【第1部】誰かに見られたくて──裏垢に滲んだ私の渇き
夫の浮気に気づいたのは、たぶん2年前。 でも、最初に本当に“裏切られた”と感じたのは、私の頬に初めて彼の手が飛んできたときだった。 言い訳のきかない痛みだった。 それからは、叩かれなくても、私は叩かれているような顔をするようになった。
夜が来るのが怖かった。
けれど朝が来ても、何も救ってくれなかった。
私は、呼吸の仕方を忘れた。
日常は乾いていて、誰にも気づかれずに少しずつ剥がれていく皮膚のようだった。 その中で、私はいつの間にかX(旧Twitter)に裏アカウントを作っていた。 「@夜だけの私」──そう名乗ったとき、不思議と呼吸が戻ってきた気がした。
写真は、脚だけ。 膝上のスカートから覗くストッキングの陰影。 頬杖をついた横顔。明かりの当たらない浴室の鏡越しの背中。 そして、それに添える小さな独白。
『夫の寝息より、誰かの視線で濡れたい』 『もう何年も、女として扱われていない体』
誰も“私”を知らないからこそ、溢れてしまう本音。 それは露出ではなく、祈りだった。 どうか、誰か、見て──と。
最初はただのフォロワーだった。 けれど、ひとつのいいね。ひとつのリプライ。ひとつのDM。 画面越しに届く反応が、 まるで誰かに抱きしめられたように、肌をふわりと撫でてくる夜があった。
その中のひとつ。 @haru_uni24 という名のアカウントから、こんなメッセージが来た。
『写真、とても綺麗です。寂しさと強さがにじんでいて…ずっと見ていたくなります』
他愛もないひとこと。 けれどなぜか、その言葉だけが何度も頭を回った。
名前に“24”とあるから、年齢だろうか。 大学生? それとも社会人一年目? 顔は知らない。 けれど、なぜか…その文章には温度があった。
やりとりは少しずつ増えていった。 「脚のラインが好きです」と言われた夜、私は鏡に脚を映し、 まるでその人に見せるように何度も角度を変えて撮り直した。
『お姉さんって、きっと本当に綺麗な人なんでしょうね』
そう言われたとき、 心臓の奥の、使われていなかった小さな部屋に灯りがともる音がした。
私もまた、返信していた。 「彼氏、いないの? 毎日、我慢してるの?」
──その言葉に反応する速度が、速すぎた。
『…正直、ずっと我慢してました。ずっと、お姉さんの投稿見て抜いてました』
スマホの画面を持つ手が、震えた。 身体の奥に、何か熱いものが広がって、思わず太ももを閉じた。
その夜。 私は自分の身体を撫でながら、彼のタイムラインを何度も見返していた。 投稿には、顔の映っていない私の写真がRTされていた。 『この人、やばい。想像だけで抜ける。会ってみたい』
──気づいていたの?
私はその投稿に、何も反応しなかった。 けれど次の日、私からDMを送っていた。
『……会ってみる?』
【第2部】黙って見つめて、濡れてしまった──視線でほどかれる私
──その日、私はいつもより念入りに、丁寧に服を選んでいた。
決して派手ではないけれど、ラインの浮かぶ薄手のニット。胸の形がわずかにわかる程度の柔らかさと、やや短めのスカート。ストッキングを履く指先が震えていた。
どこかで気づいていたのかもしれない。 彼が、ただの匿名の誰かではないと。 けれど、止まれなかった。 誰かの視線に溶かされるような期待に、もうすでに心が濡れてしまっていた。
待ち合わせは、人気のない夜の公園の駐車場。 ライトを落とした車が一台だけ、そこにいた。 ドアの内側から開かれ、私は深呼吸のあと、助手席に乗り込んだ。
「……やっぱり、来てくれたんですね」
声。 低くて、まだあどけなさが残るのに、どこか大人びた響き。
その横顔を見た瞬間、息が止まった。
──知ってる。
目の前にいるのは、息子の友人だった。
大学に入ってから家に遊びに来たこともある。キッチン越しに笑いかけられた顔。 あのときより、少し背が伸びて、声も低くなっていたけれど。 間違えるわけがなかった。
彼は、静かに、でも確信を持って私を見ていた。
「…最初の頃から、なんとなく気づいてました」 「え…?」 「写真に映り込んだバッシュ。うちに遊びに行ったとき、見たんですよ。あの玄関マットも…」
心臓が、内側からじわじわと焼かれていくような熱を持ちはじめた。 羞恥。 興奮。 そして、抗えない疼き。
私は、もう逃げられなかった。
「でも…それでも、ずっと見てたんです。あのアカウントのこと。お姉さんが、見せたがってるの、分かってたから」
“見られたい”と“気づかれたい”が交差した瞬間、私の中の理性がひとつ崩れ落ちた。
「触れてもいい?」
その問いに、私は頷いていた。
でも、彼はすぐには触れなかった。 ただ、見た。 膝のライン。喉元のくぼみ。胸のふくらみ。
目が、私の肌の温度を上げていった。 触れられていないのに、脚の内側がきゅっと疼いた。
──あぁ、いけない。
車内の空気が、静かに湿っていく。
彼の手が、ようやく私の髪に触れたとき、身体がびくんと跳ねた。 優しいのに、意図がある。 頬にかかる髪をすくい、耳の後ろに指が触れた。
「綺麗です。やっぱり…ずっと会いたかった」
そう囁かれただけで、膝の奥が熱くなった。
指先が、ストッキング越しに私の太ももをなぞる。 そこから上へ、静かに、慎重に。 でも確実に“女”として触れてきた。
私は目を閉じた。 声が漏れないように、下唇を噛んだ。
「声、我慢してるんですか?」 「……うん」 「大丈夫、誰もいない。お姉さんの感じてる声、僕が全部、受け止めるから」
その言葉に、喉の奥がふるえてしまった。
彼の手がスカートの中に入り、下着の上から撫でられる。 濡れていた。 自分でも、はっきりわかるほどに。
なのに、彼はまだ触れない。 焦らすように、じらすように、指の腹で、そこに“存在する”だけ。
そのじれったさに、私は自分の腰を少しだけ前へと動かしてしまっていた。
「触れてほしいんですね」 「……うん、もう、無理」
私は、求めていた。 見られることで濡れ、気づかれることで疼き、 今、触れられることで壊れたかった。
彼の指が、下着の奥に潜ったとき、 私はもう、すべてを受け入れていた──。
【第3部】壊れた名前、ほどかれた欲望──おばさんじゃなく“女”として
私の下着に触れた彼の指が、濡れた粘膜に静かに沈んでゆくとき、 私はもう、自分の名前を忘れていた。
「お姉さん」と呼ばれたその響きに、心がほどける。 でも、それはもう──“誰かの母親”ではなかった。 “息子の友人”の前で私は、ただの“女”になっていた。
彼の指が、ゆっくりと奥に入り、膣の内側をなぞったとき、 私は息を呑んで、座席に背を反らせた。
「ここ、好きですよね……」
どこで覚えたのかと思うような、的確な動き。 膣の前の壁を、柔らかく、それでいて逃さない圧で押しながら、 指の腹が震えるように小刻みに擦れていく。
腰が、勝手に跳ね上がる。
そして彼は、その指を抜くと、私に見せつけるように舐めた。
「すごい……甘い」
羞恥と快感が溶け合って、身体の芯が痺れていく。
「もっと、ほしい?」 「……うん、ほしい」
声は囁きにもならないほど弱く、けれど確かだった。
彼の手が私のスカートと下着を一緒に脱がし、助手席に広がる私の脚の間に身体を沈める。
シートが、倒されていく。
上半身を起こした彼が、私の胸に手を這わせ、ブラジャーの中へと指を差し入れる。 乳首に触れた瞬間、全身が跳ねた。
「ここ、前より……硬くなってる」
吸われた。 片方を舌で転がされ、もう一方は親指と人差し指で摘まれ、擦られる。
「んっ……ダメ、そこ……そこ、弱いの……っ」
言葉にならない吐息。 自分がこんな声を出すなんて、知らなかった。
脚を広げられていることへの恥ずかしさよりも、 その状態のまま吸われ続けることで、どんどん心が剥がされていく感覚。
そして。
ズボンをずらした彼のそこが、露になった。
「……入れたら、戻れなくなりますよ」
警告にも似たその言葉に、私は目を閉じて頷いた。
身体は、すでに彼を受け入れる形に開いていた。
彼の先端が、濡れた私の入り口をなぞる。 熱く、硬く、太いそれが、濡れに導かれて少しずつ沈んでくる。
「んっ……あ……すごい……っ」
ゆっくり、でも確実に奥へ。
すべてが入ったとき、私は自分のものではない声を上げていた。
「きつい……でも、あったかい……すごい……」
彼の言葉が、奥に届く振動と一緒に揺れる。
動き出した。
最初は浅く、慎重に。 でもすぐに、私の脚の裏を持ち上げて、角度を変えて。 Gにぶつかるたび、喉がひくつく。
「ねぇ、こんなとこで……だめ……だって……っ」
「もう、誰にも見られてないよ。ここは……僕だけの場所」
その言葉が、最も淫靡だった。
関係性を壊し、名前を壊し、 私はただ、“女”として濡れ、咲かされ、そして──壊れていった。
最奥に届いた瞬間、全身が痙攣した。
喉の奥で押し殺した絶頂の波が、膣の内側を震わせながら、 すべてを吸い上げるように彼を締めつけていた。
「……イくっ……中で……お姉さん、イキそう……っ」
「一緒に、壊れて……」
その言葉のあと、私は自分の奥が開いてしまう音を、 身体の底で確かに聞いた。
そしてふたりは、名前のないまま、濡れきって── 静かに、溶けていった。



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