金曜の夜。研修医としての一週間が終わる頃には、私の身体も心も、限界ぎりぎりまで擦り減っている。
それでも、今日のフィードバックだけは逃れられない──いや、むしろ、どこかで“待ち望んでいた”と、私のどこかが囁いていた。
病棟の灯りがひとつ、またひとつと落ちていき、私は医局の一番奥、指導医専用の面談室の前に立っていた。
不規則な呼吸。震える指先。白衣の内側で、下着が湿っている気がした。
「どうぞ」
低く、よく通るその声が中から響く。黒澤先生──
私の指導医、そして……理性の壁をゆっくり侵してくる、唯一の男。
「遅くまで、ご苦労さま」
振り返った彼は、白衣を脱ぎ、ワイシャツの袖を少しだけまくっていた。男の手首というものが、こんなに色っぽいものだと知ったのは、医学書には載っていなかった事実。
「今日は、厳しくいくぞ。覚悟して来たか?」
「はい……先生」
私は声の調子まで自覚的に落とす。
心臓が速くなる。脚の奥が、じんわり疼いていた。
彼はソファの向かいに座った私のカルテを手に取り、冷徹な口調で語り出す。
「今日のOさん、声を“受け流した”な」
「……はい」
「むくみに気づけなかった理由は?」
「……集中力が、散ってました。視診が甘くて……」
落ち込む私の手元を、黒澤先生の手がそっと取った。
「焦るな。今日の“診察ミス”は、ここで修正できる」
その言葉と同時に、私の手は自分でも意識しないうちに、彼の太腿の上に置かれていた。
「……先生?」
「実践に勝る勉強はない」
先生はそう言って、立ち上がり、私をソファへと押し倒した。
それは、静かで、でも一切の隙もない動作だった。
白衣のボタンが、ひとつ、またひとつと外される。
私は、脱がされながら、羞恥よりも先に、自分の身体が先生の手を待っていたことに気づく。
「脚、もう少し開いて。診察しにくい」
そう言われると、私の脚は、言われた通りに自然と開いてしまっていた。
彼の手が、スカートの奥、ショーツの上から触れる。
「……もう、濡れてるな。さすが“素直”な研修医だ」
「やっ……先生、言わないで……」
言葉では否定しても、ショーツ越しに撫でられると、私の体は裏切りのように震えてしまう。
人としての羞恥と、雌としての欲求が、体内でせめぎ合っていた。
彼は私の太腿をなぞりながら、ショーツの端をゆっくりずらし、そこに口を寄せた。
「いい匂いがするな。思考じゃなく、身体が正直に答えてる」
「……そんな……」
舌が触れた瞬間、私は小さく呻いた。
柔らかく、温かく、執拗に、先生の舌が私の“中心”を舐めあげる。
最初は外側をやさしくなぞるように。
やがて、尖った先端が敏感な突起に触れると、私の腰が勝手に跳ねた。
「声、もっと聞かせてくれ。黙ってると診断しづらい」
「……ん、あぁ……っ、だ、だめっ、声……止まらない……」
指が、ゆっくりと私の中に入ってきた。
滑らかな動き。けれどすぐには動かない。
「動かして欲しいなら、ちゃんとお願いしろ。研修医らしく、丁寧にな」
彼のルールは、いつもそうだった。
羞恥を超えて、自分から“願う”こと。
「……お願いします。気持ちよく、してください。中を……動かして」
その言葉を聞いたときの、先生の眼差し──
まるで、症例の変化を待ち望んでいた名医が、ついに真実に辿りついた瞬間のようだった。
「よく言えたな。じゃあ、俺も本気出す」
その言葉と同時に、彼の指が深く、奥へと、渦を描くように私をえぐり始めた。
絶頂は、波のように、容赦なく繰り返された。
ひとつ、またひとつ。
私の中が、何度も攪拌されるたび、白衣の裾が乱れ、汗で貼りついたワイシャツが、彼の体温を伝えてくる。
「……入れて、ください」
いつのまにか私は、そう呟いていた。
「……中で?」
「……うん、欲しい……先生の、全部……」
ズボンを下ろし、露わになった彼の熱に、自分から脚を絡めるようにして受け入れた。
ゆっくりと、奥まで満たされていく感覚。
思考が白く飛んでいく。
「……ゴムは?」
「……して……ません」
「でも、止めないんだな。じゃあ、全部、覚悟の上ってことだ」
腰が打ちつけられるたび、官能が深くなる。
白衣の裾が私の太腿を揺らし、乳房が彼の胸で押し潰され、彼の熱が、何度も奥へ、奥へ──。
「……出すぞ、そのまま」
「うん……中で……先生の……」
数秒後、先生の熱が、私の奥深くへと放たれた。
その瞬間、私はひとつ、人生の“正しさ”から堕ちていった。
でも、不思議なことに、怖くはなかった。
数分後。
彼は私の髪を撫でながら、呟いた。
「君はいい医者になるよ。……たぶん、女としてもな」
私は白衣の胸元を握ったまま、肩で息をしながら、目を閉じていた。
「……先生、また来週も……指導、してください」
「当然だ。まだまだ、学ぶことは多い」
それは、医学の話ではなかった。
けれど私は、全身で“はい”と、答えた。




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