足元まで落とす。
私の脚の内側が、風に濡れたように震えていた。
彼は私の膝の間に入り、視線を這わせながら、指先で内腿を撫でる。
そこから、中心へ──指が、唇の間に沈んでいく。
「あ……っ」
小さな声が漏れる。
その指が、まるで私のすべてを知っているかのように、奥へと侵入してくる。
やがて、彼の舌がそこに添えられたとき、私は耐えきれずに腰を突き上げた。
熱く、濃密な感覚が、下腹から脳まで突き抜ける。
「私の中に…来て…お願い…」
涙声に似た吐息とともに、私は彼を抱き寄せた。
彼は静かに頷き、ズボンを脱いで、私の脚の間に身体を沈めた。
滑るように入ってくるその感覚に、全身が仰け反る。
ずっと空っぽだった場所が、やっと満たされていく。
繋がるたびに、彼の手が、口づけが、私を優しく壊していく。
快楽は波となり、崩れ、また打ち寄せる。
「もっと…奥まで……あなたを、全部感じたいの…っ」
声が震え、身体が溶ける。
彼が私の名前を呼んだとき、私は頂点に達した。
**
しばらくして、私は彼の胸の中で呼吸を整えていた。
静かな部屋に、カーテンがふわりと揺れる。
「もう、見ているだけじゃ足りない」
彼が言った。
私は微笑んだ。
「もう、見せるだけの私じゃないから」
**
その後も、私たちは何度も身体を重ねた。
ただの快楽じゃない。
女として、男として、誰にも知られず、深く結ばれる時間。
私は、覗かれることで目覚め、
抱かれることで赦され、
感じることで、ようやく「生きている」と思えた。
あの窓の向こうの視線は、
今も私の中で、熱く息づいている。




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