派遣マッサージ師にきわどい秘部を触られすぎて、快楽に耐え切れず寝取られました。 竹内有紀
竹内有紀が演じるのは、静かな午後の光の中で“癒やし”と“揺らぎ”の境界に立つ女性。
彼女の表情は、ひとつの動作のたびに変化し、心が触れられる瞬間をリアルに映し出す。
オイルのきらめき、肌の呼吸、そして沈黙の余韻──それらすべてが繊細に撮られており、
単なる官能を超えて「人が他者に触れられるとは何か」を問いかけるような深さを持つ。
観終わった後、静かな感情の余韻が胸に残る。
【第1部】午後の静けさに沈む指──癒やしと渇きのあいだで
マラソンの翌朝、私は脚の奥に、じんわりとした痛みを抱えて目を覚ました。
膝から下が、自分の身体ではないみたいに重たい。
鏡の前でストレッチをしながら、脹脛を撫でたとき、皮膚の下にまだ熱がこもっているのがわかった。
夫は出張で東京に行ったまま。
リビングには、昨夜の汗の匂いが、わずかに残っていた。
“癒されたい”
そう思った瞬間、指がスマートフォンを滑っていた。
「出張マッサージ」という文字が目にとまる。
軽い気持ちだった。
けれど、どこかで――私は“触れられたい”と願っていたのかもしれない。
昼過ぎ、チャイムが鳴った。
玄関のドアを開けると、淡いグレーのポロシャツを着た男が立っていた。
「三浦様ですね。中村です」
低く落ち着いた声。
視線が私の肩の辺りで一度止まり、すぐに逸れる。
その小さな動きが、なぜか胸の奥で波紋のように広がった。
リビングの真ん中にマッサージ台が置かれ、私はバスタオルを巻いてうつ伏せになった。
エアコンの風がゆるやかに頬を撫で、背中を滑るオイルの匂いが漂ってくる。
中村さんが手のひらでオイルを温める音――それが、心臓の鼓動と同じリズムに聴こえた。
指が肌に触れる前、私は息を止めた。
その一瞬の沈黙の中で、部屋の空気がぴんと張りつめる。
次の瞬間、背中に落ちたオイルの熱が、波のように広がった。
思わず、肩が微かに跳ねる。
それを彼の手が静かに押さえ、何も言わずに、背骨の線をゆっくり辿っていく。
掌が私の呼吸に合わせて沈み、指先が、疲れの奥にある何かを探すように動く。
「力、強くないですか?」
耳のすぐ近くで、彼の声が低く響いた。
私は答えられず、ただ小さく首を振った。
声を出したら、何かがこぼれてしまいそうだったから。
背中を流れるオイルの音が、ゆっくりとしたリズムを刻む。
それは次第に、痛みでも快楽でもない、曖昧な熱に変わっていく。
脚の付け根のあたりで、指が止まる。
その一瞬の“ためらい”が、かえって刺激になった。
呼吸が浅くなる。
部屋の空気が、少し甘く濃くなっていく。
私は目を閉じながら、自分の身体が「癒やし」と「渇き」のあいだで揺れているのを感じていた。
どちらにも傾けずにいることが、こんなにも苦しいとは知らなかった。
【第2部】延長の指先──触れられた場所よりも深く、私がほどけていく
時間がどれほど経ったのか、もう分からなかった。
背中を流れる指の動きが、呼吸と混ざり合って、世界の輪郭がぼやけていく。
遠くで鳥の声がした気がしたけれど、それすら夢の中の音のようだった。
彼の手が、腰のあたりで止まる。
オイルを足す音。
その静寂の後に、壁の時計が鳴る。
――タイマー。
それが、この時間の“終わり”を告げる合図だった。
彼は手を離し、静かに言った。
「……ここまでです。延長されますか?」
一瞬、頭の中が真っ白になった。
“延長”という言葉の響きが、妙に艶やかに聞こえた。
ほんの少しの間で、私は自分の心が、二つに割れる音を聞いた気がした。
終わらせなければ――そう思う理性の声。
けれど、終わってほしくないと願う身体の声が、その上からかぶさる。
背中に残る余熱が、まるで見えない手のように私を引き止めていた。
「……お願いします」
気づいたら、そう言っていた。
自分の声が、少し掠れている。
それを聞いた彼は、小さく頷き、再びオイルを温めた。
彼の指が戻ってくる。
今度は、先ほどよりもゆっくりと。
まるで“続き”を知っているような手つきだった。
触れられるたび、皮膚の下で何かが開いていく。
筋肉でも神経でもない。
もっと深い場所。
自分でも知らなかった“受け入れる部分”が、彼の動きに合わせて形を変えていく。
私は目を閉じ、息を整えようとするけれど、呼吸は勝手に乱れていく。
押し殺した吐息が、喉の奥で震える。
それが、部屋の静けさの中でやけに大きく響いた。
「大丈夫ですか?」
その問いが、まるで罪を許すような優しさで降ってくる。
私は、声にならない声で頷いた。
その瞬間、彼の指先が、まるで私の“心の中”に触れたように感じた。
どこを押されたのか分からないのに、涙がにじんだ。
痛みでも、悲しみでもない。
ただ、ずっと誰にも触れられなかった自分の“孤独”が、ようやく撫でられたような気がした。
私はその手に、すべてを預けた。
もう、癒やしと快楽の境界がどこにあるのか分からなかった。
ただ確かなのは、
“延長しますか?”というあの一言が、私の中の何かを永遠に変えてしまったということ。
【第3部】沈黙の余韻──身体が記憶を思い出すとき
オイルの香りが、部屋いっぱいに満ちていた。
窓の外では陽が傾き、カーテンの隙間から入る光が、ゆらゆらと揺れている。
その光が、私の肩の上に落ち、彼の指がそこを通り過ぎるたび、淡い金色の影が踊った。
「もう少し、深く入れますね」
彼の声が低く響く。
その言葉の意味を、私は反射的に考えようとするが、もう思考は動かない。
ただ、音だけが身体の内側に浸みていく。
背中から腰へ、そして脚の奥へ。
触れられているのに、痛みはない。
ただ、そこに“何かが満たされていく感覚”があった。
自分の身体が、音を吸い込み、匂いを覚え、肌の記憶を刻み始めている。
どこまでが私の皮膚で、どこからが彼の指なのか、もう分からなかった。
私の呼吸と、彼の動きが一つの波のようになって、静かに揺れている。
その波が胸の奥に届いた瞬間、何かがほどけた。
それは声だったのか、吐息だったのか、自分でも分からない。
喉の奥から零れた音が、空気を震わせ、また私の耳に返ってくる。
彼の手が止まり、ほんの一瞬だけ、部屋の時間が止まった。
「……もう大丈夫です」
彼の声が遠くから聞こえた。
目を開けると、夕暮れの光がリビングを淡く染めている。
オイルの匂いが、さっきよりも優しくなっていた。
私は身体を起こし、バスタオルを胸に巻いた。
全身が軽く、けれどどこかでまだ熱を帯びている。
それは筋肉の疲労ではなく、もっと内側の、心の奥にある“名もなき疼き”だった。
「お疲れさまでした」
中村さんは静かに片づけを始め、マッサージ台を畳んだ。
その手の動きが妙に丁寧で、まるで儀式のあとを清めているように見えた。
玄関まで見送るとき、彼が振り返り、少しだけ笑った。
「また、必要なときに呼んでください」
その言葉が、まるで**“必要=触れられること”**を意味しているように響いた。
私はうなずきながら、何も言えなかった。
ドアが閉まる音がして、部屋に再び静寂が戻る。
その瞬間、私は初めて深く息を吐いた。
胸の奥に残る熱が、鼓動のように波打っていた。
窓の外では、秋の風が木々を揺らしている。
私はソファに座り、背中を撫でられた場所にそっと手を当てた。
そこには、まだ彼の体温が、うっすらと残っていた。
その温もりが消えていくのが怖くて、私は手を離せなかった。
まるで、自分の中の何かを繋ぎ止めておくための行為のように。
静かな夕暮れの中で、私はようやく気づいた。
“癒やし”という言葉の中には、こんなにも深い孤独と欲望が隠れていたのだと。
まとめ──触れられたのは、肌ではなく孤独だった
マッサージが終わったあと、私は自分の身体を抱きしめるようにして、静かに息を整えた。
痛みは消えていたのに、なぜか涙が出そうだった。
誰かの手が、こんなにも深く私の中に残ることを、私は今まで知らなかった。
思えば、私の渇きは、愛されたいという願いではなく、**「感じたい」**という祈りに近かったのかもしれない。
それは肉体の快楽とは別の次元にある、存在の確認。
「あなたはここにいる」と、無言のまま告げられること。
その確かさに、私は救われたのだと思う。
夕暮れが夜に変わるころ、私はようやく立ち上がった。
窓の外には、遠くの街灯が滲んで見えた。
あの光のひとつひとつに、人の孤独が灯っているのだろう。
そして、その孤独は、誰かの指先によって、そっと撫でられる瞬間を待っている。
あの日のマッサージは、私にとって“癒やし”ではなく、目覚めだった。
触れられたのは肌の表面ではなく、心の奥で長く眠っていた私自身。
その眠りが解けた今、私はもう、同じ日常には戻れないのだろう。
でも、それでいい。
誰かに触れられたことをきっかけに、自分をもう一度、生き直すことができるのなら。
静まり返った部屋の中、私は胸の奥に手を当てた。
そこにはまだ、微かに、あの日の指の記憶が残っていた。
それは罪ではなく、生の証。
そして、孤独を抱えたすべての人の中にも、きっと同じ熱が、密やかに灯っているのだと思う。
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