【第1部】愛人の微笑とワンルームに忍び寄る影──偽りの幸福と隠された渇き
名古屋・栄。夜のネオンが瞬く街のはずれにあるワンルームマンション。
十畳ほどのその部屋で、私は暮らしている。
美里(みさと)、32歳。医療事務として働きながら、形ばかりの生活を続ける日々。けれど心の奥には、満たされぬ孤独と欲望が沈殿していた。
私の同僚であり友人の彩乃(あやの)、26歳。
誰もが振り返るほどの美貌を持ちながら、彼女は“妻”ではなく、部長・黒田(50歳)の愛人だった。
昼休み、彩乃は微笑みながら囁く。
「奥さんがいるのに、わたしだけを愛してるって言ってくれるの。黒田さんと一緒にいると、大人の余裕に包まれるみたいで安心するの」
彼女の言葉には、誇りと同時に、消せない影が潜んでいた。
黒田には家庭があり、彩乃は公にはできない存在。
平日の夜、彼女は高級ホテルで彼と逢瀬を重ねるが、週末になると黒田は妻と過ごすため、必ず家に帰る。
その時、彩乃は決まって私のワンルームを訪れた。
「今日も泊めてもらっていい?」
そう尋ねる声は甘やかに響くが、その瞳の奥には“誰かに抱かれていないと埋まらない渇き”が滲んでいた。
私の部屋にはもう一人、若い青年が住み着いている。
隼人(はやと)、22歳。大学を中退し、親との断絶から行き場を失った彼を、私は気まぐれに受け入れた。
昼間は無口で、存在感の薄い居候。だが、夜になればその沈黙は一変する。
私は24歳のとき、彼に処女を捧げた。
以来、十年。隼人に抱かれるたび、孤独も焦燥もすべてが熱に溶けていく。
逞しい体と無尽蔵の体力。底知れぬ欲の深さ。彼の腕の中だけが、私を女として生かしていた。
「平日は私、週末は彩乃」──そんな均衡が、言葉もなく築かれていた。
けれど、彩乃の吐息と隼人の沈黙。その二つがこの狭いワンルームで重なり合うたび、私は胸の奥に説明のつかない疼きを覚えた。
部長に愛される“影の女”としての彩乃と、私だけの秘密である隼人。
その交錯は、やがて誰も止められない夜を呼び寄せるのだと、私は直感していた。
【第2部】背徳の吐息と深奥への渇き──口唇と舌が交わした夜の真実
その夜、ワンルームの空気は湿って重く、窓の外の街灯がカーテン越しに揺れていた。
布団を二つ並べ、私は眠るふりをしながら耳を澄ませていた。
「……隼人、抱いて」
茜の囁きは、抑えきれぬ渇きが滲む、甘やかな命令だった。
彼の低い吐息が応え、布団が軋む音が響く。
私は布団の隙間から覗き見てしまった──。
茜は彼の前に跪き、白い指でゆっくりと熱を解き放っていた。
その姿に私は息を呑む。
隼人のものは、想像を超えるほど長く逞しい巨塔。茜の小さな顎が震えるほどの重みを持ち、静かに存在を誇示していた。
「大きすぎて……全部、入らない……」
そう言いながらも彼女は口唇を開き、濡れた舌先で先端を愛おしむように舐め取っていく。
唇がゆっくりと滑り込み、頬が膨らみ、喉奥が震える。
「ん……んんっ……」
湿った水音が狭い部屋に広がり、私の下腹を熱く締め付ける。
隼人は髪を掴み、低く囁いた。
「彩乃、もっと奥まで……俺を飲み込んで」
その言葉に応えるように、彼女は涙をにじませながらも、さらに深く喉へと受け入れていった。
やがて彼は彼女を引き寄せ、逆にその身体を横たえさせた。
今度は隼人の舌が彩乃の秘められた花弁を割り、露を啜る。
「ひぁっ……そこ……だめぇ……」
彼女の声が震え、腰が浮き上がる。
柔らかな花びらの奥に隠された泉を、隼人は丹念に舐め上げ、深みに舌先を探り入れる。
粘る蜜が音を立てて溢れ、私の耳に淫らな旋律のように響いた。
耐えきれず、私は自分の指を濡れた中心に滑らせた。
「ん……私も……」
吐息がもれて止まらない。
そして二人の身体は絡み合い、体位は幾度も変わっていった。
まずは正常位。
彼の巨きなものがゆっくりと彩乃の奥へ押し入るたび、彼女の爪がシーツを掴み、唇から悲鳴のような喘ぎがこぼれる。
「奥まで……届いてる……あぁ……っ」
続いて後背位。
四つん這いになった彩乃の腰を掴み、隼人が激しく突き入れる。
肉と肉がぶつかる湿った音が部屋に響き、揺れる胸が宙で踊る。
「やめて……だめなのに……もっと欲しいの……!」
やがて騎乗位。
彩乃は汗に濡れた髪を振り乱し、彼の腰に跨がって自ら動き出す。
「わたしが……あなたを壊す……」
豊かな胸が揺れ、快楽に酔った瞳が輝いていた。
私は震えながら見つめるしかなかった。
そのたびに自分の指も深く沈み、同じ絶頂に飲み込まれていく。
やがて彩乃は全身を痙攣させ、喉の奥から甘い悲鳴を洩らした。
隼人の逞しい熱が彼女の奥に注ぎ込まれ、二人の身体は一瞬、光に包まれたように硬直する。
「彩乃……俺だけを見ろ」
「離さないで……もう、あなた以外は無理……」
絶頂の余韻がワンルームの狭さをさらに濃密にし、私は布団の中で息を殺しながら、自らの身体を抱きしめた。
欲望の熱と羞恥の影。その両方に引き裂かれながら──私は次に訪れる夜を、待たずにはいられなかった。
【第3部】交錯する熱と果てなき絶頂──三つ巴の愛欲が生んだ夜の深淵
隣で貪り合う二人を見つめるだけで、胸の奥は焦げるように熱かった。
彩乃が絶頂の波に攫われ、隼人の名を泣きながら呼ぶ声。
「……もう、離さないで……あなたじゃなきゃ生きていけない……」
その言葉が鋭く突き刺さり、私は布団を跳ね飛ばした。
「……私も……私も、あなたのものだから」
驚いた彩乃の瞳と、熱に濡れた隼人の眼差しが、同時に私を射抜く。
次の瞬間、彼の腕が私を捕らえ、火照った身体を抱き寄せた。
その逞しいものが濡れきった奥へと突き入ると、羞恥も嫉妬も一瞬で溶け、ただ欲望だけが全身を支配した。
「あぁっ……やっと……」
声が震え、腰が勝手に動く。
彩乃は息を荒げながら私の背に手を伸ばし、囁く。
「一緒に……溺れましょう……」
狭いワンルームで、三人の肉体はもつれ合い、幾度も体位を変えていった。
隼人が私を抱きながら、彩乃の胸を口に含む。
「やぁっ……そんな……二人同時に……」
甘い痺れが背骨を走り、私の中は彼の巨きな熱でいっぱいにされる。
次には彩乃が後ろから私を抱きしめ、彼の動きに合わせて舌で耳を犯す。
「美里……感じてる顔、綺麗……」
その声と舌の震えが、さらに熱を増幅させる。
「二人とも……俺の女だ……」
隼人の低い囁きと共に、正常位、後背位、騎乗位――絡み合う体位が目まぐるしく変わり、絶頂の波が途切れることなく押し寄せる。
「もっと……もっと欲しい……!」
「愛してる……彩乃も、美里も……」
「離れたくない……一緒に……!」
三人の声が重なり、狭い部屋は愛欲の海と化した。
月明かりが汗に濡れた肌を照らし、吐息と水音が壁に反響する。
最後の波は、全員を同時に攫った。
私の奥深くに注ぎ込まれる熱、彩乃の震える吐息、隼人の唸り声。
全身が硬直し、時が止まったかのように三人の影が重なった。
──やがて静寂。
余韻に濡れた空気の中、私は隼人の胸に顔を埋め、彩乃の手を握った。
「……私たち、どうなってしまうのかしら」
呟くと、彩乃はかすかに笑い、涙を滲ませながら囁いた。
「もう、戻れない。でも……戻りたくない」
その言葉に私も頷き、彼の逞しい鼓動を確かめながら目を閉じた。
罪も背徳も、常識さえも──狭いワンルームの中ではただ、甘美な余韻として漂っていた。
まとめ──背徳に咲いた疼きと三人が選んだ均衡の愛欲
あの夜を境に、私たちは後戻りできなくなった。
部長の愛人である彩乃。
十年前から私を満たし続ける隼人。
そして、その二人を間近で見つめ、嫉妬と快楽に飲み込まれていった私。
常識も倫理も、もう意味を持たない。
私たちをつなぐのは、ただ欲望の均衡。
平日は私が彼に沈み、週末は彩乃が彼に溺れる。
時に三人で、時に二人ずつ。
交わりの形は変われど、彼の腕の中にいる限り、すべてが満たされた。
「愛なんて、本当は定義できないもの」
「女はきっと、選ばれるのではなく、選んでしまう生き物」
そう心の奥でつぶやきながら、私は再び隼人の胸に頬を寄せる。
罪と背徳に彩られた関係であっても、そこにあるのはたしかな熱と、生きている実感だった。
狭いワンルームに交錯する吐息と声。
それは人間の原初の衝動が生み出す、最も濃密で美しい愛欲の形だった。



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